Dead or AliCe『Apartment:102』
虚月
***

                     *                       

虚月
堕落の国。刺剣の館。
どこにもいけない屋敷と、
 『オールド・メイド・ゲーム』
虚月
『救世主』と呼ばれる者達の命がけの戦い。
虚月
モニターを彩るは、16人の疵と生の在り様。
殺し、殺され、時には自ら死を選ぶ。
そんな趣味の悪いゲームみたいなお話。
虚月
記憶にあるのは民衆の歓声、
 真っ赤な血の色、まるい胎。
虚月

『 ――判決は 』
虚月
――――。

虚月
「――――ぁ……ッ!!」
虚月
 身体がびくりと跳ねて。 ――飛び起きる。
虚月
大きく『ガタン!』と、音がした。
足元には、小さな本棚。 辺りは畳敷きのすこし手狭な空間。
虚月
……ここには豪奢な燭台も、贅沢なティーセットも、メイドも、いない。
何の変哲もない、"いつもの" 狭いアパートの一室だ。
虚月
――ひどく恐ろしかった。 
    ような気がする、なにかが。
虚月

性質の悪い悪夢だった。
虚月
その場で、自分は確かに、蛇で、神で……化け物で。
人々を嘯き、戯言を好む、真っ白な異形の形をしていた。
虚月
それは、求め、食らい、光を見止め、大きく笑って――
虚月
――夢の残滓のように、頭がずきんと痛んだ。
虚月
……そうして、見下ろした手はやわらかく、鱗もなく。
ただ、まとわりつくように 汗がじっとりと滲んでいた。
夜目菜
***
夜目菜
在りし日の物語は、遥か遠くに掠れ。
夜目菜
不思議はなく。奇跡もなく。疵もなく。
夜目菜
いつかの、どこかに。
夜目菜
その≪アパート≫はひっそりとたたずんでいる。
夜目菜
「…… ……さ……」
夜目菜
「……うろつきおにいさん」
夜目菜
手を伸ばす。
夜目菜
躊躇いがちに、肩の辺りに軽く触れる。
夜目菜
「だいじょうぶですか……?」
虚月
びくりと。 小さく身体がはねた。
夜目菜
「うなされてたみたい、」
夜目菜
「……お水、もってきましょうか」
夜目菜
気遣うような目でその顔を覗き込む。
虚月
追って背中に、あたたかい感触。
顔をあげると日差しが目に差し込んで、眩しい。
虚月
「…………夢を見ていました。」
夜目菜
「ゆめ」
夜目菜
繰り返す。
虚月
「……その国はおしまいで。ぶっちゃけもうダメなんです。」
虚月
虚ろに視線を漂わせる。 ぬくもりは現実と夢をあいまいにする。
夜目菜
その顔を真剣に見つめて。
夜目菜
「……国」
虚月
「 不思議の国のアリス 」
虚月
「……そこで、僕たちは殺し合いをしていました。」
夜目菜
ぴく、と肩が跳ねる。
夜目菜
怖い夢だ。彼が見ていたのは。
虚月
いないうさぎを追いかけるように視線が惑う。
夜目菜
汗で冷えた手を握る。
虚月
ぬくもりがふれると、指先はとてもぎこちなく。
虚月
それは、冷たく強張って。
夜目菜
「だいじょうぶ、」
夜目菜
「夢ですよ」
虚月
「…………ゆ め。」
夜目菜
「うん、夢です。こわかったですね」
虚月
曖昧な空気の境で唇を動かす。 ゆめ。まぼろし。
虚月
真実ではない世界。
虚月
てのひらに伝わるぬくもりが、指先を解いていく。
夜目菜
その手を両手で包み、ぎこちなく親指で撫でる。
虚月
……怖い夢だった。 あれは……夢。
  しかし、それ以上に。
今ここにあることが不確かで頼りない。
夜目菜
かつて、怖い夢を見た自分に叔父がそうしてくれたように。
夜目菜
包み込んだ手のひらはつめたい。
夜目菜
温もりを分けるように、握る力を僅かに強めて。
虚月
「…………。」
虚月
「……ありがとう、ございます。」
虚月
そのぬくもりが芯に届くことから逃れるように手を崩す。
夜目菜
その顔をじっと見て――ふ、と小さく笑う。
夜目菜
「うろつきおにいさん、畳のあとついてる」
夜目菜
崩された手を追うことは、なく。
夜目菜
くすくすと笑って頬を差した。
虚月
「ああ……」 呆けたような声で
 「ほんとうですね。」 手のひらで触れる。
虚月
それは、鱗のように。
虚月
薄赤く痕を残していた。
夜目菜
「お水持ってきますね」
夜目菜
剥がれたうろこも。膨れたはらも。潰れたあたまも。
夜目菜
ここにはない。あったこともない。
虚月
微笑むと、またすこしだけ 頭が痛んだ。
虚月
こんな場所で寝こけるなんて。
もしかしたら、疲れているのかもしれない。
夜目菜
足音。水を汲む音。足音。
虚月
しばらく蹴飛ばした本棚を眺めて、取り出す。
虚月
背表紙がほどけかかった「不思議の国のアリス」。
虚月
「そういえば、ちゃんと読んだことなかったかもな……」
虚月
繊細なペン画の挿絵を眺めながら。
夢の残滓をなぞるように、ゆっくりとめくる。
虚月
やけに古びたその本は、めくるたびに糸が軋むようで。
簡単に解けてしまいそうで。すこしだけ、危なっかしい。
虚月
――夢。 あれはただの夢。 
 ページをめくっても、そこにあるのはただひとりの自分だけ。
虚月
空虚もない。贄はいない。もう、誰をも殺すこともない。
虚月
そのことに少しだけ安堵している自分がいた。
*
『――アリスよ そのやさしい手で 

このつたない話を受けとっておくれ そしてしまっておいてほしい』
*
『幼年の夢がとけだし 思い出を織りなす神秘の国に 

はるかなる国でかつて摘まれた 

巡礼者たちの花の輪の 萎れた姿そのままに』
夜目菜
そう間を置かず、戻ってくる。
虚月
――巡礼。
 人々は首を垂れて、煌びやかな華を手向ける。
 その目は、自分を見る。神を、白い蛇を見る。
夜目菜
「お水、持ってきましたよ」
虚月
はた、と我に返ったように振り返る。
虚月
「…………夜目菜。」
夜目菜
まだぼんやりと夢を見るような瞳に、緩く首をかしげ。
夜目菜
膝をついてコップを差し出す。
虚月
 水を持った、彼女の胎を見る。   なにもない。
夜目菜
「はい」
夜目菜
少女として、なんの違和感のない姿。
虚月
「ありがとう。」 受け取って、ひとくち。
夜目菜
どこにでもいる、ありふれたただの女の子。
虚月
無味無臭。 何の変哲もない水道水。
魔法のように、ティーセットが差し出されることも ない。
夜目菜
「……おなかすきました?」
虚月
「……いけませんね、これでは。」 
 片手にとった本を閉じて。ちいさく息を落とす。
夜目菜
その手の中にある本が、自分のものであると気付くと目を細める。
虚月
「……そうかもしれません。」
 腹はまだ減らないけれど。
 胸につまったような思いが流れてしまえばいい。
夜目菜
「そうですよう、お布団もなしで畳で寝ちゃだめです」
夜目菜
「晩御飯、野茉莉さんが昨日作ってくれたお煮しめが残ってるんですけど――」
夜目菜
「足りないかな」
虚月
「ああそれは!」 明るく
虚月
「とても、いい考えです!」
虚月
本を置き去りに。 台所へぱたぱたとかけていく。
夜目菜
置き去りの本を拾って、本棚に戻す。
虚月
「こうなったら野茉莉の分まで食べてしまいましょう!」
 ……なんて、やけに明るい声が、遠ざかる。
夜目菜
『それは黄金の昼下り――』
夜目菜
擦り切れた背表紙を指先が撫でて。
夜目菜
「それはだめっ」 その声を追って。

夜目菜
――台所。
夜目菜
調理器具の手入れはそこそこ。食材は冷蔵庫と、食品棚にある限り。
夜目菜
生活のにおいが色濃く残る。
虚月
その片隅で冷蔵庫を漁り始めている。いつものように。
夜目菜
「ごはんとお煮しめあっためて……あとは……」
虚月
「あっ!付け合わせは白菜のお漬物がいいです!」
虚月
勝手に取り出して 掲げる!
夜目菜
「はいはい、じゃあ、おつけもの」
夜目菜
「……うーん」
夜目菜
成人男性に御馳走するには……量が足りない気がする。腕をまくる。
虚月
「どうしました?お悩み事で?」 漬物をもぐつきながら。
夜目菜
「唐揚げ、つくります!」
夜目菜
幸い鶏肉はあるし。からあげ粉をまぶして揚げるだけ。
虚月
「…………からあげ!!!!」 歓喜の声
虚月
 器からちょっとだけ、漬物の汁がこぼれた。
夜目菜
「あ~」
夜目菜
キッチンペーパーを片手に。
夜目菜
「お洋服にこぼれませんでしたか?」
虚月
「……あっ」 聞かれるより先に指先を舐めている。
夜目菜
「もお」
夜目菜
「こどもなんだから~」
虚月
くすくすとわらって。
夜目菜
「ちょっと待っててくださいね」
虚月
「これでも立派なおとなです~」
夜目菜
「立派な大人がつまみ食いしないでください!」
夜目菜
まったくも~。
虚月
「武士は食わねどですよ!  ……あれ、これは違いましたっけ。」
夜目菜
こぼれた漬けものの汁を拭いて、そのまま冷蔵庫から鶏肉を出す。
夜目菜
「それは高楊枝。食べられなくてもえらそうにしていなさいって意味です」
夜目菜
ほんとにおとななんだろうか?
虚月
鼻歌まじりにセーターで指先を拭っている。 こどもだ。
夜目菜
冷たい鶏肉。
夜目菜
包丁で一口大に切り分ける。
夜目菜
肉、筋、皮。
夜目菜
薄いピンク色のかたまりがいくつもできる。
虚月
そのうしろで 唄われるのは 不安定なメロディ。
……それは、どこの国の唄だったろうか。
虚月
「器用なものですね。」
夜目菜
ビニールに入れて、からあげ粉を振り、まぶし。こねこね。
夜目菜
「ふつうです」
夜目菜
「まぶすだけのやつだし」
虚月
にく、にく、にく。 桃色と白のコントラスト。
虚月
そこに、赤い色は無い。
夜目菜
放置。その間に手を洗って、油の用意。
夜目菜
そのあたりのスーパーで買ってきた、100g118円のありふれた鶏もも肉。
夜目菜
粉に塗れて、衣がつけられて。
夜目菜
揚げられるときを待っている。
虚月
置かれた包丁の切っ先を眺めてから。
虚月
白く化粧されゆく桃色をみつめる。
 ……肉はこうして食われる形となる。
夜目菜
「……うろつきおにいさんは」
虚月
「?」
夜目菜
熱が入れられ僅かに泡立つ油の温度を、箸についた衣で確かめながら。
夜目菜
「きょうは、泊まっていくんですか」
夜目菜
なんでもないことを訊くように。
夜目菜
けれどその背に僅かに緊張がある。
虚月
「……そうですねぇ。」 ぱちぱちと油の撥ねる音が聞こえる。
夜目菜
油に、衣をまとった肉が沈んでいく。
虚月
「これから考えます。」
夜目菜
「…………」
虚月
その視線は、指先に。 沈みゆくそれらを眺めて。
夜目菜
無言。
夜目菜
いつつ、むっつ。
夜目菜
油の温度が下がらないように火を調節しながら。
虚月
夜目菜のずっと先を見ている。
遠く向こう側を覗き込むように。
夜目菜
なんとなく、言葉を取り戻すきっかけを失って。
夜目菜
真剣に油を見つめている。
虚月
油の中で、揺れる。湧き上がる熱と、湯気。小さな気泡たち。
それは、今か今かと、その口に食われる時をまっている。
虚月
「…………。」
夜目菜
できた。
夜目菜
小さな食卓に、食事が並ぶ。
夜目菜
贅沢でも、手が込んでいるわけでも、なんでもない。
夜目菜
ただすこし、がんばった食事。
夜目菜
来客用の箸には何故か事欠かない。
夜目菜
「じゃあ、食べましょう、か」
夜目菜
そしてようやく、言葉が戻る。
虚月
「わ~~い!」 何事もなかったかのように、はしゃいで見せる。
虚月
箸を2本抜き取って、熱々を頬張る。 いつものように。
虚月
そこだけ切り取ったならば、
これはいたって普通の日常風景だ。
虚月
食いしんぼうの青年?と、少し世話焼きの少女が 食卓を囲んでいる。
*
*かけひき開始!
夜目菜
1D6
DiceBot : (1D6) > 3
虚月
1d6  行動順!
DiceBot : (1D6) > 5
夜目菜
うろつきおにいさんから。
*
*1R  手札引き
虚月
*d6,h8,h9,
夜目菜
そんなことある?
夜目菜
*c3,s3,d3
虚月
*1R 手番:虚月
虚月
唐揚げをとりあげて、頬張る。
虚月
……いつものように、振舞っている。つもりだ。
虚月
飲み込む。 ああ、やけに。 温かい、血の味。 
虚月
――脳裏に浮かぶのは、白い耳。 生暖かい血の味。
虚月
「……夜目菜ちゃんはさ。」 何かを、言いかけて。 
虚月
 ……閉口する。
虚月
「……やっぱりいいや。」 もういちど頬張って。飲み下す。
虚月
……夢の話なんて。きっとつまらない。
虚月
*アピール d6
夜目菜
*誘い受けします…… c3
夜目菜
2D6=>7
DiceBot : (2D6>=7) > 9[6,3] > 9 > 成功
夜目菜
「……なんですか?」
夜目菜
気になる。
夜目菜
煮しめを先に食べるのは、『食事の時は野菜から!』という教育の賜物だ。
夜目菜
飲み込まれたその言葉に、じっと視線を遣る。
虚月
「ううん、なんでもない。」
夜目菜
「うそだあ」
虚月
「それよりも ほら、からあげからあげ!」
虚月
箸でつまんで、彼女の口先にもっていく。
虚月
2D6>=9
DiceBot : (2D6>=9) > 4[1,3] > 4 > 失敗
夜目菜
「ごまかさないでください!」
夜目菜
でもたべる。もぐもぐ。
夜目菜
やっぱりちょっとやわらかいというか、べちゃべちゃしちゃうんだよな~。
虚月
「お!いい食べっぷり!よっ日本一!」
夜目菜
今度野茉莉さんに一緒に作ってもらおうかな……
虚月
 話をそらそうとしている。
夜目菜
「……」
夜目菜
もぐもぐ、ごくん。
虚月
「お漬物もいかがですか、おじょうさん。」
虚月
今度は白菜を口元に持っていこうとしている。
夜目菜
「……」
夜目菜
たべる。
夜目菜
ごまかそうとするのなら、それは。
夜目菜
訊かない方がいいのかもしれない。
虚月
「美味しいでしょう、ここのお料理は。」
夜目菜
ここの、という言葉が。ひっかかる。
虚月
……関係ないことだ。 
 私は神でなく、彼女は贄でもない。
 対等な人と人でしかない。
夜目菜
「お口に合うなら、良かったです」
虚月
「さぁどんどん食べてください!ご馳走ですよ!」
[ 虚月 ] 情緒 : 0 → 1
夜目菜
*1R 夜目菜:手番
夜目菜
パスします。
夜目菜
この女の子からは、血のにおいはしない。
夜目菜
誰かを傷つけるための確かな方法など知りもしない。
夜目菜
こうして穏やかに生きて行く上で、負った僅かな生傷があるばかりだ。
夜目菜
だから、目の前の男の人が抱える"何か"に、触れるすべも持たない。
夜目菜
足踏み。
夜目菜
*1R 終了 カード捨て!
虚月
*h8,h9 ぜんぶ捨て!
夜目菜
*全部捨て~
夜目菜
*2R!カード引き!
虚月
*h4,c6,h10
夜目菜
*c2,s9,hQ
虚月
*2R 虚月:手番
虚月
箸にも手を付けず。
にこにこと、それを見つめている。
虚月
「最近の女の子は痩せすぎるくらいですからね!」
虚月
「夜目菜にはたくさん食べてもらいませんと。」
虚月
 ……胎の子の為に? そんなものはいない。
虚月
*アピール c6
夜目菜
*誘い受けします c2
夜目菜
2D6=>7
DiceBot : (2D6>=7) > 8[5,3] > 8 > 成功
夜目菜
「私はわりと、食べてる方だとおもうんですけど」
夜目菜
「ああでも、うろつきおにいさんには敵わないや」
虚月
「そうですか? でもこの前だってお茶碗1杯ほどしか……」
夜目菜
「ふつうはお茶碗一杯なんです!」
虚月
「じゃあ上限突破!しちゃいましょう! ほらほら!」
夜目菜
「学校の子なんて、お弁当にこれくらいのごはんしか入ってなくて……」
夜目菜
手でこれくらい、を示す。
虚月
自分の分まで分け与えようとする。
夜目菜
「そんなに食べられないですよ~!」
虚月
「それは……残念です。」
虚月
しょんぼりしてみせる。 それを、自分の口へもぐり。
虚月
2D6>=8
DiceBot : (2D6>=8) > 9[3,6] > 9 > 成功
虚月
粛々と白ご飯をいただく。 これみよがしに。
夜目菜
その綺麗な顔を、見つめる。
夜目菜
純粋に――この人が、何かを食べているのを見るのはうれしい。
夜目菜
こちらにまでやけに食べさせようとしてくるのは困りものだけれど。
夜目菜
「おいしいですか?」
虚月
……その、箸が僅かに止まる。
虚月
「はい!もちろん!」
夜目菜
うれしい。じぶんでも不思議なくらい。
夜目菜
でもそのうれしさには緊張がある。
夜目菜
保護者と囲む食卓とは違うことが、はっきりとわかってしまうくらいに。
夜目菜
「よかったです」
[ 夜目菜 ] 情緒 : 0 → 1
虚月
「安心なさい、夜目菜の作るご飯は国一番ですよ。」
夜目菜
「大げさです」
虚月
「……ふふ、でも美味しいです。 誇ってよいですよ。」
夜目菜
「…………」もぐ、と白米を口に運んだ。
夜目菜
*2R 手番:夜目菜
夜目菜
*アピールします。s9
虚月
*割り込み、誘い受け h10
虚月
2D6>=7
DiceBot : (2D6>=7) > 9[4,5] > 9 > 成功
夜目菜
2D6=>9
DiceBot : (2D6>=7) > 7[3,4] > 7 > 成功
夜目菜
失敗。
夜目菜
「うろつきおにいさんは」
夜目菜
「……いっぱい食べてくれるので。野茉莉さん、いつもうれしそうですよ」
虚月
「へぇ、野茉莉が?」
夜目菜
此処にいない保護者の名前。
夜目菜
「来るってわかったら、いつもあれこれ用意してます」
虚月
「でも、野茉莉はすぐに怒りますよ!
 靴の脱ぎ方がだらしない!とか、シャツはみ出てる!とか……」
夜目菜
「それはうろつきおにいさんがだらしないからでしょ!」
虚月
……でも、いつも布団が用意してある。
  ここには来客も多いから、いつもそうなのだと思っていたけれど…
虚月
「でもこれは……いい弱みを握りましたね。」
虚月
「今度プンスカした時に、からかってやりましょう!」
夜目菜
「………………」しまったなという顔。
夜目菜
「やめてあげてください……」
夜目菜
あれこれ準備してしまうのは自分も同じなのだから。
虚月
「いやあ~愛されてるっていいことですねぇ~」 
 唐揚げに手が伸びるひょいぱく。
[ 夜目菜 ] 情緒 : 1 → 2
夜目菜
*2R終了!手札捨て!
虚月
*h4 全部捨て!
夜目菜
*c2,hQ 全部捨て
夜目菜
*3R!手札引き
虚月
*d2,s6,cJ
夜目菜
*c4,h5,dA
虚月
*3R 虚月:手番
虚月
「夜目菜は本当に野茉莉のことが好きなんですね。」
虚月
*アピール s6
夜目菜
*誘い受けします…… c4
夜目菜
2D6=>7
DiceBot : (2D6>=7) > 7[6,1] > 7 > 成功
夜目菜
「私には、野茉莉さんしかいないから」
夜目菜
困ったように、ぽつりと。
夜目菜
小さく返す。
虚月
……表情がすこし、曇る。
虚月
「大事な人なんだ。」
虚月
「……それじゃあやっぱり邪魔しちゃ悪いかな。」
虚月
2D6>=7
DiceBot : (2D6>=7) > 6[4,2] > 6 > 失敗
[ 虚月 ] 情緒 : 1 → 2
夜目菜
「……どういう意味ですか」
虚月
……食べても。食べても。満たされることは無い。
虚月
どこか、ぽっかりと空いた空洞。 夢の再演。
虚月
「仲良くて羨ましいな~!って意味です!」
夜目菜
ふと。傷つけたのだろうか、と思いいたる。
虚月
「やっぱりこの唐揚げは野茉莉にはもったいないですね!」
 ぱく、もぐ。むしゃむしゃ。 誤魔化すように平らげる。
虚月
……ずっと腹は満たされているはずなのに。
夜目菜
「私……うろつきおにいさんとも、仲良くなりたい、ですよ」
夜目菜
ぽそぽそと言い訳するように呟いて。
虚月
「……それは光栄なことですね。」
夜目菜
薄い膜に隔てられているような心地がある。
虚月
「でも、そんなに いいものではありませんよ。」
夜目菜
触れられるのに。会話を交わせるのに。何処かで決定的に隔てられているようにおもう。
虚月
 夢の中の蛇は、易く贄を殺した。
 神とあがめられるべき者ではけして無かった。
虚月
 あれは自分の映し鏡だ。心の中には、何もない。
虚月
箸で運んで、飲み込む。 それだけの所作。
虚月
いくら道化を演じても、かつての暮らし、その運びは消えない。
夜目菜
なんとなく。なんとなく、わかっている。
夜目菜
このアパートに暮らしているひとびとと、同じだ。
夜目菜
いまやかさぶたで覆われてしまった疵。
夜目菜
そこに確かに遺っていても。
夜目菜
――触ってはいけないものだと思う。
夜目菜
それなのに――
夜目菜
*2R  手番:夜目菜
夜目菜
*アピールします。dA
虚月
*誘い受け d2
虚月
2D6>=7
DiceBot : (2D6>=7) > 5[1,4] > 5 > 失敗
夜目菜
「……うろつきおにいさん」
夜目菜
「帰らないでって言ったら、いてくれますか」
夜目菜
2D6=>7
DiceBot : (2D6>=7) > 6[5,1] > 6 > 失敗
虚月
「…………それは。」
虚月
「できないな。」
虚月
箸を置く。 
虚月
 するりと、逃げるように。
虚月
「からあげ、おいしかったです。」
夜目菜
どうしてとか、なんでとかは、訊けない。
夜目菜
わかりきっていることだから。
夜目菜
「……おそまつさまでした」
[ 夜目菜 ] 情緒 : 2 → 3
[ 虚月 ] 情緒 : 2 → 3
夜目菜
*3R終了! 手札捨て
虚月
*d2 捨てます
夜目菜
*捨てなし
夜目菜
*4R!手札引き!
虚月
*h2,s10(cJ)
夜目菜
*(c3,h5) joker!
虚月
*4R 虚月:手番
虚月
*といってもパスですね。
虚月
揃えた箸をお皿の上に重ねて流しの方へ。
虚月
「今日はもうお腹いっぱい。しあわせ腹いっぱい~」
虚月
「夜目菜ちゃんはきっといい奥さんになりますね。」
夜目菜
「……よく言われます」
夜目菜
やや棘のある声。
虚月
「~~~~♪」
虚月
わかっている。これが誉め言葉でないことくらい。
虚月
そして、彼女の気持ちも  すこしだけ。
夜目菜
*4R 手番:夜目菜
夜目菜
*アピールします。h5
虚月
*誘い受け h2
虚月
2D6>=7
DiceBot : (2D6>=7) > 8[3,5] > 8 > 成功
夜目菜
2D6=>8
DiceBot : (2D6>=8) > 9[6,3] > 9 > 成功
[ 虚月 ] 情緒 : 3 → 4
夜目菜
片付けは粛々と進む。
夜目菜
洗い物、お皿を拭いて、しまって。
夜目菜
食卓の上には何もなくなる。
夜目菜
引きとめるための材料も。
夜目菜
「お茶、淹れましょうか」
虚月
「……いいや。」
虚月
「今日は長居してしまいましたしね。」
虚月
「野茉莉に見つかったらなんていわれるか!」
夜目菜
それはそう。
夜目菜
「……」
夜目菜
言葉を探す。でも出てこない。
虚月
「もう~そんな顔しないでください。」
虚月
ほっぺたをつねる。 むぎゅ。
夜目菜
「うぎゅ」
虚月
「ほら、笑って笑って! 女の子は笑顔が一番~」
夜目菜
頬をつねる指がやけにつめたい。
夜目菜
「いたいれひゅ~」
虚月
「おっと、失礼。」
虚月
ぱっと手を離す。
夜目菜
「う~」頬をさすり。
虚月
「おいしそうなので、ついつい。」
夜目菜
手を伸ばし、頬をつねりかえす。むむぎゅ。
虚月
「……おっと。」 躱し……損なった。
夜目菜
ここぞとばかりに両手でむぎゅ!
夜目菜
のばす。こねる。
虚月
……暖かいてのひら。 こねるにはすこし肉が足りない。
虚月
「……やりましたね。」
夜目菜
「先にやったのはうろつきおにいさんです~」むくれる。
虚月
「……それならば…………」
虚月
両手がふさがっている相手の懐に 手を差し込む。
虚月
冷たい。
夜目菜
手を離そうとしたところで。
夜目菜
「ひゃあ!」
夜目菜
冷たい指が肌に這う感触。
夜目菜
咄嗟に突き飛ばすこともできず、身をよじる。
夜目菜
「ちょ、っと、」
虚月
暖かい。 薄っぺらな身体。
虚月
……何かが足りないようなきがした。
虚月
「ふふん! お返しです~!」 
虚月
手繰る。 ない。 なにも。
夜目菜
なにもない。
夜目菜
「っ、」
虚月
「…………!」
夜目菜
「くす、ぐった、ぃ……」
虚月
……我に返る。
虚月
 なにを、していた?
虚月
「……ごめん。」
虚月
ゆるりと、手を離す。
夜目菜
その手から逃れて、けれどそれ以上退くこともせず。
虚月
「はは、やっぱり戯れはこの辺にしときませんと。」
夜目菜
どうして謝られるのかわからない。
虚月
両手をあげて、ひらひらと。
夜目菜
「……うろつきおにいさん」
夜目菜
手を伸ばす。その腕に触れて、撫でる。
虚月
……一歩、さがる。
夜目菜
下がられれば大人しく引いた。
虚月
その瞳にうつるのは。 だれだ?
虚月
手は、容易くその手から逃れる。
夜目菜
どうしてこの人を繋ぎとめられるだろう?
夜目菜
私はなにものでもないのに。
夜目菜
「私も、ごめんなさい」
夜目菜
「ちょっと、はしゃいじゃいました」
虚月
「……夜目菜ちゃん。」
夜目菜
「ん」
虚月
「いや、こっちも悪いんだ。」
虚月
「かわいい女の子に構われて浮かれちゃったのかもね。」
夜目菜
戯れなのなら、もっとふざけていてくれれば。
夜目菜
いじわるなのなら、もっと笑ってくれれば。
夜目菜
それなら、笑っていられるのに。
虚月
「悪いお兄さんには気を付けなきゃだめだよ。」
虚月
「そうしないと…………がぶり!!」
虚月
「……なんちゃってね。」
夜目菜
「……ぴゃっ」
夜目菜
「……もう!」
虚月
「ははは」
夜目菜
「ほんとに、悪いおにいさん」
夜目菜
なのにどうして。
虚月
「どうもわるいお兄さんです!」
夜目菜
「自信満々にいわないでください!」
虚月
「その調子!その調子!そのまま撃退しちゃえ!」
夜目菜
「おにいさんのばかっ」
夜目菜
ぺし!
夜目菜
力の無い拳がその胸を叩いた。
虚月
「あいたた~」
虚月
 ちいさな拳を受け止めて、わらう。
虚月
 そのくらいでいい。 きっと、これ以上近づくべきではない。
虚月
――"あの時"みたいなことは。 もう。
夜目菜
「……もういいです」
夜目菜
ぷすん、と鼻を鳴らす。
夜目菜
らちが明かない。
夜目菜
あきらめを、つけなければならない。
夜目菜
*4R……終了!手札捨て!
虚月
*s10 捨て!
夜目菜
*c4捨て
夜目菜
*5R!手札引き!
虚月
*d9(cJ)sQ
夜目菜
*c7,c10,(joker!)
虚月
*5R 虚月:手番
*そのままパスです
夜目菜
*5R 手番:夜目菜
*アピールします…… c10……
虚月
*誘い受けしましょうね sQ
虚月
2D6>=7
DiceBot : (2D6>=7) > 10[6,4] > 10 > 成功
夜目菜
2D6=>10
DiceBot : (2D6>=10) > 7[4,3] > 7 > 失敗
虚月
そうして、片付けられていく。なにもかも。
虚月
元よりふらりと現れる通いの男だ。
片付けてしまえば、痕跡すら、のこらない。
虚月
手荷物はポケットに収まるほど。
夜目菜
「今度来るときは、連絡してくださいね」
虚月
どこで、なにをしているかもわからない。
夜目菜
言ったところで無駄だと分かっている。
夜目菜
それでも言わずにはいられない。
虚月
「……………あのね。」
夜目菜
”また”を期待せずには。
虚月
「……俺、もうここには来ないでいようと思うんだ。」
夜目菜
「っ、」
夜目菜
期待、せずには。
虚月
「野茉莉にもわるいし。
 こうやってごはん食べさせてもらってばっかだし。」
夜目菜
いられないのに。
夜目菜
「…………」
虚月
「あ!野茉莉にはナイショね!」
虚月
「あの人すぐ心配するでしょ!」
夜目菜
「しんぱい、します」
夜目菜
いつだってあの人は、誰かの心配をしている。
虚月
「だから、これは 夜目菜ちゃんとだけの、ひみつ。」
虚月
「ね?」
夜目菜
口を開く。頭がじわり、と熱い。
夜目菜
ひみつ。
虚月
どうせ、そうすれば忘れてしまえる。
虚月
簡単な事だった。
虚月
ここに、繋がりなんてものはなくて。
虚月
引き留める手すらない。
虚月
これは、かさぶた。
虚月
触れられない、疵。
夜目菜
なんで、とも、どうして、とも、やだ、とも。
夜目菜
言葉が出てこない。開いたままの口から、息を吐くことも忘れて。
夜目菜
わるいことをしたと。いけないことをしたと。
夜目菜
わかっていて。
夜目菜
口にすることができなかったのとおなじ。
夜目菜
これ以上何も云わなければ、時が止まってくれるのではないかと。
夜目菜
そんな期待をしたのとおなじ。
夜目菜
時は止まらない。ここには不思議も奇跡もない。
夜目菜
「………………………」
[ 夜目菜 ] 情緒 : 3 → 4
虚月
――時は止まらない。
 とんとん。 軽やかに、板を踏む音。
虚月
ぼろの靴下には穴が開いている。
虚月
履きつぶした靴を踏んで。
虚月
「じゃあね。」  いつものように。
夜目菜
*5R終了…… 手札捨て……
虚月
*そのままで!
夜目菜
*捨てなし
夜目菜
*6R 手札引き……
虚月
*h7,(d9,cJ)
夜目菜
*(c7,joker!),s5
虚月
*6R 虚月:手番
虚月
*h7 アピール
夜目菜
*joker 誘い受け
夜目菜
2D6=>7
DiceBot : (2D6>=7) > 11[5,6] > 11 > 成功
虚月
……扉に手がかかる。
夜目菜
「……やだ」
夜目菜
そのセーターの裾を、握る手がある。
夜目菜
出ないはずの言葉が、飲み込んだはずの言葉が、
夜目菜
こぼれて落ちる。
虚月
「…………。」
虚月
「………………ごめん。」
虚月
2D6>=11
DiceBot : (2D6>=11) > 8[3,5] > 8 > 失敗
[ 虚月 ] 情緒 : 4 → 5
夜目菜
「…………いかないで……」
夜目菜
ほつれ、伸びきったぼろのセーターの裾から、手繰るように。
夜目菜
両手が伸びる。細い腰に、巻きつく。
虚月
「……離してくれないかな。」
夜目菜
「い、や……」
夜目菜
薄く、なお広い背中。
虚月
少しだけ、身をよじる。
虚月
「……やめよう、こんなこと。」
虚月
けれど。
夜目菜
その肌に熱はなく、額に感じるのはセーターにわだかまる、
僅かなこの部屋の温もりだけ。
虚月
何故か、振りほどくことができずにいる。
虚月
「セーター、伸びちゃうしさ。」
夜目菜
「もうのびてます」
虚月
「そろそろ、野茉莉が帰ってきちゃうし。」
夜目菜
「かえってくるとき、ぜったい、連絡あります」
虚月
「………………。」
虚月
「…………悪い蛇がやってきて…」
虚月
「食べちゃうかも。」
夜目菜
「たべられていいです」
夜目菜
「おいしく、ないかもしれないけど」
虚月
「…………おいしくない、なんて。」
虚月
「言わないでよね。」
虚月
その手は、小さな頭を撫でる。
虚月
「……あのね。」
虚月
「僕は、素敵なお兄さんのままでいたいんだ。」
夜目菜
「……わるいおにいさんだって、自分で言った」
虚月
「悪いお兄さんなら、まだいいほう。」 微かに笑う。
虚月
しっている。わかっている。
  自分の正体は――化け物だった。
夜目菜
どうしても、どうやっても、手を伸ばさずにはいられない。
虚月
人を浚って、嘯いて、食らうのだ。
夜目菜
なぜか、ずっと、ずっとそうして、手を伸ばさなければならないと、
虚月
その手が、いくら優しいものであろうとも。
 その腕が、どれだけ暖かかろうとも。
――心に巣食うのは蛇だ。
夜目菜
この人に触れなければならないと、
虚月
尾が揺れる。 夢の中でみた、長い尾が。
夜目菜
けれどやりかたなんてわからなくて、焦りばかりが募って。
虚月
 それは、首を絞め。 心を縛り付け、そして――
夜目菜
薄い背から、腹へ。
夜目菜
伸ばした両腕がその身体を掻き抱く。
虚月
――ぬくもりが、触れる。
虚月
 腹は、変わらず、平たいままで。
虚月
 蛇が、とうの昔に食らってしまったのかもしれない、などと。
虚月
そんな戯言を、夢想して。
虚月
 扉から手を離した。
虚月
そして、その腕を、撫でてやる。
虚月
尾は、どこにもない。
虚月
鱗も、牙も、爪も。 なにもない。
夜目菜
相手が扉から手を離せば腕が緩む。
一歩、二歩、後ろへ下がり、顔を上げて。
夜目菜
その瞳は”あなた”を見ている。
虚月
――まるい瞳が、映し出すもの。
虚月
 それは、ひと の形をしていた。
虚月
ひとは、何故過ちを犯すのだろう。
虚月
癒えない疵に蓋をして、隠していても、どうして触れてしまうのか。
虚月
――答えは、でないけれど。
虚月
 そこは、己の体温よりも、あたたかく。
  ほんのすこしだけ、満たされていた。
夜目菜
 それが、絡まり、縺れた糸の果て。
夜目菜
 正しくはなく 善きものではなく
夜目菜
 けれど わずかに繋がる糸。
夜目菜
 いまひととき、時を留めるための。
虚月
結ぶには、すこし遠い。
 正すにも、まだ足りない。
虚月
 一時のわだかまりのような ちいさな繭玉。
虚月
 あたたかくて、頼りないその糸は
虚月
 ……たしかに、その居所に。
*