夜目菜
調理器具の手入れはそこそこ。食材は冷蔵庫と、食品棚にある限り。
虚月
その片隅で冷蔵庫を漁り始めている。いつものように。
夜目菜
「ごはんとお煮しめあっためて……あとは……」
虚月
「あっ!付け合わせは白菜のお漬物がいいです!」
夜目菜
成人男性に御馳走するには……量が足りない気がする。腕をまくる。
虚月
「どうしました?お悩み事で?」 漬物をもぐつきながら。
夜目菜
幸い鶏肉はあるし。からあげ粉をまぶして揚げるだけ。
虚月
「……あっ」 聞かれるより先に指先を舐めている。
夜目菜
「立派な大人がつまみ食いしないでください!」
虚月
「武士は食わねどですよ! ……あれ、これは違いましたっけ。」
夜目菜
こぼれた漬けものの汁を拭いて、そのまま冷蔵庫から鶏肉を出す。
夜目菜
「それは高楊枝。食べられなくてもえらそうにしていなさいって意味です」
虚月
鼻歌まじりにセーターで指先を拭っている。 こどもだ。
虚月
そのうしろで 唄われるのは 不安定なメロディ。
……それは、どこの国の唄だったろうか。
夜目菜
ビニールに入れて、からあげ粉を振り、まぶし。こねこね。
虚月
にく、にく、にく。 桃色と白のコントラスト。
夜目菜
そのあたりのスーパーで買ってきた、100g118円のありふれた鶏もも肉。
虚月
白く化粧されゆく桃色をみつめる。
……肉はこうして食われる形となる。
夜目菜
熱が入れられ僅かに泡立つ油の温度を、箸についた衣で確かめながら。
虚月
「……そうですねぇ。」 ぱちぱちと油の撥ねる音が聞こえる。
虚月
その視線は、指先に。 沈みゆくそれらを眺めて。
夜目菜
油の温度が下がらないように火を調節しながら。
虚月
夜目菜のずっと先を見ている。
遠く向こう側を覗き込むように。
夜目菜
なんとなく、言葉を取り戻すきっかけを失って。
虚月
油の中で、揺れる。湧き上がる熱と、湯気。小さな気泡たち。
それは、今か今かと、その口に食われる時をまっている。
夜目菜
贅沢でも、手が込んでいるわけでも、なんでもない。
虚月
「わ~~い!」 何事もなかったかのように、はしゃいで見せる。
虚月
箸を2本抜き取って、熱々を頬張る。 いつものように。
虚月
そこだけ切り取ったならば、
これはいたって普通の日常風景だ。
虚月
食いしんぼうの青年?と、少し世話焼きの少女が 食卓を囲んでいる。
夜目菜
1D6
DiceBot : (1D6) > 3
虚月
1d6 行動順!
DiceBot : (1D6) > 5
虚月
……いつものように、振舞っている。つもりだ。
虚月
飲み込む。 ああ、やけに。 温かい、血の味。
虚月
――脳裏に浮かぶのは、白い耳。 生暖かい血の味。
虚月
「……夜目菜ちゃんはさ。」 何かを、言いかけて。
虚月
「……やっぱりいいや。」 もういちど頬張って。飲み下す。
夜目菜
2D6=>7
DiceBot : (2D6>=7) > 9[6,3] > 9 > 成功
夜目菜
煮しめを先に食べるのは、『食事の時は野菜から!』という教育の賜物だ。
夜目菜
飲み込まれたその言葉に、じっと視線を遣る。
虚月
2D6>=9
DiceBot : (2D6>=9) > 4[1,3] > 4 > 失敗
夜目菜
やっぱりちょっとやわらかいというか、べちゃべちゃしちゃうんだよな~。
夜目菜
今度野茉莉さんに一緒に作ってもらおうかな……
虚月
……関係ないことだ。
私は神でなく、彼女は贄でもない。
対等な人と人でしかない。
虚月
「さぁどんどん食べてください!ご馳走ですよ!」
[ 虚月 ] 情緒 : 0 → 1
夜目菜
誰かを傷つけるための確かな方法など知りもしない。
夜目菜
こうして穏やかに生きて行く上で、負った僅かな生傷があるばかりだ。
夜目菜
だから、目の前の男の人が抱える"何か"に、触れるすべも持たない。
虚月
箸にも手を付けず。
にこにこと、それを見つめている。
虚月
「最近の女の子は痩せすぎるくらいですからね!」
虚月
「夜目菜にはたくさん食べてもらいませんと。」
夜目菜
2D6=>7
DiceBot : (2D6>=7) > 8[5,3] > 8 > 成功
夜目菜
「私はわりと、食べてる方だとおもうんですけど」
夜目菜
「ああでも、うろつきおにいさんには敵わないや」
虚月
「そうですか? でもこの前だってお茶碗1杯ほどしか……」
虚月
「じゃあ上限突破!しちゃいましょう! ほらほら!」
夜目菜
「学校の子なんて、お弁当にこれくらいのごはんしか入ってなくて……」
虚月
しょんぼりしてみせる。 それを、自分の口へもぐり。
虚月
2D6>=8
DiceBot : (2D6>=8) > 9[3,6] > 9 > 成功
夜目菜
純粋に――この人が、何かを食べているのを見るのはうれしい。
夜目菜
こちらにまでやけに食べさせようとしてくるのは困りものだけれど。
夜目菜
保護者と囲む食卓とは違うことが、はっきりとわかってしまうくらいに。
[ 夜目菜 ] 情緒 : 0 → 1
虚月
「安心なさい、夜目菜の作るご飯は国一番ですよ。」
虚月
「……ふふ、でも美味しいです。 誇ってよいですよ。」
虚月
2D6>=7
DiceBot : (2D6>=7) > 9[4,5] > 9 > 成功
夜目菜
2D6=>9
DiceBot : (2D6>=7) > 7[3,4] > 7 > 成功
夜目菜
「……いっぱい食べてくれるので。野茉莉さん、いつもうれしそうですよ」
夜目菜
「来るってわかったら、いつもあれこれ用意してます」
虚月
「でも、野茉莉はすぐに怒りますよ!
靴の脱ぎ方がだらしない!とか、シャツはみ出てる!とか……」
夜目菜
「それはうろつきおにいさんがだらしないからでしょ!」
虚月
……でも、いつも布団が用意してある。
ここには来客も多いから、いつもそうなのだと思っていたけれど…
虚月
「今度プンスカした時に、からかってやりましょう!」
夜目菜
あれこれ準備してしまうのは自分も同じなのだから。
虚月
「いやあ~愛されてるっていいことですねぇ~」
唐揚げに手が伸びるひょいぱく。
[ 夜目菜 ] 情緒 : 1 → 2
虚月
「夜目菜は本当に野茉莉のことが好きなんですね。」
夜目菜
2D6=>7
DiceBot : (2D6>=7) > 7[6,1] > 7 > 成功
虚月
「……それじゃあやっぱり邪魔しちゃ悪いかな。」
虚月
2D6>=7
DiceBot : (2D6>=7) > 6[4,2] > 6 > 失敗
[ 虚月 ] 情緒 : 1 → 2
虚月
……食べても。食べても。満たされることは無い。
虚月
「やっぱりこの唐揚げは野茉莉にはもったいないですね!」
ぱく、もぐ。むしゃむしゃ。 誤魔化すように平らげる。
夜目菜
「私……うろつきおにいさんとも、仲良くなりたい、ですよ」
虚月
「でも、そんなに いいものではありませんよ。」
夜目菜
触れられるのに。会話を交わせるのに。何処かで決定的に隔てられているようにおもう。
虚月
夢の中の蛇は、易く贄を殺した。
神とあがめられるべき者ではけして無かった。
虚月
あれは自分の映し鏡だ。心の中には、何もない。
虚月
いくら道化を演じても、かつての暮らし、その運びは消えない。
夜目菜
このアパートに暮らしているひとびとと、同じだ。
虚月
2D6>=7
DiceBot : (2D6>=7) > 5[1,4] > 5 > 失敗
夜目菜
「帰らないでって言ったら、いてくれますか」
夜目菜
2D6=>7
DiceBot : (2D6>=7) > 6[5,1] > 6 > 失敗
[ 夜目菜 ] 情緒 : 2 → 3
[ 虚月 ] 情緒 : 2 → 3
虚月
「今日はもうお腹いっぱい。しあわせ腹いっぱい~」
虚月
「夜目菜ちゃんはきっといい奥さんになりますね。」
虚月
わかっている。これが誉め言葉でないことくらい。
虚月
2D6>=7
DiceBot : (2D6>=7) > 8[3,5] > 8 > 成功
夜目菜
2D6=>8
DiceBot : (2D6>=8) > 9[6,3] > 9 > 成功
[ 虚月 ] 情緒 : 3 → 4
虚月
「ほら、笑って笑って! 女の子は笑顔が一番~」
虚月
……暖かいてのひら。 こねるにはすこし肉が足りない。
夜目菜
「先にやったのはうろつきおにいさんです~」むくれる。
虚月
両手がふさがっている相手の懐に 手を差し込む。
夜目菜
咄嗟に突き飛ばすこともできず、身をよじる。
夜目菜
その手から逃れて、けれどそれ以上退くこともせず。
虚月
「はは、やっぱり戯れはこの辺にしときませんと。」
虚月
「かわいい女の子に構われて浮かれちゃったのかもね。」
夜目菜
戯れなのなら、もっとふざけていてくれれば。
虚月
「悪いお兄さんには気を付けなきゃだめだよ。」
虚月
「その調子!その調子!そのまま撃退しちゃえ!」
虚月
そのくらいでいい。 きっと、これ以上近づくべきではない。
夜目菜
*5R 手番:夜目菜
*アピールします…… c10……
虚月
2D6>=7
DiceBot : (2D6>=7) > 10[6,4] > 10 > 成功
夜目菜
2D6=>10
DiceBot : (2D6>=10) > 7[4,3] > 7 > 失敗
虚月
元よりふらりと現れる通いの男だ。
片付けてしまえば、痕跡すら、のこらない。
虚月
「……俺、もうここには来ないでいようと思うんだ。」
虚月
「野茉莉にもわるいし。
こうやってごはん食べさせてもらってばっかだし。」
夜目菜
いつだってあの人は、誰かの心配をしている。
虚月
「だから、これは 夜目菜ちゃんとだけの、ひみつ。」
夜目菜
なんで、とも、どうして、とも、やだ、とも。
夜目菜
言葉が出てこない。開いたままの口から、息を吐くことも忘れて。
夜目菜
わるいことをしたと。いけないことをしたと。
夜目菜
これ以上何も云わなければ、時が止まってくれるのではないかと。
夜目菜
時は止まらない。ここには不思議も奇跡もない。
[ 夜目菜 ] 情緒 : 3 → 4
虚月
――時は止まらない。
とんとん。 軽やかに、板を踏む音。
夜目菜
2D6=>7
DiceBot : (2D6>=7) > 11[5,6] > 11 > 成功
夜目菜
出ないはずの言葉が、飲み込んだはずの言葉が、
虚月
2D6>=11
DiceBot : (2D6>=11) > 8[3,5] > 8 > 失敗
[ 虚月 ] 情緒 : 4 → 5
夜目菜
ほつれ、伸びきったぼろのセーターの裾から、手繰るように。
夜目菜
その肌に熱はなく、額に感じるのはセーターにわだかまる、
僅かなこの部屋の温もりだけ。
夜目菜
「かえってくるとき、ぜったい、連絡あります」
虚月
「僕は、素敵なお兄さんのままでいたいんだ。」
夜目菜
「……わるいおにいさんだって、自分で言った」
虚月
「悪いお兄さんなら、まだいいほう。」 微かに笑う。
虚月
しっている。わかっている。
自分の正体は――化け物だった。
夜目菜
どうしても、どうやっても、手を伸ばさずにはいられない。
夜目菜
なぜか、ずっと、ずっとそうして、手を伸ばさなければならないと、
虚月
その手が、いくら優しいものであろうとも。
その腕が、どれだけ暖かかろうとも。
――心に巣食うのは蛇だ。
夜目菜
けれどやりかたなんてわからなくて、焦りばかりが募って。
虚月
それは、首を絞め。 心を縛り付け、そして――
虚月
蛇が、とうの昔に食らってしまったのかもしれない、などと。
夜目菜
相手が扉から手を離せば腕が緩む。
一歩、二歩、後ろへ下がり、顔を上げて。
虚月
癒えない疵に蓋をして、隠していても、どうして触れてしまうのか。
虚月
そこは、己の体温よりも、あたたかく。
ほんのすこしだけ、満たされていた。
虚月
結ぶには、すこし遠い。
正すにも、まだ足りない。