ご注意 
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GM

【ご注意】
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GM

【上演中は携帯電話、時計のアラームなど、音の出る機器は演出の妨げとなるため、電源をお切りください】
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GM

【上演中のカメラ・携帯電話などによる写真・映像の撮影は固くお断りしております】
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GM

【上演中の私語・立ち見・その他あ割のお客様のご迷惑となる行為はお控えくださいますようお願い致します】
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GM

 


 開幕 
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GM

(多くの椅子が並ぶ。そこにまばらに座る喪服の人影)
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GM

「それでは、続いて前にお座りの方から順番にご焼香となります」
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GM

(1人、1人と席を立ち、棺の前の焼香台へと並んでいく)
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GM

(棺の窓は開かれておらず、遺影も無い)
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日比野 一夏

横の空席が埋まる。
人影を見やると、立ち上がり それぞれに一礼。
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日比野 一夏

ひとあし、ふたあし、しずしずと歩み出でる
香をつまむ、額に添えて、炭の上にくべる。
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日比野 一夏

淡々と並び、ひとつ前と、同じ動作の繰り返し。
ただ静かに合掌すると 席へと立ち戻っていく。
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日比野 一夏

あるとすれば、僅かにまたたくくらいのこと。
この席ではただそういう機械のように動きを真似るだけ。
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日比野 一夏

あるとすれば、僅かにまたたくくらいのこと。
この席ではただそういう機械のように動きを真似るだけ。
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日比野 一夏

着席。 音はない。
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黒坂森 美幸

席を立つ。かすかに椅子のきしむ音。
床を革靴の底が踏むまばらでかすかな音が続く。
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黒坂森 美幸

一礼、一礼と決まった礼をし。
抹香を額におしいただく。
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黒坂森 美幸

炭の上にまかれた香が煙を上げるのを見届けて合掌をといた。
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黒坂森 美幸

喪服用スーツの黒に白すぎるシャツの襟と袖。
左手に黒い数珠が下げられて、房が歩くたびに揺れる。
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黒坂森 美幸

席に戻る頃には、数珠はポケットの中にすっかり押し込まれていた。
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乙葉 くろの

戻って来た誰かの影を目で追う。次は自分。
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乙葉 くろの

同じように礼をする。
同じように並んで、同じように歩む。
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乙葉 くろの

──こつ、と踵が鳴った。
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乙葉 くろの

前の人物を真似たよう。
ダ・カーポ。そっくりそのまま繰り返しの動作。
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乙葉 くろの

ただ、一つ異なるのは。
うすく唇に浮かべた笑み。
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乙葉 くろの

香をつまみ。
額へと運んで──炭の上へ。
立つ煙に、目を伏せた。
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乙葉 くろの

何事か、口が動く。誰も気付かない。
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乙葉 くろの

手を合わせて、席に戻る。
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乙葉 くろの

作法しらずのまとめていない髪が揺れた。
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GM

「では続きまして……」
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GM

(暗転)
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GM

 
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GM

(去りゆく参列者のうち、3名を葬儀場のスタッフが引き止める)
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GM

「実は故人様のご遺言で、葬儀後に貴方達を別室にご案内するようにと言われておりまして……」
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GM

「いわゆる精進落しの場となるのですが、貴方達だけで、どうか自分の思い出話をしてほしい……とのことです」
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GM

「どうか、こちらへ……」
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GM

(暗転)
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GM

 
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GM

(雨の音が聞こえ始める)
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GM

(小さな部屋に3人が案内される。畳敷きの部屋にはつまみやお酒、食事が用意された机)
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GM

(小規模ながらも台所や冷蔵庫、トイレへ続く扉もある。普段は親族が宿泊する用途の部屋なのか、十分な設備が整っている)
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GM

(それは窓の無い部屋だった)
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黒坂森 美幸

「おにぎり」
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黒坂森 美幸

「ってさ」
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黒坂森 美幸

置かれている食事を指さして。
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黒坂森 美幸

「葬式色してるのにめでたい日にも出るよね」
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黒坂森 美幸

「遠足とか、運動会とか」
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日比野 一夏

くす、小さくかすれた声で。
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日比野 一夏

「……唐突。」
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日比野 一夏

「結構久々なのに。
 あんたって、葬式でも変わんないよね。」
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日比野 一夏

「…早速食べちゃう? おにぎり。」
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黒坂森 美幸

「久しぶり、から話したところで」
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黒坂森 美幸

「面白い話があるわけでもないし」
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乙葉 くろの

笑む。
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黒坂森 美幸

「腹減ったし、食べよう」
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乙葉 くろの

「食いしん坊さんたちね」
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黒坂森 美幸

「おにぎりと味噌汁と漬物あれば。おれ、それでいいや」
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黒坂森 美幸

ネクタイを緩めて座敷にどっかと座り胡坐をかく。
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乙葉 くろの

どうしようか、ともう一人の女を見た。
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日比野 一夏

「残念ながら味噌汁はなさそうだけどね。」
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日比野 一夏

「くろのは食べないの?」
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日比野 一夏

片手におにぎりを掲げて。
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乙葉 くろの

「いつかちゃんが食べたら……?」
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乙葉 くろの

食べた後ってこと、と付け足す。
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黒坂森 美幸

その後ろで適当にグラスを並べて、お茶を淹れる音。
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黒坂森 美幸

ポットの蓋を開けて残りの分量を確認しているらしい湯気。
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黒坂森 美幸

「はんぶんこしてあげたら?」
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日比野 一夏

一間置いて手のものを見て。
「毒見みたい……」 たべた。
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日比野 一夏

「……おふぉい。」遅い。
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乙葉 くろの

そっと、女の隣に座る。
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乙葉 くろの

「はんぶんこしたら──いつかちゃんのぶんが半分になっちゃうから……」
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乙葉 くろの

薄く笑んだまま、くろのもおにぎりに手を伸ばす。
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日比野 一夏

「…………むう、」 もごもご何か言いたげに食べている。
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黒坂森 美幸

おにぎりを食べている2人の前に会場備品の薄い湯飲みを置く。
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乙葉 くろの

「ありがとう」
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黒坂森 美幸

ひとつ自分の前にも置いて、ようやくおにぎりに手を伸ばした。
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黒坂森 美幸

「いやあ、」
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黒坂森 美幸

「死んじゃったね、遊佐」
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日比野 一夏

「…………。」目線だけがそちらをみる。
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日比野 一夏

そしてもう一方。
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乙葉 くろの

「そうね。残念なことって、誰かが言ってたよ」
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日比野 一夏

ごくん。飲み込んで。
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日比野 一夏

「あっけないもんだよね。」
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日比野 一夏

指を少し舐める。
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黒坂森 美幸

合間に、おにぎりをかじる。
枝豆に手を伸ばす。
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黒坂森 美幸

「初めての葬式ってわけじゃないけど」
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黒坂森 美幸

「……友達が死ぬのははじめて」
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乙葉 くろの

「うん」
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日比野 一夏

んん……喉が鳴る音。
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日比野 一夏

「変な感じだよね。なんかまだ実感わかないよ。」
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日比野 一夏

「……死んだのかな、遊佐。」
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黒坂森 美幸

「棺桶に入ってるよ」
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乙葉 くろの

「煙になっちゃうんだね」
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日比野 一夏

「でも顔、見なかったし」
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黒坂森 美幸

「あの箸でつまむやつ。あれに似てるからポテチ箸で食ったら駄目って」
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乙葉 くろの

「疑ってるの?」
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黒坂森 美幸

「遊佐のばあちゃんに怒られたよな」
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日比野 一夏

「そうだっけ? よく覚えてるね、そんなこと。」
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日比野 一夏

「ポテトか……」
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乙葉 くろの

お茶を飲んだ。ことんと、湯呑を置く音。
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日比野 一夏

すこし面白そうに笑う。
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日比野 一夏

「そしたら、どっちかっていうとフライドポテトだな。」
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日比野 一夏

「ふふ……なんか、信じられなくて。」
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黒坂森 美幸

「不健康なやつの骨は薄く砕けるらしいよ」
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黒坂森 美幸

「遊佐はどうかな」
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乙葉 くろの

「砕けないでほしいな」
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乙葉 くろの

「砕けたらそこで終わりだから……」
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日比野 一夏

「大丈夫だよ、あいつ健康優良児ってかんじだったし。」
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日比野 一夏

「飛び降りて骨折ってもぴんぴんしてた。」
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黒坂森 美幸

「どのみち骨壺に入れる時に結構砕くよ」
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乙葉 くろの

僅かな間。
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黒坂森 美幸

「喉仏っていちばん縁が深かった人が入れるらしいけど」
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黒坂森 美幸

「おれたち3人のうちの誰がやるんだろうね、それ」
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乙葉 くろの

「なら、いっか。」
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乙葉 くろの

2人を代わる代わるに見つめる。
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日比野 一夏

「見送るなら、どっちかじゃない。」
 ふたりを見やって。
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日比野 一夏

「たぶん、そっちのが喜ぶでしょ、遊佐も。」
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黒坂森 美幸

「そんなこと言ってたっけ、遊佐」
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乙葉 くろの

「うん。いつかちゃんと、みゆきちゃん?」
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乙葉 くろの

「あれ……?」
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日比野 一夏

「言わないよ。少なくともあたしは知らないし。」
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乙葉 くろの

首を傾げた。
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日比野 一夏

首を振り、くろのへ指さし。
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日比野 一夏

「なんとなく。」
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乙葉 くろの

「そう、かな。」
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黒坂森 美幸

「遺言があったとして」
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黒坂森 美幸

「書いてるわけないしなあ」
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日比野 一夏

「っていうか……書かなそう?」
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日比野 一夏

畳んでいた足を少し崩した。
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乙葉 くろの

「え、」
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乙葉 くろの

ちいさく眼を見開く。
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乙葉 くろの

「……ううん。なんでも……」
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黒坂森 美幸

「するか、思い出話」
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黒坂森 美幸

「いちばん縁が深いやつ」
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黒坂森 美幸

「おれたちで探してやろう」
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日比野 一夏

「いいね、それ。」
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日比野 一夏

「あいつもそういうの…好きそうだ。」
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乙葉 くろの

「──うん。賛成」
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安住 遊佐

──あはは
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安住 遊佐

──ふふふ
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GM

(誰のものとも知れない笑い声が響く)


 メインフェイズ 
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GM

~ メインフェイズ ~
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調査対象ハンドアウト

HO:小学校の思い出
貴方達は皆、安住遊佐と同じ小学校に通っていた。
その頃の事を詳細に思い出すことはできない。だけど、とても楽しく充実した日々を過ごしていた筈だ。
【このHOは調査できない】
HO:中学校の思い出
貴方は、安住遊佐と同じ中学校に通っていた。
そこではどんな事があっただろう。
HO:高校の思い出
貴方は、高校に通う安住遊佐と会っていた。
そこではどんな事があっただろう。
HO:大学院の思い出
貴方は、大学院に通う安住遊佐と会っていた。
そこではどんな事があっただろう。


 1-1 
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GM

~ メインフェイズシーン1 シーンプレイヤー:黒坂森美幸 ~
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黒坂森 美幸

HO:大学院の思い出 を調査。
【情景】でまぶたの裏にある記憶を思い出す。
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黒坂森 美幸

2D6>=5 (判定:情景) (2D6>=5) > 5[2,3] > 5 > 成功
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GM

成功。
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GM

【秘密】大学院の思い出
ショック:なし
拡散情報。
遊佐は、大学院で認知科学の研究をしていた。その頃に黒坂森 美幸とも会っていて、多少なりとも遊佐を手伝っていた。
卒論等とは別個に行われていたそのプロジェクトが一体どんな研究なのかと聞かれて、遊佐は「今は秘密だけど、きっと近い内に教えるよ。そんな運命のような気がするんだ」と答えた事がある。
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黒坂森 美幸

「水槽ってあるじゃん」
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黒坂森 美幸

「あいつ、うちにあれ買いに来たことあったよ」
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黒坂森 美幸

このくらいの、と手で大きさを示す。
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日比野 一夏

「魚とか飼うやつ?」
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乙葉 くろの

「箱庭みたいに、したのかな」
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黒坂森 美幸

「そう。うちアロワナとか扱ってる熱帯魚屋だからでかいの買ってってさ」
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乙葉 くろの

何か置いたりして、と手で橋の形を真似る。
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黒坂森 美幸

「大学まで届けた」
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日比野 一夏

「そんなかわいい趣味?」 草とか乗せて。
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乙葉 くろの

「結構重たいのに?」
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乙葉 くろの

呆れた顔をする。
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黒坂森 美幸

「軽トラに乗せてさ」
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日比野 一夏

「大仰! え、全然かわいくないな。」
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日比野 一夏

「研究とか、実験? あいつ、大学とか行ってたんだ…意外。」
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乙葉 くろの

「重たいから。ふふ」
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黒坂森 美幸

「大学の庭からクチナシの花のにおいがしてた気がするから、今くらい」
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黒坂森 美幸

「赤レンガの大学校舎だけ妙に覚えてる」
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黒坂森 美幸

「雨んなかだと日本っぽくなくてさ」
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黒坂森 美幸

「裏口の方であいつが煙草吸いながら待ってて」
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黒坂森 美幸

「雨ん中ふたりで抱えて研究室まで持ってった」
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日比野 一夏

……たばこ。 口元だけうごかして指先を二本。
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日比野 一夏

頬杖をつくと、すこし天をみあげた。
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黒坂森 美幸

そ、たばこ。と同じように指を二本立てて。
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乙葉 くろの

目で追う。

煙草、梔子の花。
雨の日は、花の香りが強いね。

──歌うようなつぶやき。
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黒坂森 美幸

「それ、脳に悪いんじゃないのって言ったら」
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黒坂森 美幸

「人によるし、って返されて」
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黒坂森 美幸

「煙草よりストレスの方がよっぽど脳には悪いとかなんとか言いながら」
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黒坂森 美幸

「海馬の模型見せられた」
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黒坂森 美幸

「ほんとにタツノオトシゴみたいな形してるのな」
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乙葉 くろの

「海馬って、なんだっけ……?」
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日比野 一夏

「海の馬だよ。」
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日比野 一夏

耳元でささやいて はは、とわらう。
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乙葉 くろの

2人を見る。自身の顎に手を遣った。
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乙葉 くろの

はて、と大袈裟に首を傾げる仕草。
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日比野 一夏

「泳ぐんだよ、大海原をさ。揺蕩うみたいにして。」
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日比野 一夏

頭をくるくるやって。
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乙葉 くろの

「うん。」
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乙葉 くろの

「うん……?」
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黒坂森 美幸

「脳みそのなかにそういう形のかたまりがあるんだってさ」
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乙葉 くろの

「その場所の、名前」
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黒坂森 美幸

グラスの水滴で、タツノオトシゴの形を机になぞる。
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乙葉 くろの

とんとんとこめかみを叩く。
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乙葉 くろの

「おバカさんでごめんね……」
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乙葉 くろの

膝の上に手を揃える。
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日比野 一夏

「今に始まったことじゃないし、かわいいよ。」
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乙葉 くろの

一夏をすこし睨むように目を細めて。
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乙葉 くろの

「ありがとう」
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乙葉 くろの

笑う。
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日比野 一夏

「それで?遊佐、脳みそどっかにやっちゃったって?」
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日比野 一夏

冗談めかして、煙草のまねごと。
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乙葉 くろの

「くちなしになったのに、脳までもなくしちゃった?」
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乙葉 くろの

冗談めかして、頭を再び叩いた。
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日比野 一夏

「いいね、最高。」
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日比野 一夏

 二本の指で指さして。
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黒坂森 美幸

「このあと、焼いちゃえばあってもなくてもわかんないし」
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日比野 一夏

「寂しいこと言わないの。」
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日比野 一夏

「それより しゃべったんでしょ、遊佐と。」
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日比野 一夏

続きを催促するように、足を組み替えて。
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乙葉 くろの

耳を澄ませる。
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黒坂森 美幸

「いいや、」
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黒坂森 美幸

「代金の中に一緒に入ってた」
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黒坂森 美幸

「『今は秘密だけど、きっと近い内に教えるよ。そんな運命のような気がするんだ』」
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黒坂森 美幸

「水色の付箋にそう書いてた」
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日比野 一夏

つまんない、と少し首をかしげて。
「元友達でしょ、お茶くらい奢ってやんなさいよ。」
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黒坂森 美幸

「店一旦抜けて配達してたし」
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黒坂森 美幸

「手伝ったんだから、驕られるならこっちの方」
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黒坂森 美幸

「まあ、あそこの学食そんな美味いって話聞かなかったし」
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黒坂森 美幸

「いいかなって」
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日比野 一夏

「がっつり食う気のやつじゃん」
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乙葉 くろの

うんうん。頷く。
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黒坂森 美幸

「働き盛りは食べ盛り」
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日比野 一夏

「まぁでっかくお育ちになりまして…」
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乙葉 くろの

「そうね」
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乙葉 くろの

「わたしたちも、だけど」
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日比野 一夏

「そう?」 くろのに目くばせ。
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日比野 一夏

「でもその感じだと 遊佐、相変わらずっぽいね。」
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乙葉 くろの

「よかった」
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日比野 一夏

「運命なのかね、これも。」
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乙葉 くろの

「運命……」
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乙葉 くろの

指先で、くるりと輪を描く。
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乙葉 くろの

「あるといいね」
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GM

~ メインフェイズ第1シーン 終了 ~


 1-2 
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GM

~ メインフェイズシーン2 シーンプレイヤー:日比野一夏 ~
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日比野 一夏

そっか あいつ、あのまま進学したんだな…
HO:高校時代の思い出。海馬。標本。
しばらく使うこともなかった【化学】の授業。
想像上の『遊佐』と、記憶を繋いでゆく。
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日比野 一夏

2D6>=5 (判定:化学) (2D6>=5) > 3[1,2] > 3 > 失敗
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日比野 一夏

首をかしげる。……繋がらない。
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日比野 一夏

あいつってそんな感じだっけ?
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日比野 一夏

あいつは、変なことを言うやつだった。
あいつは、もっと馬鹿っぽく笑うやつだった。
あいつは……
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日比野 一夏

思い出すのは小学生の頃の『遊佐』だ。
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日比野 一夏

高校生の頃のあいつは…… 【正気度】削って振り直し。
[ 日比野一夏 ] 正気度 : 6 → 5
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日比野 一夏

2D6>=5 (判定:化学) (2D6>=5) > 10[5,5] > 10 > 成功
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GM

【秘密】高校の思い出
ショック:なし
拡散情報。
貴方は、遊佐と一緒に高校の文化祭を巡った事がある。それはとても楽しい思い出だった。
あの時、安住遊佐は貴方にこう言った。
「人がそこに生きているっていうのは、つまり再現性があるって事なんだよ」
HO「恋の思い出」が公開される。
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GM

HO:恋の思い出
貴方は、実は安住遊佐に告白した事がある。
その時の顛末はどういったものだったろう。
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日比野 一夏

「……だめだ!」 ぷはーと息をつくと。笑いだす。
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日比野 一夏

「あいつが運命とか、勉強までしてクソ真面目に大学とか。」
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日比野 一夏

「海馬の模型? ふふ。
 あんなのおもちゃとそんなに変わんないでしょ。
 水槽だって何に使ったか……」
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日比野 一夏

「高校の文化祭の時だって、あいつ。
 めちゃくちゃリアルなゾンビメイクしてんの。」
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日比野 一夏

くるくる。ねじを回す所作で。
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黒坂森 美幸

「それフランケンシュタインじゃない?」
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乙葉 くろの

「器用だよね」
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日比野 一夏

「どっちもかわんないでしょ。青っ白い顔で傷だらけ。」
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日比野 一夏

「あ~手先は器用だったもんな、たしかに。」
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黒坂森 美幸

「正確にはフランケンシュタインの怪物」
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日比野 一夏

「……なんか違うの?」 きょとん。
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乙葉 くろの

「フランケンシュタインは人の名前、かな?」
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乙葉 くろの

目配せ。
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黒坂森 美幸

「そうそう。作った博士の方の名前」
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日比野 一夏

「え、じゃ…あれは何??」
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乙葉 くろの

「かいぶつ。」
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乙葉 くろの

がおーと、両手を上げる。
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黒坂森 美幸

「フランケンシュタインの怪物」
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乙葉 くろの

「くわしくはみゆきちゃん。」

と手で合図を添えて。
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日比野 一夏

「……え、じゃああれ……怪物のメイクじゃん。」
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日比野 一夏

ふたりに、めくばせ。
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乙葉 くろの

「いつかちゃん……」
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黒坂森 美幸

「その怪物の話。雨の日に作られたんだって」
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乙葉 くろの

肩を揺らして笑った。
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黒坂森 美幸

「女の人らしいよ、作者」
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日比野 一夏

「へえ~~…… って、馬鹿にしてる?」怪訝そう
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乙葉 くろの

髪を指に絡めた。
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乙葉 くろの

「でも、ひとを怪物にするの」
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乙葉 くろの

「きっと、女の人の方だろうなって」
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乙葉 くろの

小指を示す。
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黒坂森 美幸

「してない」
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乙葉 くろの

「あれって……つぎはぎの死体じゃなかった?」
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黒坂森 美幸

「まあ、博士の方じゃなくて作家の方って付け足そうか悩みはしたけど」
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乙葉 くろの

「怪物、しか知らなくて」
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乙葉 くろの

「作者さんが、女の人なんだ」
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黒坂森 美幸

「そう。死体で作られた怪物の話だよ」
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日比野 一夏

ううん、と。自分の頭をねじねじしている。
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日比野 一夏

こんがらがっている。
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乙葉 くろの

「情ってあるじゃない。いつかちゃん」
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日比野 一夏

「……情?」
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乙葉 くろの

「死体をつぎはぎして、怪物を作る理由」
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乙葉 くろの

「怪物は伴侶が欲しかったって。」
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乙葉 くろの

思い出した言葉を添える。
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乙葉 くろの

「筋は良く知らないの。でも、」
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乙葉 くろの

「そうやって、教えてくれた人がいたの」
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日比野 一夏

ああ、納得して。
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日比野 一夏

「……だから、知ってたのか。」
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日比野 一夏

「センチメンタルな理由だね。」
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乙葉 くろの

「おバカさんを憐れんで教えてくれたの」
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乙葉 くろの

とんとん、と指で胸を叩く。
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乙葉 くろの

「ちゃんと知りたいな。みゆきちゃん、詳しいお話とか……何見たら分かるのかとか」
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乙葉 くろの

視線を向ける。
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乙葉 くろの

「知ってたら、また教えて欲しいな」
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乙葉 くろの

「いつかちゃんも知りたいでしょ?」
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日比野 一夏

「私もちょっと気になるな、その話。」
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乙葉 くろの

彼女に笑う。
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日比野 一夏

「……あいつがそんなこと、考えてたとは思えないけど。」
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黒坂森 美幸

「おれも映画で観たぐらいだけど」
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黒坂森 美幸

「確か、手紙で始まるんだよ」
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乙葉 くろの

「手紙。」
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乙葉 くろの

ポケットに遣ろうとした、手を止める。
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日比野 一夏

耳をかたむける。
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乙葉 くろの

そして、座り直した。
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黒坂森 美幸

「北極探検家が今にも凍死しそうな男に会って、その男がフランケンシュタイン博士」
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黒坂森 美幸

「その博士の話を、探検家が自分のお姉さんに手紙で話して聞かせた」
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黒坂森 美幸

「大体の筋は、」
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黒坂森 美幸

「生命の神秘にとりつかれた博士は、理想の人間を作るために死体を集めて」
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黒坂森 美幸

「夜、だったと思う。寒い、冬の夜に理想の人間は生まれた」
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黒坂森 美幸

柿の種の封を開ける。
紙皿にばらばらと落として、つまむ。
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黒坂森 美幸

「頭もよく、人の心を持ち、身体も丈夫で怪力。でも見た目がね」
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乙葉 くろの

「ばけもの。」
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乙葉 くろの

「みにくいとひとは、厭な顔をするから」
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日比野 一夏

皿にからより分けるように、ナッツをつまむ。
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日比野 一夏

「世知辛いね。」
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黒坂森 美幸

「怪物は置き去りにされて、博士を恨んで。博士の弟と家政婦を殺すんだ」
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日比野 一夏

「えっ バッドエンドじゃん!」 ナッツがこぼれた。
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乙葉 くろの

湯呑を引き寄せた。
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黒坂森 美幸

「続きがある」
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黒坂森 美幸

「自分の恐ろしさと醜さに怯えた怪物は、同じくおかした罪に震える博士に言った」
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黒坂森 美幸

「生涯の伴侶をつくってくだされば、もう二度と人前に姿をあらわしません」
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黒坂森 美幸

「結局、博士は約束を違えて。怪物に自分の妻を殺された」
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乙葉 くろの

自身の手首をなぞった。
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日比野 一夏

「いや、やっぱりバッドじゃん!?」
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乙葉 くろの

「うそつきだもの」
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乙葉 くろの

「仕方ないわ」
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黒坂森 美幸

「それで、そう。確か絶望して、北極へ逃げた先で出会った探検家の男にすべてを話した」
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黒坂森 美幸

「のが、最初の手紙だ」
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乙葉 くろの

祈りを捧げる仕草。
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黒坂森 美幸

柿の種を指で割る。
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黒坂森 美幸

「博士の遺体の前で、博士を追ってきた怪物は泣くんだ」
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黒坂森 美幸

「最後までお父さんに、名前をもらえなかった。って」
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乙葉 くろの

「ばかで、かわいそうね」
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乙葉 くろの

肩を竦めた。
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黒坂森 美幸

「まあ、考えようによっては」
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黒坂森 美幸

「親子の愛、ということで」
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乙葉 くろの

「怪物の愛は家族愛も、伴侶への愛も」
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乙葉 くろの

「果たされない」
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乙葉 くろの

一夏の反応を窺う。
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日比野 一夏

「それは、うそつきを信じた罰かな?」
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日比野 一夏

くろのに首を傾げて。
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乙葉 くろの

「ううん────」
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乙葉 くろの

「おろかでみにくいものへの、罰。」
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日比野 一夏

「辛辣なお答えですこと。」
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乙葉 くろの

「本気にした?」
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日比野 一夏

「ちょっとはね。」
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乙葉 くろの

「冗談。」
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黒坂森 美幸

「まあ、作者の女の人も」
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黒坂森 美幸

「百物語感覚で作ったんじゃない?」
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黒坂森 美幸

「雨が止まないから、怖い話でもしましょうかって」
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乙葉 くろの

「それで創り出された怪物は、」
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乙葉 くろの

「かわいそうね」
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日比野 一夏

「まぁでも、抗えなかったんじゃない。」
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日比野 一夏

「作りたいって、思ったんならさ。」
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黒坂森 美幸

「遊佐も映画観たことあるのかね」
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黒坂森 美幸

「原作って図書館に置いてあるような本だっけ?」
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乙葉 くろの

「ゆさちゃんみたい。」
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乙葉 くろの

わからない。一夏を見る。
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日比野 一夏

「どうだろ。」
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日比野 一夏

「でも、ここにいたら聞いてみたかったな。」
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日比野 一夏

「怪物は誰に恋をしたんですか?って。」
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日比野 一夏

ふたりを交互にみやる。
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乙葉 くろの

「怪物の恋に注目するの」
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乙葉 くろの

「いつかちゃんらしいね」
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日比野 一夏

「私が気になってるのはあんた達の方。」
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日比野 一夏

「だって遊佐、あんた達のどっちかが好きだったんでしょ?」
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乙葉 くろの

「あれ、」
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乙葉 くろの

「ふたりのうち、どちらかじゃ」
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日比野 一夏

くる、と。 美幸を見る。
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乙葉 くろの

一夏と美幸を交互に見た。
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黒坂森 美幸

「なに」
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日比野 一夏

「柿の種落ちてる。」
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黒坂森 美幸

「まあ、おれ見た目悪くないしね」
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乙葉 くろの

「みゆきちゃん?」
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黒坂森 美幸

柿の種を拾って口に放る。
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乙葉 くろの

落ちた柿の種と顔を見比べる。
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日比野 一夏

「これはまたひとつ謎が深まりましたな…」
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乙葉 くろの

「あ」
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乙葉 くろの

食べちゃった。
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日比野 一夏

「まぁ、遊佐はケロっとしたもんだったけどね。」
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日比野 一夏

「たしか……なんだっけ。」
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日比野 一夏

「人がそこに生きているっていうのは、
 つまり再現性があるって事なんだよ……的な。」
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日比野 一夏

「ありゃ恋愛どころじゃなかったと思うかな。
 怪物の恰好して言う台詞じゃないでしょ。」
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日比野 一夏

「……あの時は、もう二人もいなかったし……さ。」
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日比野 一夏

柿の種をつまんで。噛む。
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乙葉 くろの

「どうだろうね。」
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乙葉 くろの

「恋って……内緒にしていた方が、」
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乙葉 くろの

「綺麗なこともあるでしょう?」
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乙葉 くろの

意味ありげに微笑んだ。
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黒坂森 美幸

「葬式はこうやって人呼ぶのにね」
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黒坂森 美幸

「死んだあとなら内緒も何もないし」
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乙葉 くろの

「寂しがり屋さんだったかも」
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日比野 一夏

「まぁ、それはそうかもね。」
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日比野 一夏

「案外フランケンみたいに……」
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乙葉 くろの

「怪物の恋?」
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乙葉 くろの

冗談めかして、また怪物のポーズ。
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日比野 一夏

「いいや、恋じゃなくて。」
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日比野 一夏

――雨の音が聞こえる。
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日比野 一夏

『がおー』と真似てかえす。
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乙葉 くろの

「かわいい」
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黒坂森 美幸

「ばけものに囲まれたな」
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黒坂森 美幸

「おやつカルパスでどうにか逃げられたらいいけど」
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乙葉 くろの

「いつかは可愛いでしょ?」
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黒坂森 美幸

卓上の小さなカルパスをふたりへ放る。
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乙葉 くろの

「いつかになら食べられちゃってもいいよ」
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乙葉 くろの

「あ」
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乙葉 くろの

受け取ろうとして、
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乙葉 くろの

手を滑り落ちる。
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日比野 一夏

キャッチ。
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乙葉 くろの

「ナイスキャッチ」
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日比野 一夏

「私はカルパスの方がかわいい。」
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乙葉 くろの

「そう?」
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日比野 一夏

「と、おもうけど。」
 口に放って。
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日比野 一夏

むしゃり。
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乙葉 くろの

床のそれを拾い上げる。
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乙葉 くろの

「お行儀が悪いんだ」
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乙葉 くろの

包装を外して、口に入れる。
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乙葉 くろの

「これでわたしたち。かいぶつだね」
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日比野 一夏

「次はだれにしましょうかね、お嬢様?」
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黒坂森 美幸

グラスに烏龍茶を継ぎ足した。
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乙葉 くろの

「みゆきちゃんは、いつかちゃんで、」
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乙葉 くろの

「いつかちゃんが行くの。」
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乙葉 くろの

「わたしは……」
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乙葉 くろの

「ゆさちゃんに噛みついちゃおうかな…」
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乙葉 くろの

かいぶつのごそうだん。
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日比野 一夏

「おやおや、熱烈宣言?」
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乙葉 くろの

「ううん。」
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乙葉 くろの

「ゆさちゃんは、博士だから、」
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乙葉 くろの

「わたしとは上手くいかないの」
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乙葉 くろの

笑った。
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日比野 一夏

「じゃ、私は食べ放題コースで。」
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日比野 一夏

がおーむしゃむしゃ
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黒坂森 美幸

またひとつカルパスを放った。
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乙葉 くろの

「おやおや。」
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日比野 一夏

「おっと。」 再びキャッチ……できない。転がる。
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乙葉 くろの

自分の方は見向きもせずに。
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乙葉 くろの

一夏の方を拾い上げて、渡す。
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乙葉 くろの

改めて拾い上げた自分の分も合わせて。
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乙葉 くろの

「食いしん坊さんだもんね?」
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日比野 一夏

「まいったな、こりゃ。」
 ふたつつまんで。 片方を渡す。
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日比野 一夏

「あんたもちゃんと食べなね。」
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乙葉 くろの

「心配性ね」
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乙葉 くろの

受け取った。
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日比野 一夏

「筋金入りですから。」
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乙葉 くろの

何処かで、水の落ちる音。
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乙葉 くろの

窓のない部屋の雨音は──遠い。
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GM

(暗転)
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GM

~ メインフェイズ第2シーン 終了 ~
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GM

(小休止)


 1-3 
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GM

~ 第2回 ~
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GM

~ メインフェイズシーン3 シーンプレイヤー:乙葉くろの ~
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乙葉 くろの

HO:恋の思い出 どうしてあんなことをしてしまったのだろう。あれは【恥じらい】を多分に含む記憶でもある。
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乙葉 くろの

2D6>=5 (判定:恥じらい) (2D6>=5) > 9[4,5] > 9 > 成功
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GM

【秘密】恋の思い出
ショック:なし
拡散情報。
遊佐にした告白は、断られてしまった。
その時の遊佐の言葉は「今はまだやらなきゃいけない事があるんだ。だけどそれが終わったら、君とずっと一緒に居るよ」というものだった。
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乙葉 くろの

やがて、躊躇うように落ちた沈黙の後。
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乙葉 くろの

湯呑を置く音。くろのは立ち上がる。
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乙葉 くろの

「さっきの話、なんだけど……」
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乙葉 くろの

「恋の、話」
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乙葉 くろの

台所に立って、二人に背を向ける。
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日比野 一夏

目線が追いかける。
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乙葉 くろの

「わたし、ゆさちゃんに告白したことがあるの」
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乙葉 くろの

「さっきのいつかちゃんの話に関わること、かなって」
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乙葉 くろの

「高校の時なの」
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乙葉 くろの

水を出そうとした手を止めた。
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乙葉 くろの

とん、と蛇口を叩く。
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日比野 一夏

「え……」 声をつく、雨の音。
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黒坂森 美幸

おやつカルパスの包みを開けて、口へ運ぶ。
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日比野 一夏

「そう、なんだ。」
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乙葉 くろの

「意外でも、ないでしょう?」
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黒坂森 美幸

「どのへんがいいなって思ったの?」
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乙葉 くろの

ため息のような笑い声。
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乙葉 くろの

「ゆさちゃんは……」
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乙葉 くろの

「わたしのことより、大事なものがありそうだったから」
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乙葉 くろの

蛇口をひねる。
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乙葉 くろの

「ゆさちゃんはきっと」
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乙葉 くろの

「OKしてくれないなって」
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乙葉 くろの

手を洗う。
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乙葉 くろの

「わかってて言ったの」
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乙葉 くろの

雨を掻き消すような、水の音。
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黒坂森 美幸

「天井のNOを見に行ったんだ」
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日比野 一夏

「…………」 指先が包み紙を弄ぶ。
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乙葉 くろの

「うん。」
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乙葉 くろの

「ふたりはどうして星がきれいなのか」
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乙葉 くろの

「かんがえたこと、ある?」
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乙葉 くろの

きゅっと蛇口をひねって、水を止めた。
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乙葉 くろの

水の滴る手を、自身の目線あたりまで上げて。
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乙葉 くろの

「届かないから、って」
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乙葉 くろの

「届かなくて、正体が見えないからだって」
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乙葉 くろの

ぱたりと水滴がおちたのを見送って。
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乙葉 くろの

そっとハンカチで拭く。
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乙葉 くろの

「わたしは思うんだけど」
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乙葉 くろの

くるりと二人の方へ向き直る。
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乙葉 くろの

「どう?」
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日比野 一夏

包み紙に視線を落として、もう一度見る。
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黒坂森 美幸

「どうだろ。おれはそういう感じじゃないな。星がきれいなのは、夜が暗いからだよ」
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黒坂森 美幸

「昼間だって出てるけど、みんな見えないだけだし」
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日比野 一夏

そうして、また目線を下に落として。
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乙葉 くろの

「いつかちゃん?」
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日比野 一夏

「……くろのはさ、知りたかったの?」
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乙葉 くろの

続きを促すように視線を向ける。
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日比野 一夏

「それの正体が、何なのかって。」
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乙葉 くろの

「ううん。」
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乙葉 くろの

「ひとかけらも、知りたくなかった。」
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乙葉 くろの

にこにこと笑みを深める。
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乙葉 くろの

「だから、」
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乙葉 くろの

「態とね」
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乙葉 くろの

「断られるような、告白の仕方をしたの」
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日比野 一夏

「……わかんないな。」
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乙葉 くろの

「万が一でも、同情を引かないように」
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黒坂森 美幸

「ちゃんと万が一もなかった?」
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乙葉 くろの

「『ゆさちゃん、あのね。』」
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乙葉 くろの

「『くろのが、もし……』」
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乙葉 くろの

「ゆさちゃんと死にたいって言ったら』」
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乙葉 くろの

「『いいって言ってくれる?』」
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乙葉 くろの

「って──」
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乙葉 くろの

「こんなのに、OKする人なんて」
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乙葉 くろの

「いるはずもないよ」
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乙葉 くろの

「だから、万全」
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乙葉 くろの

ぶい、とピースを作った。
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日比野 一夏

「そうやって、残りの一を潰した。」
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日比野 一夏

「って、わけ。」
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乙葉 くろの

「うん。」
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日比野 一夏

くしゃ、と包み紙を握る。
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乙葉 くろの

「でもでも、」
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乙葉 くろの

「ゆさちゃん、ひどいのよ」
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乙葉 くろの

「『今はまだやらなきゃいけない事があるんだ。だけどそれが終わったら、君とずっと一緒に居るよ。一緒に死ねるかはわからないけど』」
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乙葉 くろの

すこし、声を落として。
遊佐の真似をするように。
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日比野 一夏

「……そう。」
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乙葉 くろの

ライトの方へ手を伸ばす。
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乙葉 くろの

爪がきらりと光りを映した。
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乙葉 くろの

「一緒なんて要らないよ、って笑ったら」
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乙葉 くろの

「ゆさちゃんは何も言わなかった」
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乙葉 くろの

「いつかちゃんは、分からない?」
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日比野 一夏

「わからない。」
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乙葉 くろの

「うん」
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日比野 一夏

「……ただ、ひどいことするなって。」
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乙葉 くろの

「……うん。」
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日比野 一夏

少しわらって。
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日比野 一夏

「そうやって、自分から。」
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日比野 一夏

「傷つきにいくのって、すきじゃない。」
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乙葉 くろの

「傷付いてないよ」
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日比野 一夏

「…傷をつけにいった?」
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乙葉 くろの

「届かない恋が好きなの」
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日比野 一夏

「届かないって、確認するために。」
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乙葉 くろの

手を下ろす。
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黒坂森 美幸

「まあ、大体そういうのって」
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黒坂森 美幸

「届いたあとは気長な努力と責任と忍耐の日々だしね」
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乙葉 くろの

「みゆきちゃん……」
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乙葉 くろの

「結構辛い考えたかた、するんだね」
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日比野 一夏

「夢が無い」
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黒坂森 美幸

「そうかな」
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乙葉 くろの

「でもその考え方」
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乙葉 くろの

「わたしは好きだよ」
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乙葉 くろの

「この話題が、わたしの言葉が気に入らなくて」
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乙葉 くろの

「どうしようか迷ってるような、いつかちゃんも好き」
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日比野 一夏

「反対だからな」
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乙葉 くろの

弾むようなステップで、戻ってポンと座り直す。
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乙葉 くろの

「はんたい?」
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日比野 一夏

「夢が無くても、忍耐する現実だって、いいじゃない。」
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乙葉 くろの

「いつかちゃんは、いいお嫁さんになれるね」
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乙葉 くろの

「我慢できる」
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日比野 一夏

「そうかもね。」
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日比野 一夏

手のひらの包み紙を広げて、畳む。
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乙葉 くろの

ぱちぱち、と手を叩く。
冗談めかした──喝采の真似事の欠片。
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日比野 一夏

「……ロマンチックなのは苦手。」
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黒坂森 美幸

「まあ。乱暴なこというけど、男ってだいたいこんなもんって思ってるよおれは」
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黒坂森 美幸

「努力、責任、忍耐」
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日比野 一夏

「恋なんて、しない?」
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黒坂森 美幸

「いや?3つともない人生よりはある方がいいでしょ」
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黒坂森 美幸

「噛み応えがある」
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黒坂森 美幸

おやつカルパスをもうひとつ。
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乙葉 くろの

「捕まえる努力をして貰えるように、責任を取りたいと思って貰えるように、耐えても手に入れたいって思わせるのが」
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乙葉 くろの

「わたしたちの、甲斐性の見せ所ってところかも。ね、いつかちゃん」
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日比野 一夏

畳む手を止めて、ためいき。
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乙葉 くろの

「恋って追いかけっこだから、うまく逃げないと」
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日比野 一夏

「かわいげってやつ?」
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日比野 一夏

「噛んだ心地、しないな。」
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乙葉 くろの

「ううん。」
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乙葉 くろの

「かいぶつのこい、だよ」
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乙葉 くろの

「追いかけっこするのに、追いかけた先がない」
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乙葉 くろの

「わたしは、それしか知らないから……」
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乙葉 くろの

「いつかちゃんには、恋のこと上手く説明できないね」
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日比野 一夏

「いらないよ」
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乙葉 くろの

「いらない?」
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日比野 一夏

「うん、いらない。」
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乙葉 くろの

「恋が?それともわたしの解説が?」
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日比野 一夏

「……どっちも、かな。」
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乙葉 くろの

不機嫌そうに腕を組む振り。
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乙葉 くろの

「やだな、」
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乙葉 くろの

「いつかちゃんには恋をして欲しい」
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乙葉 くろの

「で、好きなひとの話をするいつかちゃんを見たいの」
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乙葉 くろの

「みゆきちゃんも」
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日比野 一夏

「……ないものに手を伸ばすみたいなはなし。」
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日比野 一夏

腰を浮かせて、カルパスに手を伸ばす。
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乙葉 くろの

「ゆさちゃんも、見たかったな」
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乙葉 くろの

その動作を目で追う。
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日比野 一夏

 すこし、手を止めて。
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日比野 一夏

「でも、遊佐は言ったんでしょ。」
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日比野 一夏

「ずっと一緒にいるって。」
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乙葉 くろの

「でも、断っちゃった」
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乙葉 くろの

「ばかでしょ?」
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日比野 一夏

「……そうかもね。」 いくつかを指先でつまんで。座る。
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日比野 一夏

「でも、そういう奴だから。」
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日比野 一夏

「めぐり合わせたのかもね。」
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日比野 一夏

ひとつカルパスを投げる。
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乙葉 くろの

「わっ」
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日比野 一夏

「……仕方ない奴にも、友達はいるってこと。」
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乙葉 くろの

当然のように、取り落とす。
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日比野 一夏

くすくすと笑う。変わらないな。
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黒坂森 美幸

「あ、くろの。立ったついでにお茶淹れて」
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乙葉 くろの

「はあい」
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日比野 一夏

「あ、わたしも。」
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黒坂森 美幸

取り落とした姿へ声をかけて、柿ピーへ戻る。
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日比野 一夏

「こうやっておやつ囲むのもいつぶりだろうね。」
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乙葉 くろの

お湯を湯呑にそそいで、お茶のティーバッグを入れて数分。
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乙葉 くろの

とりだして持ち上げる。
ふたりぶん、自分の分は後回し。
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乙葉 くろの

ふたりの前にコトンと置いて。
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乙葉 くろの

笑う。
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乙葉 くろの

「ずっと、このままならいいのにね」
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乙葉 くろの

「……なんて、」
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乙葉 くろの

自分の分を取りに戻って、
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乙葉 くろの

拾い損ねたカルパスを回収した。
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乙葉 くろの

座る。
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GM

~ メインフェイズ第3シーン 終了 ~


 2-1 
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GM

~ メインフェイズシーン4 シーンプレイヤー:黒坂森美幸 ~
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黒坂森 美幸

HO:中学校の思い出 を調査。
遊佐とは同じ生物緑化委員だった。
【生物学】に興味を持ったのはそれから。
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黒坂森 美幸

2D6>=5 (判定:生物学) (2D6>=5) > 6[3,3] > 6 > 成功
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GM

【秘密】中学校の思い出
ショック:なし
拡散情報。
中学生の時、遊佐が酷く落ち込んでいた時があった。貴方はそんな遊佐を2人きりで慰め、一緒に買い食いをして帰った事がある。
あの時、安住遊佐は貴方にこう言った。
「お父さんが死んだんだ。お父さんは、失敗したから」
HO「家族の思い出」が公開される。
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GM

HO:家族の思い出
安住遊佐は中学生の頃に父親を亡くしていた。
その父親は、どんな人だったのだろうか。
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黒坂森 美幸

湯気の収まった茶の水面は、苔むした水槽のような色をしている。
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黒坂森 美幸

「まあ、しないとかする気もないとかじゃないけど」
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黒坂森 美幸

「恋愛とかって、ちゃんとやればやるほど、大体次は父親なわけで」
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黒坂森 美幸

「努力、責任、忍耐の塊のようなもんでしょ」
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黒坂森 美幸

「成り行きか、タイミングか、出来心か、ヤケかわかんないけど。よっぽど人生設計してないとね」
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日比野 一夏

「今の時代母親も、ね。」
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日比野 一夏

「大人になんてなりたくないもんだ。」
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乙葉 くろの

「うん。」
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乙葉 くろの

「時間なんて止まっちゃえばって──ときどき思う」
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乙葉 くろの

「渋」
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乙葉 くろの

渋くなったお茶に、舌を出した。
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日比野 一夏

「こんな黒装束なんか着てさ、堅苦しい席をこなして…」
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日比野 一夏

 お茶をひとくち。
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日比野 一夏

「……そう?」
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黒坂森 美幸

「おれはわりと時間の流れ、賛成」
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黒坂森 美幸

「色んなことを歳のせいにできる年齢まであと少し」
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乙葉 くろの

「ふふ」
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乙葉 くろの

「歳のせいにしたいの?」
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日比野 一夏

「昔っからそうじゃない。」
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日比野 一夏

「妙に達観してるっていうか」
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黒坂森 美幸

「あんまり若さを保つことに興味がないんだよ」
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日比野 一夏

「遊佐とは大違いだよ。」
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黒坂森 美幸

「昔から」
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日比野 一夏

「渋いな」
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乙葉 くろの

渋いお茶を口にして、眉を顰める。
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乙葉 くろの

「それがみゆきちゃんだもんね」
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黒坂森 美幸

「熱帯魚って1年くらいしか生きないんだよね」
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黒坂森 美幸

「長くて3年くらい」
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黒坂森 美幸

「遊佐と中学で同じ生物緑化委員だったんだけどさ」
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黒坂森 美幸

「世話した熱帯魚……あの、来客玄関に置いてあった大きい水槽の世話おれたちがしてたんだけどさ」
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黒坂森 美幸

「1年の春入った時に入れたやつ、大体冬越せなくて死んじゃうんだよね」
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日比野 一夏

「ああ、あったな……小さい家とか入ってるやつ。」
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乙葉 くろの

「きれいだったな」
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乙葉 くろの

懐かしむように目を細める。
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黒坂森 美幸

「あれ苔掃除大変なんだよ。歯ブラシで磨くの。いちいち」
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乙葉 くろの

湯呑に目を落とす。
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乙葉 くろの

「苔がね」
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黒坂森 美幸

「でさ。冬越したやつには、やっぱ愛着湧くんだ」
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黒坂森 美幸

「ベタって懐くんだけど、遊佐に懐いてたのがいて」
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黒坂森 美幸

「2年の夏だったかな、3年だったか……思い出せないんだけど」
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黒坂森 美幸

「暑い日の夕方、水替え当番で遊佐と行ったらそのベタが死んでて」
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黒坂森 美幸

「中庭に埋めに行ってさ」
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黒坂森 美幸

「花壇係が水撒き終えて、ホースで遊んでたんだけど。暑いんだか涼しいんだかわかんなくなってくるんだよな」
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乙葉 くろの

「なつかしいね。花壇係」
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黒坂森 美幸

「結構、おぼえてるな。マリーゴールド。サルビア。パンジー」
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日比野 一夏

「私はその頃ボールの空気入れしてた。体育館倉庫。」
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黒坂森 美幸

指折り花壇の花の色数を数える。
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黒坂森 美幸

「体育委員さまさま」
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乙葉 くろの

「暑そうだなあって、見てた」
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乙葉 くろの

水を撒いた後の、空気のしめった匂い。
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乙葉 くろの

部活動をする生徒の遠い声。
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日比野 一夏

「全然しらなかったな、あれ美幸んとこの仕事だったんだ。」
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黒坂森 美幸

「クラス違うとね」
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乙葉 くろの

「掃除しながら、窓から見てたんだよ」
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乙葉 くろの

「3人とも。」
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乙葉 くろの

時々ね、と微笑む。
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日比野 一夏

「うそ。」 ぱちくり。初耳情報。
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黒坂森 美幸

「苔とるのに夢中で気がつかなかった」
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乙葉 くろの

「声、掛けなかったもん」
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日比野 一夏

「む。 ……掛けてくれればよかったのに。」
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乙葉 くろの

「見てるのが好きなの」
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乙葉 くろの

「ガラスに手を付けて、今思えば」
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乙葉 くろの

手を、見えないガラスの表面をなぞるように胸まで上げる。
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乙葉 くろの

「指紋ついて、良くないね」
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乙葉 くろの

下ろした。
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日比野 一夏

「そっち?」
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乙葉 くろの

「そっち?」
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日比野 一夏

「……そっち。」
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乙葉 くろの

言葉あそびみたいに、同じ言葉を返す。
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黒坂森 美幸

「遊佐とベタ埋めてたときも見てた?」
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乙葉 くろの

「もちろん」
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乙葉 くろの

「そっと、取り出して」
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乙葉 くろの

「埋めてたのを、見てた」
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黒坂森 美幸

「何色だったか思い出せないんだよな」
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黒坂森 美幸

「ネオンテトラと違ってベタって色んな色がいるからさ」
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黒坂森 美幸

「思い出って、結局ところどころモノクロなんだよ」
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黒坂森 美幸

「ベタ埋めたあと、水槽の水汲みに校舎戻って」
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黒坂森 美幸

「その帰りに遊佐から、遊佐のお父さんの話聞いたことは覚えてるんだけど」
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黒坂森 美幸

「ベタの色は思い出せない」
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黒坂森 美幸

「遊佐、ちょうど親父さん亡くなった頃だったんだよな」
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黒坂森 美幸

「学校裏のはしまき買って、食べながら聞いた」
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日比野 一夏

「……そうか。そんな時期だっけ。」
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日比野 一夏

白黒の垂れ幕。ちょうど今日みたいな。
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日比野 一夏

「遊佐、なんて言ってた?」
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乙葉 くろの

死骸の色は、褪せていた。
元の色が、わからないほどに。
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乙葉 くろの

だから、みゆきちゃんの記憶がモノクロなら──
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乙葉 くろの

ずっとベタはモノクロのままだ。
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乙葉 くろの

だから、黙っている。
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乙葉 くろの

大人しく二人の会話を聞いていた。
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黒坂森 美幸

「『お父さんが死んだんだ。お父さんは、失敗したから』」
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黒坂森 美幸

「失敗って、何がどう失敗したら死ぬのか。中学性の頃はわかんなかったけど」
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黒坂森 美幸

「まあ、今ならなんとなくわかるかも」
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黒坂森 美幸

「努力、責任、忍耐を欠くと失敗って言われることも、まああるよね」
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黒坂森 美幸

「仕事でも、なんでもさ」
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乙葉 くろの

「うん、」
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乙葉 くろの

「わたしはどれもきらい」
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乙葉 くろの

「だから、大人じゃないかもね」
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日比野 一夏

「子供のままでいいよ、くろのは。」
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乙葉 くろの

「うん。」
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日比野 一夏

「死ぬよりはよっぽどまし。」
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乙葉 くろの

「死なないよ」
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乙葉 くろの

「ふたりはしっかり、大人だから……」
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乙葉 くろの

「恥ずかしいな」
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黒坂森 美幸

「いつの間にかなってただけだよ」
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日比野 一夏

「最初からの間違いじゃない」
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日比野 一夏

「なんて。」
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黒坂森 美幸

「どうかな」
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黒坂森 美幸

「達観したおれですらわかんなかったことを。遊佐ははっきり失敗って言ってたからさ」
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黒坂森 美幸

「遊佐の方が大人だったかもね」
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黒坂森 美幸

「そうじゃないなら、」
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黒坂森 美幸

「誰か他の大人が遊佐の親父さんの死を“失敗”って言ったんだろ」
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乙葉 くろの

「ものごとを失敗だって決めつけるのは」
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乙葉 くろの

「大人たちの悪い癖だね」
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乙葉 くろの

渋い茶を飲み干す。
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日比野 一夏

「あ~あ、大人って。」
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日比野 一夏

お茶をひとくち。
「……苦いもんだね。」
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乙葉 くろの

「でも、飲まない訳には」
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乙葉 くろの

「ならないわけには、行かない」
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乙葉 くろの

「やだな、時間って」
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日比野 一夏

「私もきらい。」
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日比野 一夏

「……ふたりが変わってなくて、よかった。」
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日比野 一夏

「あの頃は……つまんなかったからな。皆別れ別れで。」
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乙葉 くろの

「ずっと変わらないものは、取り残されてるだけ……だったりして」
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乙葉 くろの

いじわるして、笑む。
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日比野 一夏

「それって、わたしも?」
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乙葉 くろの

「さあ……」
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乙葉 くろの

「残されてるなあって思うなら、」
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乙葉 くろの

「そうかな?」
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黒坂森 美幸

「まあ、それに比べておれは変わったな」
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黒坂森 美幸

「ピーマン食べれるようになったし」
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乙葉 くろの

「みゆきちゃんは偉いね」
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乙葉 くろの

「いつかちゃんは?」
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日比野 一夏

「私は健康優良児でしたので。」
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乙葉 くろの

「……虫、平気になった?」
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乙葉 くろの

苦手だったのはいつかちゃんだったかな?
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日比野 一夏

「ぐう。」
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日比野 一夏

「……痛いところをつきおる。」
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日比野 一夏

「あれは好きな方が異端なの!!」
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黒坂森 美幸

「かわいいよ、コオロギ」
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黒坂森 美幸

「栄養もあるし」
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日比野 一夏

「食うな食うな。」
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乙葉 くろの

「コオロギ、おせんべいにしちゃえば」
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乙葉 くろの

「案外わからないよ」
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日比野 一夏

「やめてぇ~~!!」
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日比野 一夏

「ああ~背筋がぞわぞわしてきた。なんなのあの足!」
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乙葉 くろの

ぱん、と手を打ってプレスをする表現。
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乙葉 くろの

「墓穴」
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日比野 一夏

「ひい!」
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乙葉 くろの

「……なんて、告別式の後に言う言葉じゃないか」
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日比野 一夏

「……墓の話もね。」
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GM

~ メインフェイズ第4シーン 終了 ~


 2-2 
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GM

~ メインフェイズシーン5 シーンプレイヤー:日比野一夏 ~
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日比野 一夏

HO:家族の思い出 の調査。
美幸は一番大人だったかも、なんて言うけれど。
私が見ていた遊佐は……。見えていたもの、見えていないもの。
何かがあるとすれば 父親の死、なのだろうか。【人類学】
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日比野 一夏

2D6>=5 (判定:人類学) (2D6>=5) > 5[2,3] > 5 > 成功
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GM

【秘密】家族の思い出
ショック:なし
拡散情報。
貴方は、遊佐の家に遊びに行き、遊佐の父親の書斎に入った事がある。人の意識を電脳に転送する研究をしていたとかで、その書斎は大量のコンピューターで埋め尽くされていた。
あの時、安住遊佐は貴方にこう言った。
「自分が次に何を喋るのか、今は自分だけが知っている。だけどそれを保存できたら、そこに再現性があるって事になるよね?」
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日比野 一夏

ごほん。
「……それより、思い出話でしょ。」
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日比野 一夏

「もっと楽しい話しようよ、小学生の時の話とかさ。」
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日比野 一夏

「遊佐の家、やたらでっかかったじゃん。
 あそこ、なんか部屋とかいっぱいあってさ、迷路みたいで。」
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黒坂森 美幸

「物もいっぱいあって楽しかったね」
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黒坂森 美幸

「廊下とか踊り場まで本棚があってさ」
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日比野 一夏

「そうそう、何語かわかんない本とか。
 ぶあっつい辞書みたいなのとかね。」
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乙葉 くろの

「でも、どれも綺麗だった。
 大事にされてるんだね」
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日比野 一夏

「へえ、よく見てるね。」
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乙葉 くろの

「本棚ってすぐ埃が積もっちゃうから……」
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黒坂森 美幸

「使ってたんだと思う、多分」
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黒坂森 美幸

「埃ないってそういうことだよね」
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日比野 一夏

「遊佐も読んでたのかな…… 
 大学でも研究とかしてたんでしょ。」
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日比野 一夏

「さすがに脳の模型はなかったけど。」
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乙葉 くろの

「海馬……」
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乙葉 くろの

先の会話を思い出す。
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黒坂森 美幸

「よくわかんないお土産みたいなのとか、標本とかも飾ってなかったっけ」
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黒坂森 美幸

「あの家」
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乙葉 くろの

「夕方に見るとちょっとね」
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乙葉 くろの

「小さい頃は、怖かったような気がする」
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乙葉 くろの

「ね、いつかちゃん」
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日比野 一夏

「う……」
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日比野 一夏

「あ、あそこは虫がね、出そうでやなだけだから…!
 蜘蛛とか…ムカデとか……足がいっぱいあるじゃんあれ…」
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乙葉 くろの

「わたしも怖かったよ」
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日比野 一夏

「ほんとうかよ~……」
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乙葉 くろの

頬杖を突いて、にやにやと見る。
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黒坂森 美幸

「かくれんぼしたけどあんまり隠れるとこなかった」
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黒坂森 美幸

「あちこち物がぎゅうぎゅう詰めで」
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日比野 一夏

もう。と少しふくれて。
「まぁでも、ダンジョンだったよなぁ 変なものの巣窟。」
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乙葉 くろの

「面白かった。秘密基地みたいで」
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日比野 一夏

「あれ覚えてる? ……開かずの間。」
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乙葉 くろの

頷いた。
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日比野 一夏

「山積みの本に埋もれるみたいにして、隠してあるのな。」
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日比野 一夏

「それこそかくれんぼの時じゃないかな。
 遊佐がこっそり、教えてくれたんだよ あそこの秘密。」
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黒坂森 美幸

「あの時、死体があるかもってウワサしたけど」
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黒坂森 美幸

「何があったの」
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日比野 一夏

「……かいぶつ。」
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乙葉 くろの

「かいぶつ?」
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日比野 一夏

 がおー!と手をわきわきさせて。
「……って、言ったら信じる?」
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日比野 一夏

くすくすと笑って。
「その感じだと、ふたりとも知らないんだな。」
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黒坂森 美幸

「知らなかった」
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乙葉 くろの

「知らない」
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乙葉 くろの

「教えて?」
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日比野 一夏

「あれは、悪魔の科学者の施設だよ。」
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乙葉 くろの

「え?」
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日比野 一夏

「つまり遊佐の父親は……悪の科学者だったのだ!!」
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日比野 一夏

 冗談めかして笑いながら。
「……なんてね、ただの書斎だったよ。」
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日比野 一夏

「ただいろんな機械がいっぱいあった。」
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乙葉 くろの

「悪の科学者の話はそこから?」
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日比野 一夏

「そ。遊佐が言ってたの、秘密結社の研究者。」
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日比野 一夏

「まぁあれ、小学生の時だったからな……
 時々忍び込んでやったもんだよ、ごっこ遊び。」
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日比野 一夏

「というか、私はそういうモンだと思ってたんだけど……
 ……あいつはマジだったのかもね。」
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黒坂森 美幸

「なるほどね、どうりで」
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黒坂森 美幸

「一夏がヒーロー役?」
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乙葉 くろの

「似合うね」
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日比野 一夏

「はは、ヒーローだったのかな。」
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日比野 一夏

「どっちかっていうと、怪獣の方かもしんない。」
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日比野 一夏

暴れたからな、随分と。
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乙葉 くろの

「がおー」
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乙葉 くろの

鳴いてみた。
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乙葉 くろの

「そうかな?」
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日比野 一夏

「おお、ミニラがおる。」
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乙葉 くろの

「みにら……」
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乙葉 くろの

「ってなあに?」
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日比野 一夏

「…………私にそれ聞く?」
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日比野 一夏

「美幸みたいになんでも知らないよ。」
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乙葉 くろの

「みゆきちゃんの方が詳しい?」
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乙葉 くろの

「わたしや、いつかちゃんが聞いて」
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乙葉 くろの

「ゆさちゃんとみゆきちゃんが答える」
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黒坂森 美幸

「おれは特撮は詳しくないよ」
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乙葉 くろの

「ゆさちゃんがいないと、」
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乙葉 くろの

「みゆきちゃんがたいへんだね」
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日比野 一夏

「……遊佐がいたら教えてくれたかもね。」
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黒坂森 美幸

「遊佐は特撮わりと好きだったからね」
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日比野 一夏

「だから……悪の科学者に?」
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乙葉 くろの

「なりたかったのかな、ヒーローに」
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乙葉 くろの

「そっちなんだ」
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黒坂森 美幸

「怪人の方かもよ」
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日比野 一夏

「ミニラ、かわいかったよ。 ちっちゃいソフビ人形でさ。」
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乙葉 くろの

いつの間にか飲み物や食べ物に意識を持っていかれることなく、話に集中していたことに気付いて瞬いた。
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乙葉 くろの

「ちっちゃい怪獣?」
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乙葉 くろの

「持ってたね、ゆさちゃん」
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日比野 一夏

「ああでも、怪獣と怪人は違うんだっけ?」
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日比野 一夏

「遊佐に聞かないとわかんないな。」
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乙葉 くろの

「けものと、ひと……」
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乙葉 くろの

「わかんないね」
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黒坂森 美幸

「怪獣の方がそういう生き物っぽいけど」
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黒坂森 美幸

「怪人はそれこそ」
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黒坂森 美幸

「フランケンシュタインってイメージはある」
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黒坂森 美幸

怪物の方ね、と付け足して。
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乙葉 くろの

「そうだね」
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日比野 一夏

「あいつも作ってたのかな、怪物。」
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乙葉 くろの

怪物と、怪獣、怪人。怪しいものは存外沢山。
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日比野 一夏

「いや……どっちかっていうと人かな。」
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黒坂森 美幸

「水槽使って?」
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乙葉 くろの

「水の生き物なの?」
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日比野 一夏

「そう、でっかい水槽で。緑色のやついれて。」
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乙葉 くろの

「じゃあ、かわいそうなフランケンシュタインの怪物は生まれないね」
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乙葉 くろの

「出られないから……」
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日比野 一夏

「人間も元は水棲生物でしょ?
 ほら、なんか指に水かきみたいなのついてて…」
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日比野 一夏

「でもほら。 こうやって、生きてる。」
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日比野 一夏

ぐーぱー。
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乙葉 くろの

ぐーぱー。
avatar

乙葉 くろの

真似をする。
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日比野 一夏

「フランケンシュタインの怪物も、
 人間になれたなら不幸にならなかったかもね。」
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乙葉 くろの

「どうかな……」
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乙葉 くろの

「そう、かもね」
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黒坂森 美幸

「それを人間ですって言ってあげられるの」
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黒坂森 美幸

「人間だけなのが」
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黒坂森 美幸

「フランケンシュタインの怪物のつらいところだね」
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日比野 一夏

「怪物とも、友達になれたらよかったのに。」
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乙葉 くろの

「いつかちゃんらしいね」
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日比野 一夏

「私はあんまり得意じゃなかったからね。」
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日比野 一夏

「……友達、遊佐がいっつも連れてきてくれてたの。」
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日比野 一夏

「あいつ不思議なやつでさ。
 たぶん、みんなが好きになっちゃうんだろうな」
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日比野 一夏

「ふたりと仲良くなったのも…遊佐のおかげだし。」
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日比野 一夏

「まだちょっとね。
 また戻ってこないかなって……思ってる。」
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黒坂森 美幸

「棺桶開けて?」
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日比野 一夏

「がおー」 ってね。
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乙葉 くろの

「怪物だね」
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黒坂森 美幸

「あいつに持ってった水槽」
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黒坂森 美幸

「ちょうどあれくらいの大きさだったな」
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日比野 一夏

「…………棺桶?」
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黒坂森 美幸

「そう、棺桶くらい」
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乙葉 くろの

「ゆさちゃんが入るつもりだったのかな?」
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乙葉 くろの

「なんて」
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日比野 一夏

「…………どうだろう。」
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日比野 一夏

「でも、やりかねないな。」
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日比野 一夏

「遊佐、言ってたんだよ。」
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日比野 一夏

「人間はどこまでが人間なんだろうって。」
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日比野 一夏

「難しいことは……よくわかんないけど。」
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日比野 一夏

「自分が何をしゃべるのか、どう応えるのか。
 保存出来たら再現性が……なんとかって。」
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日比野 一夏

「……………まさか、ね。」
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日比野 一夏

「くろのの夢見心地がうつったかな。」
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乙葉 くろの

「かわいそう……」
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日比野 一夏

「あれ、また馬鹿にされてる?」 首をかしげ。
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黒坂森 美幸

「どのみち、そうか」
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黒坂森 美幸

「やっぱり遊佐は昔からそういうやつだったんだな」
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乙葉 くろの

「そうだよ」
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乙葉 くろの

「わたしたちの記憶が、間違っていなければ」
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日比野 一夏

「まぁ、そうだね。そういう奴ではあったよな。」
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乙葉 くろの

頷く。
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日比野 一夏

「……そこの、扉開けてさ。」
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日比野 一夏

「全部どっきりでした!」
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日比野 一夏

「な~んて。 なんないもんかねぇ……」
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乙葉 くろの

「……………。」
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乙葉 くろの

髪を、指で弄る。
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黒坂森 美幸

「開けてみたら?」
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黒坂森 美幸

「NOを見に行こう」
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乙葉 くろの

「うん」
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乙葉 くろの

「今度はみんなで、ね」
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日比野 一夏

「まじで言ってる?」
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日比野 一夏

扉をじっと見る。 ……ううん…
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日比野 一夏

「ふたりが先に開けてくれるなら……」
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日比野 一夏

「じゃ、だめ?」
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乙葉 くろの

「怖がりだね」
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乙葉 くろの

「いいよ」
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乙葉 くろの

美幸の方を見た。
どう?と唇の動きだけで問う。
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日比野 一夏

おそるおそる、みる。
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黒坂森 美幸

頷く。
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黒坂森 美幸

おしぼりで手を拭いた。
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日比野 一夏

「……それじゃ、私も賛成で。」
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乙葉 くろの

改めて頷いた。
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日比野 一夏

――視線が、一点を向いて。
 おそるおそる のぞき込むように 腰を上げる。
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GM

(暗転)
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GM

(黒坂森美幸と乙葉くろのの2名にだけ照明が当たる)
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黒坂森 美幸

「中学の頃、お世話になった先生あてに手紙を書く授業があった」
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黒坂森 美幸

「遊佐とふたりで先生が選んだ便箋と手紙を机に並べて、いくつかのグループで書いた」
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黒坂森 美幸

「手紙の正しい書き方」
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黒坂森 美幸

「子供の頃はそれが社会に出てから役に立つなんて知らないこともたくさんあるけど」
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黒坂森 美幸

「手紙もそういうもんだって先生は言ってた」
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黒坂森 美幸

「でも時代はあっという間に変わった」
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黒坂森 美幸

「みんなメールで済ますだろもう」
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黒坂森 美幸

「送信ボタンの位置も知らない教師が手紙の書き方を教えてるんだぜ学校って」
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黒坂森 美幸

「まあ、でもそれでいいんだよな」
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黒坂森 美幸

「便箋は季節の花が書いてあった」
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黒坂森 美幸

「桜、あじさい、コスモス、山茶花」
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黒坂森 美幸

「誰も山茶花なんて知らないから、ご丁寧にイラストの横に“さざんか”ってかいてあるんだよ」
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黒坂森 美幸

「知らないってこういうことなんだよな」
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黒坂森 美幸

「手紙のページ数にNo.1って数字を振っていくうちに」
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黒坂森 美幸

「No.4まできたとき、遊佐は」
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黒坂森 美幸

「5枚目にいったら、どうだろうって言った」
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黒坂森 美幸

「また桜に戻るのかって言ったら」
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黒坂森 美幸

「どれでもいいと言った」
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黒坂森 美幸

「NoとNo.って似てるから」
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黒坂森 美幸

「No.5 の季節って。あるんだかないんだかわからないからいいって」
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黒坂森 美幸

「五番目の季節の話をした」
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黒坂森 美幸

「くろの、お前」
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黒坂森 美幸

「五番目の季節ってあると思う?」
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乙葉 くろの

「ごばんめ」
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乙葉 くろの

ちいさく笑う。
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乙葉 くろの

「春、夏、秋、そして冬」
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乙葉 くろの

かつかつ、とライトの下を数歩歩く。
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乙葉 くろの

「季節は巡って、永遠になって」
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乙葉 くろの

ポケットに手を遣る。
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乙葉 くろの

「そしていつか、思い出になる」
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乙葉 くろの

「──五番めの季節は、」
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乙葉 くろの

「思い出」
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乙葉 くろの

そして、ポケットから。
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乙葉 くろの

便箋を取り出した。
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黒坂森 美幸

座ったまま、ポケットに手を入れてじっと前を見る。
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乙葉 くろの

「そしてこれが、」
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乙葉 くろの

「その5番目の季節の続きに当たる手紙」
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乙葉 くろの

「……ゆさちゃんに貰ったの、」
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乙葉 くろの

「わかってた?」
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黒坂森 美幸

「おれももらったからね」
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黒坂森 美幸

「あいつは手紙が好きだった」
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乙葉 くろの

「……わたしは、これが最初で最後」
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黒坂森 美幸

ポケットから出した手紙をテーブルの上に置く。
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黒坂森 美幸

「一夏だけ」
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黒坂森 美幸

「名前に季節がある」
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黒坂森 美幸

「仲間外れにされてなきゃいいけど」
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乙葉 くろの

「名前に夏があるから……」
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乙葉 くろの

数歩、戻って。
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乙葉 くろの

手紙を隣に置く。
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乙葉 くろの

「もうこれ以上季節は要らないって?」
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黒坂森 美幸

「要ろうが要らなかろうが、もうすぐ夏が来るよ」
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乙葉 くろの

「いつかちゃんの季節ね」
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黒坂森 美幸

「人が死んでも、自分が死んでも」
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黒坂森 美幸

「夏は来る」
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乙葉 くろの

「ベタが死んでも、色が褪せてモノクロになっても」
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乙葉 くろの

「夏は来る」
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乙葉 くろの

「みゆきちゃん、手紙の内容」
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乙葉 くろの

「まずはわたしから読み上げるから」
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乙葉 くろの

「みゆきちゃんも、続いてくれる?」
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乙葉 くろの

ねだるような、甘い声。
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乙葉 くろの

「人の手紙を見るのって……よくないなって」
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乙葉 くろの

「でも、教えて貰えるなら」
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乙葉 くろの

「怒られないかもって」
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乙葉 くろの

どう?と首を傾げる。
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乙葉 くろの

客席に視線を一瞬、移して戻した。
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黒坂森 美幸

「過去も未来も全部、誰かの作った物語だよ」
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黒坂森 美幸

「手紙もそう」
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黒坂森 美幸

「御伽噺は誰のプライバシーも侵害していない」
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黒坂森 美幸

手紙から視線を背けずに。
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黒坂森 美幸

「読み聞かせてやろう」
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黒坂森 美幸

「フランケンシュタインの怪物みたいに」
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乙葉 くろの

「光栄です」
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乙葉 くろの

大仰にお辞儀をする。
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乙葉 くろの

「ではお先に読み上げても?」
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黒坂森 美幸

頷いてそのまま。
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乙葉 くろの

手紙を、手に取り。
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乙葉 くろの

客席を、真っすぐ見つめて。
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乙葉 くろの

声を張る。
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乙葉 くろの

「『私の親しい友人である貴方へ。』」
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乙葉 くろの

「『こんにちは。急にお手紙を出してしまって、驚かせてしまっていたらごめんなさい。
実は3日後、私の告別式が開かれる予定です。』」
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乙葉 くろの

「『貴方に、是非参加して貰いたいと考えています。
招待状に連絡先を記載してありますが、出欠の連絡は無くても大丈夫です。』」
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乙葉 くろの

「『今日この時を生きている、安住遊佐より。』」
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乙葉 くろの

お辞儀をして、後ろへ引く。
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乙葉 くろの

「これが、わたしへの手紙」
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乙葉 くろの

バトンタッチするように、舞台の中央を譲った。
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黒坂森 美幸

照明が戻る。
対称的に座ったままの男にライトがあたる。
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黒坂森 美幸

「『私の協力者である貴方へ。』」
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黒坂森 美幸

「『こんにちは。急に連絡が取れなくなって、驚かせてしまっていたらごめんなさい。
実は3日後、私の告別式が開かれる予定です。』」
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黒坂森 美幸

間。
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黒坂森 美幸

「『でも、貴方の前から居なくなる訳ではありません。私達の研究は、成功しました。
告別式の会場に行けば、きっと私に会うことができます。』」
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黒坂森 美幸

「『貴方の参加を心待ちにしています。』」
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黒坂森 美幸

「『今日この時を生きている、安住遊佐より。』」
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乙葉 くろの

彼に、笑んで。
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乙葉 くろの

手紙をテーブルに伏せた。
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GM

(暗転)
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GM

~ メインフェイズ第5シーン 終了 ~
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GM

(小休止)


 2-3 
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GM

~ 第3回 ~
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GM

~ メインフェイズシーン6 シーンプレイヤー:乙葉くろの ~
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GM

(照明が灯る)
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GM

(座布団、机、食べかけの食事、元通りの控室)
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GM

(扉は開いていない)
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乙葉 くろの

元通りの位置に戻っている。

扉は開かず、遠い雨の音が響く部屋。
3人の中に、僅かな沈黙。

思い出話の後、現在に目を向ける。
その中でも──
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乙葉 くろの

一夏に目を向けた。
わたしは現在の彼女をどう思っている?

確かに、わたしは彼女を《愛》している。
それは、他の2人もそうなのだけど。
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乙葉 くろの

2D6>=5 (判定:愛) (2D6>=5) > 8[2,6] > 8 > 成功
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乙葉 くろの

FT 感情表(6) > 狂信(プラス)/殺意(マイナス)
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日比野 一夏

FT 感情表(6) > 狂信(プラス)/殺意(マイナス)
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乙葉 くろの

──彼女に抱く感情は。
紛れもなく、狂信だ。
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乙葉 くろの

それは、学生時代も。
今だって変わらない。
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乙葉 くろの

「ずっと思い出の話をしてきたけれど……」
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乙葉 くろの

切り出す。ふたりを見る。
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日比野 一夏

目線が通う、ひとつひとつ。
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乙葉 くろの

「今の話もしたいね。最近はどう?」
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黒坂森 美幸

「おれは変わんないよ。ずっと店で熱帯魚の世話をしてる」
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乙葉 くろの

変わらない人が好き。
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乙葉 くろの

「いいね。熱帯魚屋さん?」
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日比野 一夏

「生き物、今でも好きなんだな。」
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黒坂森 美幸

「好きは好きだけど。なんていうかな。弁当でおにぎり食べるみたいなもんだよ」
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黒坂森 美幸

「習慣、ってやつ」
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黒坂森 美幸

「なんとなくそっちの方がいい、でずっとそうしてる」
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日比野 一夏

「そこが水、みたいな。」
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黒坂森 美幸

「そういうこと」
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日比野 一夏

「らしくていいな。
 これでまた虫とか飼いだしてたら…殴ってたかも。」
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乙葉 くろの

「虫、よっぽど嫌いなんだね」
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乙葉 くろの

「変わらないね」
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日比野 一夏

「だってさ、いつの間にか捕まえてたりしてたじゃん。
 そしたら足がこうわしゃわしゃ…って……」
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乙葉 くろの

変わらない人が好き。
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日比野 一夏

「遊佐もくろのもからかってくるし。」
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乙葉 くろの

「揶揄われる人にも、原因があるんだよ」
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乙葉 くろの

「戸惑ういつかちゃん可愛いもんね」
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乙葉 くろの

「ね、みゆきちゃん」
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乙葉 くろの

ふたりの間を視線がうろうろ移動する。
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日比野 一夏

「ああ、またそうやって!」
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黒坂森 美幸

「愛嬌がある」
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乙葉 くろの

「女は愛嬌だから、いつかちゃん」
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日比野 一夏

むっと口を真一文字にしてにらむ。
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乙葉 くろの

にこにこ。
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日比野 一夏

「こういう話の後だとからかわれてるようにしか思えないんだけど。」
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乙葉 くろの

「からかってないよお、ねえ?」
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黒坂森 美幸

「どうかな、はは」
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黒坂森 美幸

「からかいとかわいがりの一線を引くのは、結構難しい」
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黒坂森 美幸

「特におれは男だしね」
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黒坂森 美幸

「まあ、謙遜しないで」
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黒坂森 美幸

「こうして友達やれてるぐらいには、君たちはふたりとも今でもいいやつなのは間違いないからさ」
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乙葉 くろの

「おじょうずね」
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日比野 一夏

「口ばっかりうまくなって‥このっ」
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日比野 一夏

 カルパスを投げる。
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日比野 一夏

 手頃なサイズ感。便利な投擲武器である。
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黒坂森 美幸

キャッチアンドリリース。
自分のつまみスペースに置く。
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乙葉 くろの

それを見守っている。
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日比野 一夏

「それより、くろの。」
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日比野 一夏

「あんたの方はどうな訳よ。」
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乙葉 くろの

「わたし?」
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日比野 一夏

「そう、ここいらで一番心配な娘。」
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乙葉 くろの

頬杖をついた。
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日比野 一夏

 包み紙のはじを指で挟んで、狙いを定める。
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乙葉 くろの

「きちんと、してるよ。
 知り合いの教会を手伝ってるの。
 怒られるようなことは」
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乙葉 くろの

制止するように軽く両手を上げる。
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乙葉 くろの

「してない」
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日比野 一夏

「してない?」 
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乙葉 くろの

「してない?」
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日比野 一夏

同じく頬杖をついて返す。
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乙葉 くろの

「──でも、相変わらず」
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乙葉 くろの

「恋人とは長続きしないくらい」
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乙葉 くろの

「でもそれは……」
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乙葉 くろの

「仕方がないことだし、いつかちゃんも怒らない……でしょ?」
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乙葉 くろの

カルパスには手を伸ばしもしない。
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乙葉 くろの

「ゆさちゃんもそれには怒ったことがないし」
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日比野 一夏

「……それは、いつの話?」
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乙葉 くろの

「いつも。」
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乙葉 くろの

「ゆさちゃんのほう?」
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日比野 一夏

「どっちも。」
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乙葉 くろの

「ゆさちゃんとは……学生の時にそういう話をしたの」
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乙葉 くろの

くるくると指を回す。
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乙葉 くろの

「誰かと上手くいかないのは、ずっと」
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乙葉 くろの

「だって、わたし。」
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乙葉 くろの

「誰よりもゆさちゃんと、みゆきちゃんと、いつかちゃんが大事なんだもの」
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乙葉 くろの

悪びれもせず呟いて、にこにことふたりを眺める。
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黒坂森 美幸

「光栄ですよ」
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日比野 一夏

「光栄かな。」
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日比野 一夏

「私は正直、ちょっと寂しいけどな。」
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乙葉 くろの

「寂しい?」
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日比野 一夏

「だって、そうやって見守ってきたんでしょ。」
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日比野 一夏

「壊さないように、窓におでこくっつけて。」
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乙葉 くろの

「………」
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乙葉 くろの

ぺたりと、硝子に手を付けるような仕草。
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乙葉 くろの

「指紋が、」
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乙葉 くろの

「手あかがつくのがいやなの」
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乙葉 くろの

手を下ろす。
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日比野 一夏

その手を目で追う。
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黒坂森 美幸

「おれが熱帯魚を世話するようなものだし」
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黒坂森 美幸

「そういうもの、でしょ」
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乙葉 くろの

「そんな、」
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乙葉 くろの

きれいなものではない。
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乙葉 くろの

「かんじかな……」
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乙葉 くろの

薄く笑む。
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日比野 一夏

「……だから、こんな場所用意したのかな。」
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日比野 一夏

「遊佐のやつ。」
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乙葉 くろの

「だから?」
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日比野 一夏

目線をあげる。空席。だれもいない。
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日比野 一夏

なにかを答えようとして、つぐむ。
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日比野 一夏

「……ううん。
 ここが、でっかい水槽なのかもなっておもっただけ。」
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日比野 一夏

「何にもなくて、だだっぴろくて。
 思い出の箱の中にしまわれてるみたい。」
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乙葉 くろの

「……さかな、」
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乙葉 くろの

「さかなは恋が破れても、泡にならずに」
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乙葉 くろの

「死骸になっちゃうんだね」
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乙葉 くろの

「いやだな……」
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日比野 一夏

「死ぬのはこわい?」
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乙葉 くろの

「ううん」
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乙葉 くろの

「みにくいからだが、残るのが嫌なの」
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乙葉 くろの

夏の水槽。
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乙葉 くろの

死んだ魚の死骸。
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乙葉 くろの

色褪せたそれが、ほんとうはずっと。
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乙葉 くろの

──頭から離れない。
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黒坂森 美幸

「頑張れば3年は生きる」
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黒坂森 美幸

「大抵の関係よりずっと長いよ」
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黒坂森 美幸

「魚にとっては一生のその先の時間だ」
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乙葉 くろの

「じゃあわたしたちは魚じゃないね」
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乙葉 くろの

「さかなの時間の向こうを過ごす、」
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乙葉 くろの

「水槽の住人たち」
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日比野 一夏

「途方もないな。」
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乙葉 くろの

「魚の場所を奪ってね……」
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日比野 一夏

「一生の先か……」
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乙葉 くろの

「長生きしてね」
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日比野 一夏

 空席を見つめて。
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乙葉 くろの

「ゆさちゃんのぶんも」
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日比野 一夏

「……そうだね」
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日比野 一夏

「弔ってやんなきゃ。」
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日比野 一夏

「人には手もある、足もある。それが醜い身体だって。」
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日比野 一夏

手のひらを軽く握る。
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日比野 一夏

「……なんとなく、決心がついたよ。」
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日比野 一夏

「遊佐のぶん。」
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日比野 一夏

「生きないとね。」
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日比野 一夏

視線を投げかける
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乙葉 くろの

見つめ返した。
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日比野 一夏

 目の前にいるひとの目を。
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日比野 一夏

 同じものを映して返す瞳。
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乙葉 くろの

狂信のゆらぐひとみ。
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乙葉 くろの

でも、おなじにならなくたっていい。
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日比野 一夏

 信じるべくして、ゆらがぬ目線。
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乙葉 くろの

そんなものは、欲しくないのよ。
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乙葉 くろの

いつだって、届かないものだけが美しい。
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日比野 一夏

 どんな形をしていたとしても。
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日比野 一夏

 それが、綺麗じゃなくても、変わらない。
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日比野 一夏

 そうして、死と対話する。
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日比野 一夏

いまの一瞬を切り取るようにして。
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日比野 一夏

かつてそこにあった 届かないものに手を伸ばすように。
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乙葉 くろの

彼女に微笑み返した。
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日比野 一夏

「隙あり」
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日比野 一夏

ぺちり。 くろののほっぺたにカルパス。
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乙葉 くろの

「わたしのまね?」
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乙葉 くろの

わらって、受け取った。
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GM

~ メインフェイズ第6シーン 終了 ~


 2-? 
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GM

~ メインフェイズシーン7 シーンプレイヤー:  ~
【指示】
>黒坂森 「そういえば小学生の時の話はしていないね」、と切り出す
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黒坂森 美幸

「今、小学校の時の池の鯉のこと思い出してたんだけどさ」
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黒坂森 美幸

「小学校の時の話してないね」
【指示】
>しかし小学校の思い出は、靄がかかったようによく思い出せない
>その中で唯一、卒業式の事だけが脳裏に浮かぶ
→卒業式の回想シーンへ
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黒坂森 美幸

「まあ。相当昔過ぎて何にも覚えてないんだけど」
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日比野 一夏

「鯉なんていた?」 くろのに視線を投げて。
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乙葉 くろの

「いたよ。水草のせいで見えなかったけど」
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黒坂森 美幸

「池の掃除の仕方なんて誰も知らないまま飼ってたんだろうな」
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乙葉 くろの

「あれ、」
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黒坂森 美幸

「中庭に、ほら」
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乙葉 くろの

「池なんて」
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乙葉 くろの

「……あった?」
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日比野 一夏

「ん、あれ?中学じゃないそれ。」
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黒坂森 美幸

「集められたじゃん、卒業式のとき」
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乙葉 くろの

「うん……」
【指示】
>日比野「その日の事だけは、よく思い出せる」
>3人が目を瞑る
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黒坂森 美幸

「練習だか、撮影だかで」
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日比野 一夏

「ああ!」
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乙葉 くろの

「それは覚えてる」
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乙葉 くろの

他のことを思い出そうとするも、うまくいかない。
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黒坂森 美幸

「あとでみんなで写真撮るから、みたいな」
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乙葉 くろの

「うん……」
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日比野 一夏

「全員、並べられるんだよな。」
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日比野 一夏

「池のことなんてすっかり忘れてたけど……」
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日比野 一夏

「あの瞬間だけは覚えてる。これで最後だからって。」
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日比野 一夏

 すすり泣く声だとか。やたらぬるい風だとか。
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乙葉 くろの

思い出をなぞるように目を伏せる。
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黒坂森 美幸

瞬きを開くのがおっくうなような瞑目。
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日比野 一夏

そうあるように、なぞるように目を閉じる。
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GM

(暗転)
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GM

(舞台上は青みがかった影で覆われる)
avatar

GM

(雑然とした子供の声が流れる)
avatar

GM

(そしてまた別の、はっきりとした子供の声)
【指示】
>中庭に集められた子どもたちの集団から少し離れたところに集まる四人
>日比野 第一声 卒業式に対する感慨
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日比野 一夏

「あ~!終わったぁ……」 退屈から解放されたような呑気な声。
【指示】
>ちげさん 日比野に対する安住の反応
(以下PL敬称略)
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安住 遊佐

「疲れた?」
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日比野 一夏

「そりゃあね。立ったり座ったり…何度もやるもんじゃないし」
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日比野 一夏

「私苦手なんだよね、じっとしてるの。あれずっと足閉じとかなきゃでしょ。」
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安住 遊佐

「きちんとしているように見えるのにね」
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日比野 一夏

「いいこちゃんするのは得意なの。」
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日比野 一夏

「じっとしてれば、いいこだって思われる。」
【指示】
>ハセ 次の安住の反応
avatar

安住 遊佐

「そりゃあ、つかれちゃうよ」
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日比野 一夏

「そ、いいこちゃんってつかれるの。」いたずらな笑い声。
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日比野 一夏

「それは遊佐もでしょ?」
【指示】
>ハセ 引き続き安住の反応
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乙葉 くろの

遠くから見ている。
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安住 遊佐

「そうかな……そうかも……」
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黒坂森 美幸

池の鯉を眺めている。
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日比野 一夏

「そうだよ、そう!」
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乙葉 くろの

池の傍に寄った。
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日比野 一夏

「腕、伸ばせばわかるよ。」
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日比野 一夏

「つかれた~!って、悲鳴上げるよ、たぶん。」
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黒坂森 美幸

「鯉には手伸ばすなよ」
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乙葉 くろの

「…………」
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黒坂森 美幸

「指食いちぎられるから」
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乙葉 くろの

首を傾げた。
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乙葉 くろの

「うん」
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乙葉 くろの

ふにゃりと柔らかい声が返事をする。
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日比野 一夏

「あんたたちも…ほ~ら!」 腕を伸ばしてみせている。
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安住 遊佐

「ん~~……」
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安住 遊佐

「血が流れてる」
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乙葉 くろの

「わかんない……」
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乙葉 くろの

「くろのがばかだからかも……」
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黒坂森 美幸

「おれ疲れてないし」
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乙葉 くろの

「えへへ」
【指示】
>すのだ 次の安住の反応
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日比野 一夏

「男はいいよな、楽な姿勢だもん。」
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安住 遊佐

太陽に手をかざしている。
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安住 遊佐

「……生きてる。」
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乙葉 くろの

「死んでたらこわいよ」
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乙葉 くろの

くすくすと笑う。
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安住 遊佐

「生きてたらこわくない?」
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乙葉 くろの

「うん!」
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黒坂森 美幸

なおさらまだ鯉を見ている。
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黒坂森 美幸

「どっちもあんま怖くないな」
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乙葉 くろの

「みゆきちゃん、どうしたの?」
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黒坂森 美幸

「鯉のが怖いよ」
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乙葉 くろの

「どうして?」
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黒坂森 美幸

「指噛みちぎって来るし」
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日比野 一夏

「……痛いのは、やだな。」手を引っ込める。
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黒坂森 美幸

「うん」
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乙葉 くろの

「手を伸ばさなかったら大丈夫だよ」
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乙葉 くろの

「って、みゆきちゃん言った」
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乙葉 くろの

「だから、鯉はもうやめよう?」
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安住 遊佐

「……ふふ」
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日比野 一夏

「そうそう、こっち来なよ。」
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黒坂森 美幸

「でも世話するならやらなきゃ」
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安住 遊佐

「卒業までもう少しなのに、みんないつも通りだなぁ」
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乙葉 くろの

「気を付けてね。怪我をしたらやだよ」
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乙葉 くろの

足音。
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黒坂森 美幸

「卒業してもべつに」
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黒坂森 美幸

「なんか多分話すし、多分会うじゃん」
【指示】
>ちげ 次の安住の反応
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安住 遊佐

「そうだね、それに」
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安住 遊佐

「思い出があるよ」
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安住 遊佐

「もし、遠い未来に離れ離れになっても」
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安住 遊佐

「この記憶は残る」
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安住 遊佐

「きっと、君たちは会いに来てくれる」
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日比野 一夏

「なんかそれじゃあ別れ別れになるみたいじゃん。」
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日比野 一夏

「いいじゃん、これからもこのまんまでいれば。」
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安住 遊佐

「ずっと一緒にはいられないからね」
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安住 遊佐

「だけどいつかは、一緒にいられる」
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黒坂森 美幸

「いつかっていつ?」
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日比野 一夏

「いつかはわたし!」なんちゃって。
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安住 遊佐

「あははは」
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安住 遊佐

「どっちだろうね」
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安住 遊佐

「それか、そうだね」
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安住 遊佐

「今日のこの日を、思い出してくれている日」
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乙葉 くろの

「わたし、忘れないよ」
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安住 遊佐

「ほんとう?」
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乙葉 くろの

「きっと、思い出す」
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乙葉 くろの

「やくそく!」
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乙葉 くろの

「ほらほら、ふたりも!」
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日比野 一夏

「はは、それじゃ忘れちゃうみたい。」
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日比野 一夏

「忘れらんないよ、約束なんてしなくても。」
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黒坂森 美幸

「自信あるわけじゃないけど」
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黒坂森 美幸

「多分おぼえてるよ」
【指示】
>すのだ 次の安住の反応
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乙葉 くろの

「ねっ!」
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安住 遊佐

「ほんとうにそうかな」
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安住 遊佐

「案外記憶っていうのは儚いものだよ」
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乙葉 くろの

「ゆさちゃんのお話、難しい」
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黒坂森 美幸

「だから多分だよ」
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黒坂森 美幸

「多分、きっと、おそらく、あとなんだっけ」
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安住 遊佐

「願わくば?」
avatar

黒坂森 美幸

「それもある」
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黒坂森 美幸

「いっぱいあるな」
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黒坂森 美幸

「できたらいいのに、って言葉」
avatar

安住 遊佐

「それじゃあ、”願わくば”」
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安住 遊佐

「君たちの思い出が確かなものでありますように」
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安住 遊佐

「まぁ、でも」
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安住 遊佐

「あれだけ語ってくれたんだもの、きっと確かに違いないよね」
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安住 遊佐

「そうだ、改めて君たちにはお礼を言わなきゃいけないね」
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安住 遊佐

「一夏、美幸、くろの」
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安住 遊佐

「私の告別式に来てくれて、ありがとう」
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GM

(照明が灯る)
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GM

(舞台上にいる現在の3人が目を開く)
【指示】
3人は、遊佐の思い出が「現在の自分たち」に対して語りかけていた、という事を、思い出す
それを理解したら、【時間】で恐怖判定
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乙葉 くろの

「……あれ、」
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乙葉 くろの

違和感。
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黒坂森 美幸

2D6>=9 (判定:整理) (2D6>=9) > 9[3,6] > 9 > 成功
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日比野 一夏

2D6-2>=8 (判定:化学) (2D6-2>=8) > 4[2,2]-2 > 2 > 失敗
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乙葉 くろの

2D6>=9 (判定:霊魂) (2D6>=9) > 9[3,6] > 9 > 成功
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黒坂森 美幸

「遊佐」
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黒坂森 美幸

「なんか言ってたな」
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乙葉 くろの

「うん……」
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日比野 一夏

「やめてよ」
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日比野 一夏

「……だって、そんなわけない。」
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日比野 一夏

雨の音がうるさく響いている。
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日比野 一夏

「あいつはだって、もう、いないんだし。」
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GM

(雨音に子供の声が重なる)
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日比野 一夏

耳をふさぐ。
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乙葉 くろの

「『人がそこに生きているっていうのは、つまり再現性があるって事なんだよ』……。」
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乙葉 くろの

聞いた言葉を思い出した。
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日比野 一夏

「だから、やめてって。」
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安住 遊佐

「顔色が悪いね、一夏。大丈夫?」
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日比野 一夏

首を振る。聞こえない。聞いていない。
avatar

GM

(先程も聞こえた子供の声)
【指示】
>すのだ 「小学生の一夏」の声による、安住への反応
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日比野 一夏

「うるさい!うるさい! あんたなんて知らない!」
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日比野 一夏

 いつかの景色に重なる。
avatar

日比野 一夏

ざわめきが大きくなる。
avatar

日比野 一夏

耳をふさぐ子供の影。
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GM

 
avatar

日比野 一夏

 そして、またたき。
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日比野 一夏

「……あれ。」
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日比野 一夏

 立ち眩み?
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日比野 一夏

 もう一度みあげる。
avatar

安住 遊佐

「ああ、ごめんね。今の一夏は大丈夫そうだ」
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GM

(葬儀場に重なる、思い出の中の声)
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日比野 一夏

 いまの、いつの……?
 どちらも、白黒の景色。
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日比野 一夏

「……うん、だいじょうぶ。」不思議そうな顔。首をかしげる
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安住 遊佐

「少し驚かせちゃったかな。だけど本当に嬉しかったんだ、みんなが集まってくれて」
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日比野 一夏

「だって、集まれって……せんせいが。」
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日比野 一夏

「これから写真、撮るんでしょ。みんなで集まって。」
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日比野 一夏

小学生の私は、めんどくさいなぁと、思っている。
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日比野 一夏

「なんでそんなに嬉しそうなわけ?」
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日比野 一夏

これからも続くであろう退屈に、ひとつ節目がついただけ。
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日比野 一夏

今 のわたしにとっては。
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安住 遊佐

「みんなが変わらなかったから、かな?」
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安住 遊佐

「美幸はずっと魚の世話をしてる」
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安住 遊佐

「くろのはずっと私達の事を好きでいてくれて」
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安住 遊佐

「一夏は相変わらず虫が苦手」
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日比野 一夏

「そんなにころころ変わる訳ないじゃん。」
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日比野 一夏

「いっこ学年が上がるだけ。」
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日比野 一夏

「なんにも、変わる訳ない。」
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安住 遊佐

「あはは、今はそうかもね」
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安住 遊佐

「だけど10年以上も経つと、なかなかそうもいられないものじゃない」
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日比野 一夏

「私が、あんたの事忘れるとでも?」
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日比野 一夏

「心配性なんだ、遊佐って。」
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安住 遊佐

「まさか、そうは思わないさ」
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日比野 一夏

ははは、意外。
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日比野 一夏

「じゃあ、どうして。」
【指示】
>すのだ 次の安住の言葉
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安住 遊佐

「確かめたくってさ」
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安住 遊佐

「一夏は覚えていてくれるし、思い出してくれる」
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安住 遊佐

「次に私がなんて喋るかだって」
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安住 遊佐

「今の一夏にはわかるはず」
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安住 遊佐

「そうでしょう?」
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日比野 一夏

「どうして。」
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日比野 一夏

「どうして?」
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日比野 一夏

「なんで、私なの?」
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日比野 一夏

「わかんないよ、なんにも。」
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安住 遊佐

「いいや、きみならわかる」
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安住 遊佐

「だって、きみは」
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安住 遊佐

「私の思い出だから。」
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GM

(子供の声が一瞬掻き消える)
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日比野 一夏

座り込んだまま、どこかを見上げている。
avatar

日比野 一夏

雨が降っている。ずっと。
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黒坂森 美幸

「再現性」
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黒坂森 美幸

「『人がそこに生きているっていうのは、つまり再現性があるって事なんだよ』」
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日比野 一夏

リフレイン。手のひらには、紙が握りこまれている。
avatar

日比野 一夏

 遊佐の声と重なる。
avatar

乙葉 くろの

「…………」
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黒坂森 美幸

「保存」
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黒坂森 美幸

「『自分が次に何を喋るのか、今は自分だけが知っている。だけどそれを保存できたら、そこに再現性があるって事になるよね?』」
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日比野 一夏

重なる。
その言葉は、惑うことなく唱えることができる。
avatar

黒坂森 美幸

間に冷凍庫が氷を冷やす低い音だけが雨音に混じって響く。
avatar

乙葉 くろの

その沈黙を壊すことはしない。
avatar

黒坂森 美幸

「秘密」
avatar

黒坂森 美幸

「『今は秘密だけど、きっと近い内に教えるよ。そんな運命のような気がするんだ』」
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黒坂森 美幸

「教えに来たっぽいな」
avatar

日比野 一夏

 まるで、先ほどまでそこにいたみたいに、繰り返すことができる。
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日比野 一夏

ぐしゃり。 紙きれ一枚 握られる音。
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乙葉 くろの

その音に視線を向ける。
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黒坂森 美幸

その音に視線を向ける。
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日比野 一夏

「そんなの、いらない。」
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日比野 一夏

「……なんで、こんなひどいこと。」
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日比野 一夏

蹲るように身体を丸める。
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日比野 一夏

 雨の音が大きくなる。
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日比野 一夏

 震えた声で、それは少し上ずって。
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日比野 一夏

『――私の素敵な思い出である貴方へ。』
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日比野 一夏

 遊佐の声と、重なる。
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日比野 一夏

『こんにちは。急にお手紙を出してしまって、驚かせてしまっていたらごめんなさい。』
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日比野 一夏

『実は3日後、私の告別式が開かれる予定です。』
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日比野 一夏

『あの頃一緒に楽しい時間を過ごした貴方に、是非参加して貰いたいと考えています。』
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日比野 一夏

『招待状に連絡先を記載してありますが、出欠の連絡は無くても大丈夫です。』
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日比野 一夏

 ひとつづき、呼吸をする。
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日比野 一夏

『今、貴方はお忙しい日々を送っているかもしれません。』
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日比野 一夏

『でもできれば、私は貴方に来て欲しいと考えています。』
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日比野 一夏

『貴方の思い出話を楽しみにしています。』
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日比野 一夏

 じっと、まっすぐににらみつける。
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日比野 一夏

『――今日この時を生きている、安住遊佐より。』
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日比野 一夏

そのまま、ゆっくりと、沈み込んでゆく。
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日比野 一夏

「……わたしは、こんな思いをしにきたんじゃない。」
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日比野 一夏

「ぜんぶ、嘘っぱちだって。」
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日比野 一夏

「確かめにきただけ。」
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日比野 一夏

ふらつくようにして ゆっくりと、立ち上がる。
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日比野 一夏

「……私、帰るね。」
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日比野 一夏

「思い出話は終わり。」
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日比野 一夏

「これで、満足?」
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黒坂森 美幸

「一夏」
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黒坂森 美幸

「扉は開かないよ」
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黒坂森 美幸

「ここは水槽なんだから」
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乙葉 くろの

「水槽の住人はきっと」
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乙葉 くろの

「掬い上げられるまで出られないよ」
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乙葉 くろの

雨の音が遠い。
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安住 遊佐

「ねえ、一夏」
【指示】
>ハセ 次の安住のセリフ
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安住 遊佐

「思い出話をしてよ」
【指示】
>ちげ 安住の次に続くセリフ
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日比野 一夏

「……わたしは、嫌。」
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安住 遊佐

「君たちの思い出が確かなものでありますようにって」
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安住 遊佐

「願ったのに」
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安住 遊佐

「── 一夏?」
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日比野 一夏

「あんたの悪趣味ないたずらに付き合ってられるほど暇じゃない。」
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日比野 一夏

「そうやってわたしを振り回すのがあんたのやりたかったことなの?」
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安住 遊佐

「ううん、私は」
【指示】
>すのだ 次の安住のセリフ
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安住 遊佐

「思い出してほしかっただけ」
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安住 遊佐

「そして、思い出してくれたから私の望みは叶いつつある」
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安住 遊佐

「ほかに何かをしてもらわなくても大丈夫だし、みんなをどうこうしようなんてつもりもない」
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安住 遊佐

「ただ受け入れて欲しいんだ」
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安住 遊佐

「これから私という友人を頭の中に入れて、ずっと一緒に過ごす事を」
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日比野 一夏

目の前――隔たる壁を見たまま、笑う。
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日比野 一夏

「『――あなたのことが好きだから』?」
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安住 遊佐

「或いは」
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安住 遊佐

「そう在りたいからさ」
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安住 遊佐

「すぐには受け止め方がわからないのは理解できるよ」
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安住 遊佐

「だけどそう急ぐ事はないじゃない。もう少しゆっくりしようよ」
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安住 遊佐

「お茶でも飲んで、もう少しお話して、それから」
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安住 遊佐

「答えを聞かせておくれよ」
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日比野 一夏

「それが―― 今 なの。」
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日比野 一夏

「あんたの 今 なの。」
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日比野 一夏

「あんたは思い出になったはずなのに」
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日比野 一夏

「まだ、何かを残そうとするの。」
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安住 遊佐

「残っているし、続くのさ」
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安住 遊佐

「私の今は、君たちの思い出の中にある」
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GM

HO:研究室の記憶
頭の中にノイズが走る。
自分たちはどこか、研究室へと連れて行かれた事があった。
そこでは一体何があったのだったか。
HO:恐怖の記憶
頭の中にノイズが走る。
自分は知っている筈だ。
今の自分達の身体には異常がある事を。
その異常に繋がる物を持たされている事を。
HO:死の記憶
頭の中にノイズが走る。
自分は知っている筈だ。
安住遊佐はいつ、どのようにして死んだのかを。
【指示】
>くろの 視界が眩み、頭を押さえる
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GM

~ 特殊処理が発生 ~
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乙葉 くろの

くら、と眩暈がする。
avatar

乙葉 くろの

頭を押さえた。
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日比野 一夏

はっと、引き戻されるように。
ふりかえる。
[ 乙葉くろの ] 正気度 : 5 → 4
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乙葉 くろの

「…………」
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乙葉 くろの

緩く頭を振った。
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乙葉 くろの

「…………、疲れているのかも」
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黒坂森 美幸

「大丈夫?」
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黒坂森 美幸

ふたりとも、のニュアンスを残した声色。
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乙葉 くろの

「うん」
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日比野 一夏

「水、持ってくるよ。」
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日比野 一夏

 なんでもなかった、という風に首をふって。
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日比野 一夏

 蛇口から、水音。
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GM

(暗転)
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GM

~ メインフェイズ第7シーン 終了 ~


 3-1 
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GM

~ メインフェイズシーン8 シーンプレイヤー:黒坂森美幸 ~
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黒坂森 美幸

HO:研究室の記憶 を調査します。
【暗黒】へ思考を沈ませて。
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黒坂森 美幸

2D6>=5 (判定:暗黒) (2D6>=5) > 7[2,5] > 7 > 成功
[ 黒坂森美幸 ] 正気度 : 6 → 5
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黒坂森 美幸

2D6>=6 (判定:生物学) (2D6>=6) > 5[1,4] > 5 > 失敗
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黒坂森 美幸

正気度を1減らし振り直します。
[ 黒坂森美幸 ] 正気度 : 5 → 4
avatar

黒坂森 美幸

2D6>=6 (判定:生物学) (2D6>=6) > 6[1,5] > 6 > 成功
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黒坂森 美幸

「おれは熱帯魚の幽霊を見たことがある」
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黒坂森 美幸

「こう、何年も魚の世話をしていると流石に1匹や2匹くらいは見るもんだ」
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黒坂森 美幸

「魚の幽霊ってどこに出るか知ってるか?」
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黒坂森 美幸

「水槽だと思うだろ」
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黒坂森 美幸

「違うんだな」
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黒坂森 美幸

「魚は別にガラスやらアクリルやらをそこまで認識しているわけじゃない」
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黒坂森 美幸

「だから、大体は空中に浮かんでる」
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黒坂森 美幸

立ち上がる衣擦れの音。
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黒坂森 美幸

流れ続けていた蛇口の水を止める音。
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黒坂森 美幸

暗闇の中それだけが響く。
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黒坂森 美幸

冷蔵庫を開ける音。
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黒坂森 美幸

「例外もある」
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黒坂森 美幸

冷蔵庫の中を覗き込む男の姿が、寒々とした光の逆光に照らされてぼんやりと輪郭が浮かぶ。
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黒坂森 美幸

「暗闇を見過ぎた魚」
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黒坂森 美幸

「魚は鏡のことはわかるんだ。
外が暗くて水槽の明かりがあると、水槽は鏡みたいになってさ」
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黒坂森 美幸

「だから、その魚の幽霊は水槽の中に出る」
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黒坂森 美幸

「自分が今いるのが水槽の中だって知ってるから」
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黒坂森 美幸

冷えたビールを取り出す。
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黒坂森 美幸

冷蔵庫の扉は閉じられ、再び暗闇。
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黒坂森 美幸

缶を開ける音だけが響いた。
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GM

~メインフェイズ第8シーン 終了~


 3-2 
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GM

~ メインフェイズシーン9 シーンプレイヤー:安住遊佐 ~
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安住 遊佐

黒坂森美幸に対して感情判定。
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安住 遊佐

それは【悦び】をかたろうと試みる。
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安住 遊佐

2D6>=9 (判定:数学) (2D6>=9) > 8[3,5] > 8 > 失敗
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黒坂森 美幸

お守りを使用。
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GM

再判定。
[ 黒坂森美幸 ] お守り : 2 → 1
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安住 遊佐

2D6>=9 (判定:数学) (2D6>=9) > 4[1,3] > 4 > 失敗
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黒坂森 美幸

お守りを使用。
[ 黒坂森美幸 ] お守り : 1 → 0
avatar

GM

2D6>=9 (判定:数学) (2D6>=9) > 8[2,6] > 8 > 失敗
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安住 遊佐

暗闇に声が反響する。
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安住 遊佐

「水槽の中と外」
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安住 遊佐

「美幸は、自分がいるのはどっちだと思う?」
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黒坂森 美幸

「どっちならお前は嬉しい?」
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安住 遊佐

「私がいるのと同じ場所」
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黒坂森 美幸

「同じ場所」
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黒坂森 美幸

繰り返す。缶ビールを傾けるかすかな音。
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黒坂森 美幸

「対価が欲しいな」
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黒坂森 美幸

「そこでおれになにかいいことがあるなら」
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黒坂森 美幸

「別に、行ってやってもよかった」
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安住 遊佐

「いいこと、か」
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安住 遊佐

「美幸にとってのいいことって、どういうこと?」
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黒坂森 美幸

「お前、ネオンテトラって知ってる?」
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安住 遊佐

「君と同じくらいには」
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黒坂森 美幸

「おれはあの魚が好きなんだけどさ」
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黒坂森 美幸

「なんでかっていうと赤と青がきれいだからっていう理由で」
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黒坂森 美幸

「他にも性格が穏やかだとか、育てやすいとか色々あるけど」
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黒坂森 美幸

「とにかく赤と青がきれいなんだ」
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黒坂森 美幸

「でも、あの魚。モノクロだと赤と青が消えるんだよ」
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黒坂森 美幸

「見えなくなるんだ」
avatar

黒坂森 美幸

「そうじゃないんなら」
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黒坂森 美幸

「おれはなんだっていいよ」
avatar

黒坂森 美幸

「おれは」
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黒坂森 美幸

「あの時お前と埋めたベタの色が思い出せないんだよ」
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黒坂森 美幸

「あの時のベタの色が思い出せるんなら」
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黒坂森 美幸

「それがおれにとって」
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黒坂森 美幸

「たったひとつ、いいこと」
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安住 遊佐

「……それが君のぞみなら」
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GM

avatar

安住 遊佐

「私は君の思い出に色をつけられる」
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黒坂森 美幸

「遊佐」
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黒坂森 美幸

「もういい」
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黒坂森 美幸

「もういいんだ」
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安住 遊佐

「君が今まで見た中で」
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安住 遊佐

「最もきれいな色を思い出させる事だって」
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安住 遊佐

「私にはできるんだよ、美幸」
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GM

(暗闇の上部に、映像が投げかけられる)
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GM

(赤と青の魚が泳ぐ)
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黒坂森 美幸

「それから先をお前は言えない」
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黒坂森 美幸

「赤なのか青なのか、緑なのか、黄色なのか」
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黒坂森 美幸

「お前はきっと言えない」
avatar

黒坂森 美幸

「こうしている間にも、お前はネオンテトラの色しか思い出せていない」
avatar

黒坂森 美幸

「おれとお前が埋めたのは」
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黒坂森 美幸

「埋めたのは」
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黒坂森 美幸

間。
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黒坂森 美幸

赤と青の魚が泳ぐ映像を見ている。
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黒坂森 美幸

「だから、もういいんだ」
avatar

GM

(魚の映像が消失する)
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黒坂森 美幸

かすかな灯りに照らされて、缶ビールが静かに掲げられる。
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黒坂森 美幸

「献杯」
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安住 遊佐

「……乾杯」
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安住 遊佐

「……私は、それでも」
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安住 遊佐

「いつかは思い出せると」
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安住 遊佐

「それができるようになったと、信じているよ」
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安住 遊佐

「君の望む思い出を」
【指示】
>ハセ 次の安住のセリフ
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黒坂森 美幸

アルミ缶がふたつ触れ合って鳴る音だけが響いた。
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GM

~ メインフェイズ第9シーン 終了 ~


 3-3 
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GM

~ メインフェイズシーン10 シーンプレイヤー:乙葉くろの ~
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乙葉 くろの

HO:恐怖の記憶。一体、何があったのか──
その恐怖は、自分の記憶、いいえ──《霊魂》に刻まれている?
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乙葉 くろの

2D6>=5 (判定:霊魂) (2D6>=5) > 9[3,6] > 9 > 成功
[ 乙葉くろの ] 正気度 : 4 → 3
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乙葉 くろの

2D6 >=7 (判定:官能) (2D6) > 9[3,6] > 9
[ 日比野一夏 ] 正気度 : 5 → 4
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日比野 一夏

2D6>=7 (判定:化学) (2D6>=7) > 4[1,3] > 4 > 失敗
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乙葉 くろの

お守りをいつかちゃんに!
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日比野 一夏

2D6>=7 (判定:化学) (2D6>=7) > 10[5,5] > 10 > 成功
[ 乙葉くろの ] お守り : 1 → 0
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乙葉 くろの

ライトが当たる。
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乙葉 くろの

「再現性って、ゆさちゃんは言った」
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乙葉 くろの

先程閉められた冷蔵庫へと歩いて。
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乙葉 くろの

ずるずると座り込む。
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乙葉 くろの

「記憶、現実、夢」
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乙葉 くろの

空に手を伸ばす。
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乙葉 くろの

「覚めるから夢だと分かる」
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乙葉 くろの

「過去のことだから、記憶だと分かる」
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乙葉 くろの

「じゃあ、もし夢が覚めなかったらそれは……」
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乙葉 くろの

「現実を飲み込んでしまうのかな?」
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乙葉 くろの

ふたりに、目を遣った。
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乙葉 くろの

ライトが、舞台すべてを照らす。
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乙葉 くろの

「ふたりは、どう思う?」
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乙葉 くろの

とんとんと自分の頭を指先で叩いた。
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安住 遊佐

「私には聞いてくれないの?」
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乙葉 くろの

「ゆさちゃんも答えたい?」
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日比野 一夏

眩たくように目を細めて、首を振る。
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日比野 一夏

「やめてって。」
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乙葉 くろの

「でもダメ。今はふたりに聞いてるから、あとでね……」
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日比野 一夏

「……言ってるでしょ。」
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乙葉 くろの

囁くように虚空に返事をする。
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黒坂森 美幸

「空論だな」
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黒坂森 美幸

「現にもう言葉の定義からして分けてるだろ」
avatar

黒坂森 美幸

「本当に境目がないなら、疑問にすら思わない」
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日比野 一夏

重く身体を引きずるように目線を向ける。
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乙葉 くろの

「………だったら、」
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乙葉 くろの

「みゆきちゃんは、どちらだと思う?」
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乙葉 くろの

「今の、この状態。」
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黒坂森 美幸

「おれは」
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黒坂森 美幸

「答えを出さない」
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乙葉 くろの

「みゆきちゃん」
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乙葉 くろの

「こっちを見て?」
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乙葉 くろの

「HO:恐怖の記憶」を渡します。
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黒坂森 美幸

受け取ります。
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GM

【秘密】:恐怖の記憶
ショック:全員
他の二人をよくよく見ると、側頭部に線がある……いや、線ではなく、それはカバーだ。そしてその下には受信装置のような物が、頭部の中心に向かって埋め込まれている。
それは貴方を含めた全員の頭部に存在し、見ると脳裏に単語が過る。
[pass:WIRED]
【電子機器】で恐怖判定を行う。
その後、【プライズ】の秘密が何時でも確認可能になる。この確認は手番を消費しない。
[ 黒坂森美幸 ] 正気度 : 4 → 3
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黒坂森 美幸

2D6>=6 (判定:整理) (2D6>=6) > 9[3,6] > 9 > 成功
【指示】
>黒坂森 自分の頭に手をやる
>乙葉 装置がある事を説明
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黒坂森 美幸

「夢も現実も名前でしかない」
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黒坂森 美幸

「不安なら一旦どっちかにしておけばいい」
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乙葉 くろの

「…………。」
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乙葉 くろの

「──WIRED。」
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乙葉 くろの

「みゆきちゃんは、見える?」
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乙葉 くろの

とんとんと、先程の動作を繰り返す。
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乙葉 くろの

「わたしたちの、頭。何かついてる」
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黒坂森 美幸

「ついてるな」
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乙葉 くろの

「これが、夢なのか現実なのかって」
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乙葉 くろの

「考えてたの」
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日比野 一夏

腕をついて、髪をかきあげる。
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乙葉 くろの

一夏に微笑んだ。
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日比野 一夏

「答え、知ってるんじゃないの。」
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日比野 一夏

ちからなく、微笑んでかえす。
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乙葉 くろの

「蝶にはこれが現実か夢かなんて、わからない」
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乙葉 くろの

「お魚になったり、蝶になったり忙しいね」
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日比野 一夏

「それを曖昧にしたのは、誰?」
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乙葉 くろの

「誰だろう」
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日比野 一夏

 ここは、水槽? それとも、
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日比野 一夏

「怖くないの、あんたは。」
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日比野 一夏

「これが夢でも現実でも おかしいってことくらいわかるでしょ。」
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乙葉 くろの

「怖いって感じる時は……」
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乙葉 くろの

「命の危機を感じている時なんだって、この前聞いたんだ」
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乙葉 くろの

「死ぬのが怖い人は、怖いかもね」
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日比野 一夏

……うつむく。
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乙葉 くろの

口の端を上げるように笑う。
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日比野 一夏

 その口元だけをなぞっている。
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黒坂森 美幸

「誰なら納得する?」
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黒坂森 美幸

「名前をつけるのは人間の特技だ」
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黒坂森 美幸

「ここがどこで、誰が、何をしたのか」
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黒坂森 美幸

「いくらでもつければいい」
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日比野 一夏

「理屈になってないな。」
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日比野 一夏

「だって、名前を付けたいわけじゃない。」
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乙葉 くろの

「誰かのせいにしたい?」
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日比野 一夏

「安心したいわけじゃない。」
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日比野 一夏

ぐしゃりと。握る。
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日比野 一夏

「誰のせいにもしたくない。」
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日比野 一夏

「願わくば。」
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日比野 一夏

 ことばを、なぞる。歪だ。
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乙葉 くろの

一夏に、笑んだ。
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GM

~ メインフェイズ第10シーン 終了 ~


 3-4 
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GM

~ メインフェイズシーン11 シーンプレイヤー:安住遊佐 ~
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GM

日比野一夏に対し、感情判定。
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安住 遊佐

それは、【哀しみ】を共有しようと試みる。
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安住 遊佐

2D6>=9 (判定:考古学) (2D6>=9) > 4[2,2] > 4 > 失敗
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日比野 一夏

一度だけ 目配せする、あなたに。
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日比野 一夏

お守り使います
[ 日比野一夏 ] お守り : 2 → 1
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GM

2D6>=9 (判定:考古学) (2D6>=9) > 11[5,6] > 11 > 成功
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安住 遊佐

FT 感情表(5) > 憧憬(プラス)/劣等感(マイナス)
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日比野 一夏

FT 感情表(4) > 忠誠(プラス)/侮蔑(マイナス)
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安住 遊佐

覚えのある声が反響する。
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安住 遊佐

「君が安心を求めるなら」
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安住 遊佐

「私はそれを用意できるのに」
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日比野 一夏

「私には、いらない。」
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日比野 一夏

「いらないって、言ったでしょ。」
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安住 遊佐

「君は不安そうにしているのに?」
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日比野 一夏

「当たり前じゃない」
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日比野 一夏

「わからない? どうしてこんな顔になってるか。」
【指示】
>ちげ 次の安住の返答
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安住 遊佐

「要らない人はそんな顔をしないな」
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安住 遊佐

「そして、分かるのならば聞いていない」
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安住 遊佐

「いじわるだったかな?」
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日比野 一夏

「そんなに嫌味な子だったっけ、あんたって。」
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日比野 一夏

「……それとも、ほんとにわからない?」
【指示】
>ハセ 次の安住の返答
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安住 遊佐

「わかってほしい?」
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日比野 一夏

 手の中でなぞる。
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日比野 一夏

「……どうかな。」
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日比野 一夏

「昔の遊佐なら知ってるかも しれないね。」
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安住 遊佐

「そうか」
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安住 遊佐

「ごめんね」
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安住 遊佐

「君の望む遊佐じゃなくて」
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日比野 一夏

笑う。首を振る。おかしいことを言う。
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日比野 一夏

「私が望む遊佐なら、もっと楽しそうにしなよ。」
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日比野 一夏

「私の中のあんたはずっと笑ってた。」
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安住 遊佐

「君がほんとうにそう望むなら、私はそうする事もできるよ」
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安住 遊佐

「だけど、ねえ一夏」
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安住 遊佐

「君が求めるのは、自分の思い通りになる安住遊佐じゃあないだろう?」
avatar

日比野 一夏

「それも、求められたから?」
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日比野 一夏

「……巧妙に演じるように言われた?」
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安住 遊佐

「君がおぼえているからさ」
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日比野 一夏

「わたしの中の、遊佐だから?」
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日比野 一夏

 乾いた声で笑う
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安住 遊佐

「一夏の中の遊佐でもあるけど、一夏の中にしかない遊佐じゃない」
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安住 遊佐

「だから、何もかもが思い通りにはいかない」
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安住 遊佐

「再現性には、それも必要なことなんだ」
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日比野 一夏

「再現性」
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日比野 一夏

「またそれ。」
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日比野 一夏

「……じゃあ、あんたの中にいた遊佐は どこにいっちゃったんだろう。」
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安住 遊佐

「ここにあるさ」
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日比野 一夏

「触れることもできないのに」
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日比野 一夏

 冷たい塊を撫ぜる。
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安住 遊佐

「触れる事は、生きている事の要件じゃない」
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日比野 一夏

「……でも、勘違いはできるよ。」
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安住 遊佐

「勘違いしたい?」
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日比野 一夏

「あんたは?」
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安住 遊佐

「私はね」
【指示】
>すのだ 次の安住の返答
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日比野 一夏

「勘違いさせたかった」
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日比野 一夏

遊佐の答えを遮って。
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日比野 一夏

私は私の望む答えを吐き出した。
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日比野 一夏

「やさしいこ」
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日比野 一夏

「あんたは、やさしいこだ。」
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日比野 一夏

「誰も悲しませたりしない。」
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日比野 一夏

「誰も傷つけたりしない。」
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日比野 一夏

「ずっと無理して笑ってる」
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日比野 一夏

「……ね、そうでしょ 遊佐。」
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安住 遊佐

遊佐の想いは記録されている
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安住 遊佐

それが再現性。
【指示】
>すのだ 次の安住のセリフ
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安住 遊佐

「それは嘘だよ、一夏。」
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安住 遊佐

「だって あなたが覚えてる。」
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安住 遊佐

「そうだ、悪いことをしよう。」
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安住 遊佐

「ふたりには秘密でさ。」
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安住 遊佐

「あの時みたいに。」
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安住 遊佐

「ねえ、一夏。」
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日比野 一夏

薄く笑みがこぼれる。遊佐が、笑っている。
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日比野 一夏

「それも、いいな。」
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日比野 一夏

「あいつらびっくりさせて。」
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日比野 一夏

「またあの頃みたいに笑いあって。」
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安住 遊佐

「そうすればずっとずっと、一緒にいられる。」
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安住 遊佐

「素敵な思い出は、いつからだって作れる」
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安住 遊佐

「そうだよね?」
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安住 遊佐

それは【憧憬】の中に浸るように。
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日比野 一夏

「……ああ。」
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日比野 一夏

「これからもずっと、ずっと……」
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日比野 一夏

「……でも、ごっこ遊びは、やめにしよう。」
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日比野 一夏

「終わらせたのは、お前自身だよ 遊佐。」
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日比野 一夏

やさしく笑いかける。それは、私のほしい遊佐じゃない。
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日比野 一夏

片方に忠誠を、それならもう片方にある、心は【侮蔑】だ。
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安住 遊佐

「終わらなくたっていいのに」
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日比野 一夏

「違うよ、遊佐……続けなくちゃいけないんだ。」
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日比野 一夏

「私たちは、これからを。」
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安住 遊佐

「……”これから”を続けるのに必要なものこそが」
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安住 遊佐

「思い出なのに」
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日比野 一夏

「……これが、あなたの思い出?」
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日比野 一夏

 冷たい欠片がぬるく。
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安住 遊佐

「……私に、必要な思い出さ」
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安住 遊佐

「そして、それが君に必要なものでもあると」
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安住 遊佐

「……思っていたんだ」
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日比野 一夏

くすくす。頬杖をつく。誰かの真似事。
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日比野 一夏

「……ごめんね、遊佐。」
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日比野 一夏

 そうして、机に手を置いて。
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日比野 一夏

「私ひとりじゃ決められないや。」
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安住 遊佐

「じゃあ、何人なら決められる?」
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日比野 一夏

「多数決にしよう」 はしゃぐような、子供の声。
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日比野 一夏

「いっせーので、せ!」
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日比野 一夏

頭の中で、声が揺れている。
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日比野 一夏

「そうしよう、みんな大切な友達だもん。」
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日比野 一夏

「半分に分かれることは、もうないから。」
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安住 遊佐

「君がそう言うのなら」
【指示】
>ちげ 次の安住のセリフ
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安住 遊佐

「この、憧憬のままに」
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安住 遊佐

「君の言葉に、従おう」
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GM

(暗転)
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GM

~ メインフェイズ第11シーン 終了 ~
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GM

~ 第3回 終了 ~


 3-5 
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GM

~ 第4回 ~
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GM

~ メインフェイズシーン12 シーンプレイヤー 日比野一夏 ~
avatar

日比野 一夏

雨が降っている。
どのくらい時間が経っただろう、それとも一瞬の間だったのか。
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日比野 一夏

――明転。
 その瞬間、舞台は開かれる。
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日比野 一夏

狭い箱のなかに三人。いくつかのセット。
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日比野 一夏

そして、机の上に 『異物』――
 さっきまでそこになかったはずの物が置かれている。
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日比野 一夏

それは、モニターのついたちいさな子機。
『パスワードを入力してください』 点滅する画面。
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日比野 一夏

……鍵を開けるおまじないは、きっと。

「ねえ。」
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日比野 一夏

「ふたりは、どう思う?」
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日比野 一夏

「遊佐は……今も、生きてるとおもう?」
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黒坂森 美幸

「さっき言っただろ」
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黒坂森 美幸

「おれは答えを出さない」
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日比野 一夏

W、I、
 ……キーを押す。
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日比野 一夏

「それは、答えが見つからないから?」
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日比野 一夏

「それとも、答えを出したくないのかな。」
avatar

黒坂森 美幸

「そのどっちでもない」
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乙葉 くろの

「いつかちゃんは?」
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日比野 一夏

「……どうだろう。」
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日比野 一夏

「よく、思い出せないんだ。」
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日比野 一夏

 ――子機を差し出す。
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日比野 一夏

 遊佐が残したものならば。
 彼らもこの答えを知っているはずだ。
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黒坂森 美幸

くろのを見る。
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乙葉 くろの

「…………?」
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乙葉 くろの

視線に気付いて、見つめ返す。
avatar

黒坂森 美幸

一夏を見る。
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日比野 一夏

見つめかえす。それだけ。
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黒坂森 美幸

「WIRED」
avatar

黒坂森 美幸

「どっちの意味だろうね」
avatar

黒坂森 美幸

子機へ指を伸ばして続きを押す。
avatar

黒坂森 美幸

確定。
avatar

GM

(小さな電子音)
avatar

GM

【プライズ】:正体不明の電子機器
アンテナのようなものに小型のタッチパネル式ディスプレイがついた、拳大の電子機器。スイッチを押せば電源が付くが、パスワードを要求される。
このHOの【秘密】は調査できない。
【秘密】正体不明の電子機器
ショック:なし
これは、人の脳というハードウェアに外部から干渉するための装置だ。受信機が植え付けられているキャラクターに対し、「思い出」の【復旧】或いは「記憶」の【消去】が可能になる。
儀式シート「記憶修復/消去」が開示される。
avatar

GM

儀式判定:記憶修復/消去

段階1:思い出を復旧する
指定特技:その思い出が調査された時に使用していた特技
参加条件:プライズを所持している
ペナルティ:なし

段階2:記憶を消去する
指定特技:埋葬
参加条件:プライズを所持し、メインフェイズに調査された全ての”思い出”が復旧されている
ペナルティ:安住遊佐と感情を結んでいる場合、達成値-2
【指示】
>黒坂森 「つまりこれがあれば……」 電子機器の機能の説明
avatar

黒坂森 美幸

「つまりこれがあれば、この頭についてるこれを作動させることができるってことか」
avatar

黒坂森 美幸

小さな電子機器に指先で触れ。
avatar

黒坂森 美幸

「作動させた場合は、「思い出」の【復旧】或いは「記憶」の【消去】ができる」
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黒坂森 美幸

「思い出と記憶で表記が揺れているのはなんなんだろうね」
avatar

安住 遊佐

「その2つは、同じものではないからさ」
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黒坂森 美幸

「なるほど」
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安住 遊佐

「思い出は感傷、記憶はただのデータだ」
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黒坂森 美幸

「つまらんことを言わせたな」
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安住 遊佐

「だけど、大事なことだ」
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黒坂森 美幸

「お前は真面目なんだよ。皮肉が通用しないのか」
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日比野 一夏

「皮肉に見えないからじゃない」
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乙葉 くろの

「でも、元になるデータがないと、」
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乙葉 くろの

「感傷も生まれないよね」
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乙葉 くろの

「同じものではないにしても、繋がっている」
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黒坂森 美幸

「ただのデータを思い出にするのが感情で、その時に生まれるのが感傷」
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黒坂森 美幸

「ってことを言いたいんだろうな」
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乙葉 くろの

「ゆさちゃんの言葉はむずかしいね」
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日比野 一夏

はあと、ため息をつく。
「ほんとに。 わかりやすい解説ですこと。」
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安住 遊佐

「ほめてもらえて嬉しいなあ」
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日比野 一夏

「作った人の顔が見てみたいものだね」
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安住 遊佐

「お父さんの顔でも思い出してみる?」
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日比野 一夏

子機を指ではじく。
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日比野 一夏

「愉快だね。」
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乙葉 くろの

子機をただ──見た。
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日比野 一夏

同じく、一点を見つめる。
avatar

日比野 一夏

弾く感触は軽い。
こんなおもちゃひとつで、記憶も思い出も思いのまま?
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日比野 一夏

どこからが自分で、どこからが紛い物なのか。
この記憶に、薄靄をかけたのは、誰の仕業だろう。
avatar

日比野 一夏

――遊佐は死んだんだ。 たしかな感触だけがそこにある。

記憶を覆い隠すものは【化学】か、それとも。
弾いた爪先に、無機質な言葉がただ並んでいる。

最期の記憶。『死の記憶』を調査します。
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日比野 一夏

2D6>=5 (判定:化学) (2D6>=5) > 6[2,4] > 6 > 成功
[ 日比野一夏 ] 正気度 : 4 → 3
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日比野 一夏

2D6>=7 (判定:効率) (2D6>=7) > 11[5,6] > 11 > 成功
[ 乙葉くろの ] 正気度 : 3 → 2
avatar

乙葉 くろの

2D6>=5 (判定:霊魂) (2D6>=5) > 3[1,2] > 3 > 失敗
[ 日比野一夏 ] お守り : 1 → 0
avatar

乙葉 くろの

2D6>=5 (判定:霊魂) (2D6>=5) > 12[6,6] > 12 > スペシャル(判定成功。【生命力】1点か【正気度】1点回復)
[ 乙葉くろの ] 正気度 : 2 → 3
avatar

GM

情報が受け渡され、全体公開。
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GM

【秘密】死の記憶
ショック:全員
安住遊佐の死因は自殺だ。1週間前に、拳銃で自らの頭部を撃ち抜いた。
だが、告別式への招待状と共に届いた手紙は、3日前に書かれていた。
あれは時間差で届いた訳ではないし、誰かが代わりに書いて送った訳でもない。
あの手紙は、それぞれが自分の手で書いたのだ。
遊佐は、あなた達の身体を動かす事ができる。
【霊魂】で恐怖判定を行う。
その後、エネミーデータ「安住 遊佐」を公開する。
[ 黒坂森美幸 ] 正気度 : 3 → 2
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黒坂森 美幸

2D6>=7 (判定:生物学) (2D6>=7) > 6[2,4] > 6 > 失敗
avatar

黒坂森 美幸

avatar

安住 遊佐

ぱちん――弾けたように銃声が響く。
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日比野 一夏

大降りの雨。赤い血がコンクリートを染め上げていく。
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日比野 一夏

それは、いともたやすく 失われる。
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日比野 一夏

立ち尽くしている己の影は、記憶の中の自分か。
それとも遊佐の見せる幻影か。
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日比野 一夏

「遊佐は、死んだ。」
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日比野 一夏

『私の素敵な思い出である貴方へ。』
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日比野 一夏

大きなノイズが走る。
投影されるのは、自分の影。
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日比野 一夏

「はは…… ほんとうに愉快だ。」
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日比野 一夏

面白くって仕方ない そういう風にして笑う。
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GM

(舞台に投影された、日比野一夏の影が動き出す)
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安住 遊佐

「肉体を捨てただけさ」
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安住 遊佐

「ずっと一緒にいるために、ね」
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日比野 一夏

「それじゃあ、この 感情 は、なに?」
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日比野 一夏

「……どうしてこんなに、胸が痛いの。」
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安住 遊佐

「【感傷】だよ」
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日比野 一夏

 かぶりを振るのは現実の自分。
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日比野 一夏

「――感傷?」
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安住 遊佐

「思い出さ」
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日比野 一夏

「ちがう」
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日比野 一夏

「それは、違うよ、遊佐。」
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日比野 一夏

「思い出はもっと、たのしくて、やさしくて、とっておきたくなる大切なもの」
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日比野 一夏

「こんなもの、望んでなかった。」
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日比野 一夏

 蛍光灯に照らされた箱の中で、ふたりを見る。
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日比野 一夏

 なぜか、ぼやけて良く見えない。
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日比野 一夏

「どうして?」 問いかける、ふたりに。
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日比野 一夏

「どうして、あんた達は、そうしていられるの。」
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黒坂森 美幸

「おれたちも、もう死んでるからかも」
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乙葉 くろの

「…………。」
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乙葉 くろの

口を噤む。
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乙葉 くろの

首を振った。
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日比野 一夏

立ち上がり、腕をつかむ。
 片方と、もう片方。
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日比野 一夏

「あんた達が……死んでる?」
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日比野 一夏

「冗談言わないでよ。」
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安住 遊佐

「生きているって、どういう事?」
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安住 遊佐

「心臓が動いて、呼吸をして、体温があること?」
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安住 遊佐

「自分の心臓が本当に動いているのか、なんて」
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安住 遊佐

「誰も保証してくれないのに?」
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黒坂森 美幸

「遊佐。誰もが思い悩むとこへ誘導したところで“我思う故に我あり”と言われるだけだ」
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乙葉 くろの

「……いつかちゃん。」
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乙葉 くろの

ぽつりと、呼ぶ声。
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乙葉 くろの

「その感傷や感情は、」
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乙葉 くろの

「本当に確かなものなのかな?」
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安住 遊佐

「私はただ、こう言おうとしただけさ」
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GM

(日比野一夏の影が一歩離れ、て両手を上げて戯ける)
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安住 遊佐

「私も君も、おんなじだよって」
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乙葉 くろの

「いつかちゃん。」
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日比野 一夏

「意味がないからって、切り捨てるの?」
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日比野 一夏

「おんなじだからって、片づけちゃうの」
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乙葉 くろの

「じゃあ、」
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乙葉 くろの

「何があっても、」
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乙葉 くろの

「“思い出”を、抱えていきたいって思うのね?」
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日比野 一夏

 ……ぎゅ、と 袖口を掴む。
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乙葉 くろの

「みゆきちゃんは?」
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黒坂森 美幸

「切り捨てる必要も、片付ける必要もない」
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黒坂森 美幸

「どのみち人間は他人と生きてる」
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黒坂森 美幸

「他人と自分を本当に分けてるやつなんて、どれくらいいるんだかわからないね」
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乙葉 くろの

笑った。
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乙葉 くろの

「ふたりとも、復旧って。」
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乙葉 くろの

「どういう意味だと思う?」
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乙葉 くろの

「最初から正しいものは、」
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乙葉 くろの

「復旧なんて出来るのかな」
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日比野 一夏

顔をあげる
「わたしは、」
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日比野 一夏

「戻らなくていい。」
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乙葉 くろの

「うん、そうだね。」
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乙葉 くろの

「だから、聞いたの」
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乙葉 くろの

「ふたりとも、片付けなくていいって」
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乙葉 くろの

「戻らなくていい、って言った。」
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乙葉 くろの

真意の解らない言葉が重なる。
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乙葉 くろの

「さっき、私は、ふたりに」
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乙葉 くろの

「恋の記憶の話をしたの。覚えてる?」
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黒坂森 美幸

「フランケンシュタインの怪物のはなし」
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乙葉 くろの

「そう、」
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乙葉 くろの

「でもね。」
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乙葉 くろの

「あの記憶、おかしいの。」
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乙葉 くろの

復旧。
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乙葉 くろの

なおすこと。
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乙葉 くろの

それの果てが、これに繋がるならば。
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乙葉 くろの

「“あの頃、わたしはだれにも告白をしていない”」
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乙葉 くろの

薄く笑う。
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日比野 一夏

「……それって、どういう」
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乙葉 くろの

「そもそも、おかしいの」
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乙葉 くろの

「わたしが、大事なひとに」
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乙葉 くろの

「告白なんてするはずがない」
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乙葉 くろの

「大事なものは、ぜんぶ硝子越し。」
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黒坂森 美幸

「指紋がつくから」
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乙葉 くろの

「……うん。」
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乙葉 くろの

「絶対にするはずがない行動」
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乙葉 くろの

「無くなった記憶」
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乙葉 くろの

空に、手を伸ばす。
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日比野 一夏

滑るように抜ける手のひら
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乙葉 くろの

*恋の思い出-復旧を公開します。
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乙葉 くろの

【秘密】恋の思い出-復旧
ショック:この秘密を調査していたPC
あの頃、誰にも告白なんてしていない。
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乙葉 くろの

「あるはずが、ない。」
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乙葉 くろの

「この、“復旧された”記憶は。」
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乙葉 くろの

「──“ゆさちゃん”が抜け落ちている。」
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黒坂森 美幸

「そうか」
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黒坂森 美幸

暗がりを見る。
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乙葉 くろの

「片付けず、戻らないのが」
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乙葉 くろの

「わたしたち、なんだよね」
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日比野 一夏

「……わかんない。」 離れてしまったてのひらを握る。
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日比野 一夏

「なんにも、わかんない……」
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日比野 一夏

「どうして?」
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日比野 一夏

「どうしてそんなこと、言うの。」
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乙葉 くろの

ちいさく、笑う。
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乙葉 くろの

「いやなら、」
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乙葉 くろの

「思い出を連れてってあげましょう」
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乙葉 くろの

「正しくなくても」
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黒坂森 美幸

「掬った金魚を連れ帰ってやろう」
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黒坂森 美幸

「魚は遊佐のほうだ」
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乙葉 くろの

「わたしたちは水槽の住人じゃなかったね」
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日比野 一夏

「それは……もういない 遊佐のため?」
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日比野 一夏

 もう一方の腕を離す。
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乙葉 くろの

その手は、自分にはつかめない。
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乙葉 くろの

きっと、ずっと。
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黒坂森 美幸

離れていく手を見る。
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乙葉 くろの

「いいえ、」
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乙葉 くろの

「そんな顔をするいつかちゃんのためと」
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乙葉 くろの

ふたりと、そして───
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乙葉 くろの

暗がりに向かって微笑む。
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乙葉 くろの

「──わたしたちの“感傷”のためかな」
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日比野 一夏

「――感傷。」 離した手を胸に当てる。
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日比野 一夏

「くろのは、辛くないの。」
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日比野 一夏

「……不安は、ないの。」
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乙葉 くろの

「なくすわけじゃないもの」
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乙葉 くろの

「それに、」
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乙葉 くろの

「思い出すらもなくなったら」
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乙葉 くろの

「ゆさちゃんの水槽がなくなっちゃう」
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乙葉 くろの

ふたりの顔を見る。
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黒坂森 美幸

「そうだね」
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日比野 一夏

「…………。」
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日比野 一夏

「……思い出は、『これからを"続ける"ためのもの』」
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安住 遊佐

(舞台に、魚の影がゆらめいた。)
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黒坂森 美幸

「もうじき、夏が来るな」
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黒坂森 美幸

「夏の終わりには遊佐の墓の草むしり、してやろう」
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黒坂森 美幸

「スギナ、ドクダミ、クズ、セイタカアワダチソウ。あっという間に生えてくる」
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乙葉 くろの

「草むしりは、手袋をするものね」
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乙葉 くろの

悪戯っぽく微笑む。
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黒坂森 美幸

「指紋はつかない」
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乙葉 くろの

「正解」
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日比野 一夏

「はは」
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日比野 一夏

「最後くらいつけてやったらいいんじゃないか」
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日比野 一夏

「そうでないなら……花のひとつでも。」
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乙葉 くろの

「もちろん」
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黒坂森 美幸

「遊佐の好きな花、なんだったかな」
【指示】
>ちげ 遊佐の好きな花
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乙葉 くろの

「“勿忘草”。」
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乙葉 くろの

「花言葉は、“私を忘れないで”」
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乙葉 くろの

息を吸う。
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乙葉 くろの

「そして」
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乙葉 くろの

ふたりと。
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乙葉 くろの

くらがりに、順番に視線を移した。
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乙葉 くろの

「“真実の友情”」
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乙葉 くろの

「ゆさちゃんに、あげよう。」
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乙葉 くろの

「思い出と、真実の友情。」
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日比野 一夏

「あいつに似合いの手向けだな。」
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黒坂森 美幸

「乾杯でもするか」
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黒坂森 美幸

「我々の真実の友情に」
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黒坂森 美幸

飲みかけのグラスを手に持って傾ける。
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乙葉 くろの

同じようにする。
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日比野 一夏

「賛成。」
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日比野 一夏

「出来れば、サイダーがよかったな。」
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黒坂森 美幸

「冷蔵庫にはなかったね」
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黒坂森 美幸

グラスに入ってるのは烏龍茶だ。
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日比野 一夏

同じく、傾けて。
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日比野 一夏

「気が利かない奴だ。」
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乙葉 くろの

「また、お墓参りの時でいいじゃない」
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乙葉 くろの

くすくすと笑う。
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黒坂森 美幸

「乾杯」
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乙葉 くろの

「乾杯」
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日比野 一夏

「乾杯」
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安住 遊佐

(また、魚の影が泳ぐ。乾杯の合図に合わせるように。)
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GM

(暗転)
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GM

~ メインフェイズ第12シーン 終了 ~


 3-6 
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GM

~ メインフェイズシーン13 シーンプレイヤー:安住遊佐 ~
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GM

乙葉くろのに対して感情判定。
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GM

それは【恋】を思い出そうとする。
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安住 遊佐

2D6>=9 (判定:物理学) (2D6>=9) > 6[1,5] > 6 > 失敗
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GM

(雨の音)
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GM

(薄暗いままの舞台の上に、乙葉くろのの影が投影され、動き出す)
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安住 遊佐

「思い出しちゃったんだ」
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安住 遊佐

「いや、これは私のせいかな」
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安住 遊佐

「なんだか、君に対してはうまくいかなかったみたい」
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乙葉 くろの

「わたしは忘れてしまった」
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乙葉 くろの

その影を追うように、一歩。
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乙葉 くろの

「だから、もう一度」
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乙葉 くろの

「その“上手くいかなかった”理由を教えてくれる?」
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乙葉 くろの

手を差し出す。
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安住 遊佐

「……そうしてあげたいのはやまやまだけど」
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安住 遊佐

「ごめんよ、私にもわからないんだ」
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GM

(差し出された手に、影の手が重なる)
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乙葉 くろの

「ゆさちゃん。」
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乙葉 くろの

その影を掬い上げるような仕草。
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乙葉 くろの

「わたしが触れて、」
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乙葉 くろの

「触れられない」
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乙葉 くろの

影は、指先をするりと抜ける。
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乙葉 くろの

「指紋がつかない」
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乙葉 くろの

「触れた証がない」
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乙葉 くろの

「──唯一のひと。」
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乙葉 くろの

消え去ってしまった記憶。
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安住 遊佐

「触れなくたってできる事はたくさんある」
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乙葉 くろの

それでもまだ、恋以外は。
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乙葉 くろの

残っている。
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安住 遊佐

「例えば、一緒に踊る事とか」
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GM

(誘うように影が動く)
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乙葉 くろの

その手を取ようにして、動きを合わせる。
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乙葉 くろの

「ダンスを受けるのは、」
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乙葉 くろの

「あなたが、」
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乙葉 くろの

「ここにいないから」
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安住 遊佐

「私は存在するよ」
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安住 遊佐

「ただ、それがこの場所じゃないだけ」
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乙葉 くろの

「うん」
avatar

乙葉 くろの

「違うの」
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乙葉 くろの

なんど、手を伸ばしても。
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乙葉 くろの

触れられはしない。
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乙葉 くろの

すり抜けるたびに、また。
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乙葉 くろの

動きだけが、影を取る。
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乙葉 くろの

ステップを踏む。
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乙葉 くろの

「触れられないのに、」
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乙葉 くろの

「踊れるの。」
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乙葉 くろの

「指紋をつけずに、傷つけずに」
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乙葉 くろの

「こうして、あなたを感じられるの」
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乙葉 くろの

「それって、わたしにとっては」
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乙葉 くろの

「すごいことなのよ」
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乙葉 くろの

くるりと回って、笑んだ。
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GM

(対になるように影が回る)
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安住 遊佐

「私は君の良き隣人になれそう?」
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乙葉 くろの

「“自分を愛するように、あなたの隣り人を愛せよ”。」
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乙葉 くろの

微笑む。
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乙葉 くろの

「もちろん」
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乙葉 くろの

「ゆさちゃん、」
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乙葉 くろの

「あなたが、思い出せなくても」
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乙葉 くろの

「分からなくても」
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乙葉 くろの

「かわりに私が、言ってあげる」
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安住 遊佐

「どんな言葉を?」
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乙葉 くろの

「好きよ、ゆさちゃん」
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乙葉 くろの

愛しているには遠く。
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乙葉 くろの

けれどきっと、友愛よりは近い。
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乙葉 くろの

《恋》にはまだ及ばない。
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乙葉 くろの

けれどたしかに、芽吹いた好意。
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乙葉 くろの

「ゆさちゃんも、わたしにとって」
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乙葉 くろの

「だいじなひとだわ」
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乙葉 くろの

「触れられなくて、」
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乙葉 くろの

「きっと、正しくないのに」
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乙葉 くろの

「たしかに、わたしの手を掴んでくれた」
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乙葉 くろの

「一緒に踊ってくれた」
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乙葉 くろの

「だから、ゆさちゃん」
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乙葉 くろの

「──わたしは、あなたが好き」
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乙葉 くろの

数歩、離れて。
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乙葉 くろの

手を差し伸べる。
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安住 遊佐

「ありがとう」
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安住 遊佐

「君の、名前のない感情に感謝をしよう」
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安住 遊佐

「これはきっと、私にとってとても大切な””思い出”になるから」
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乙葉 くろの

「これで、私の失くした思い出は」
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乙葉 くろの

「また、掌に戻って来たね」
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乙葉 くろの

「ありがとう、ゆさちゃん」
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安住 遊佐

「そして、これからはずっと共に居る」
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安住 遊佐

「君が許してくれるなら、私は、他の誰よりも君に近い場所に居られる」
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乙葉 くろの

「側にいて──わたしの、善き隣人さん。」
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乙葉 くろの

そして。
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乙葉 くろの

「わたしの、《恋の思い出》。」
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GM

(暗転)
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GM

~ メインフェイズ第13シーン 終了 ~


 クライマックス 
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GM

~ クライマックスフェイズ 開始 ~
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GM

(ピンスポットライトが点灯する)
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GM

(照らされた先には、誰もいない)
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GM

(誰ともしれない声が響く)
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安住 遊佐

「それじゃあ、改めて皆に確認しなきゃいけないね」
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安住 遊佐

「これから私と一緒にいてくれるのか、どうかを」
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安住 遊佐

「みんなの思い出の中に、私を受け入れてくれるのか、どうかを」
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安住 遊佐

「その端末の事も、復旧の事も、きみたちは知ってしまった」
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安住 遊佐

「端末は今、一夏の手にあって」
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安住 遊佐

「それを使えば……私を追い出す事だって、できるだろう」
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安住 遊佐

「其の上で、どうするのか。答えを聞かせてもらってもいいかな」
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GM

(スポットライトが日比野一夏を照らす)
avatar

日比野 一夏

―ことり、と。
 手にした端末を、机の上に戻して。見上げる。
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日比野 一夏

「私の答えは、変わらないよ、遊佐。」
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日比野 一夏

「私の中の あんたはもうここにはいない。」
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日比野 一夏

「……もう、ここにはいないんだ。」
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日比野 一夏

「それだけあれば……充分。」
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日比野 一夏

「わたしが、あんたを受け入れるとするなら」
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日比野 一夏

「それは、残された人のため。」
【指示】
>すのだ 次の安住の台詞
avatar

安住 遊佐

「きみの思い出が偽りだったとしても?」
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安住 遊佐

「きみは 魚を生かすかい。」
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日比野 一夏

「……魚には興味がないの。 あの子たちとは違ってね。」
avatar

日比野 一夏

「だけど、あの子達がすくってあげたいと思うなら」
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日比野 一夏

「……恩返しくらいは、してあげないと。」
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日比野 一夏

「この想い出は、いなくなったあの子のため。」
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日比野 一夏

「……ここに、残された子たちのため。」
avatar

安住 遊佐

「……なんだか、眩しいな」
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日比野 一夏

「……ふふ。」
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日比野 一夏

「あなたには、そう見えるのかもね。」
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日比野 一夏

「ここは狭い水槽の中だから。」
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日比野 一夏

「……もっと広い海に連れて行ってあげる。」
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日比野 一夏

「夏になったら、また ね。」
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安住 遊佐

「楽しみにしてるよ」
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日比野 一夏

「さよなら、遊佐。」
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安住 遊佐

「一夏」
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安住 遊佐

「私は生きているよ」
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GM

(暗転)
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GM

(再び点灯したスポットライトが黒坂森美幸を照らす)
avatar

黒坂森 美幸

眩し気に細めた目を開く。
avatar

黒坂森 美幸

「おれは最初から言ってただろ」
avatar

黒坂森 美幸

「努力、責任、忍耐」
avatar

黒坂森 美幸

「ないよりはある方がいい」
avatar

黒坂森 美幸

「遊佐、お前は結論を早まったな」
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黒坂森 美幸

「科学者たるもの、答えはすぐに出せるものではない」
avatar

黒坂森 美幸

「お前が言ってたことだろ」
【指示】
>ハセ 次の安住の台詞
avatar

黒坂森 美幸

「失敗だとも成功だとも言わないが、そうだな」
avatar

黒坂森 美幸

「この先おれが狂って死ぬかもしれないし、一夏やくろのがそうなるかもしれない」
avatar

黒坂森 美幸

「案外そうじゃないかもしれない」
avatar

安住 遊佐

「科学者たるもの、答えはすぐに出せるものではない」
avatar

黒坂森 美幸

「なあ、遊佐。うまいことやっていくには色んなことが必要だ」
avatar

黒坂森 美幸

「努力、責任、忍耐のその先には」
avatar

黒坂森 美幸

「他人という荒野が待ってるんだぞ」
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黒坂森 美幸

「だから、もういいんだ」
avatar

黒坂森 美幸

「おれは答えを出さない努力をしてやろう」
avatar

黒坂森 美幸

「水槽に入ってる小さい家と同じさ」
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黒坂森 美幸

「ないよりはある方がいい」
avatar

安住 遊佐

「私は魚ではないよ」
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黒坂森 美幸

「なんにしたって空の水槽よりはマシ」
avatar

黒坂森 美幸

「今度こそ昼飯奢れよな」
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安住 遊佐

「魚料理でも良ければ」
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GM

(暗転)
avatar

GM

(スポットライトが点灯し、乙葉くろのを照らす)
avatar

乙葉 くろの

「──いまさら。」
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乙葉 くろの

「“これからはずっと共に居る”。」
avatar

乙葉 くろの

「あなたが言ったの。」
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乙葉 くろの

話は終わりとばかりに瞳を伏せる。
【指示】
>ちげ (あれば)次の遊佐の台詞
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乙葉 くろの

だけど、少し目を開けて。
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乙葉 くろの

そっと、暗がりに手を差し出す。
avatar

乙葉 くろの

「仕方ないゆさちゃん。」
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安住 遊佐

(ゆらりと乙葉の影が揺れて──差し出された手を取った。)
avatar

GM

(暗転)


 クライマックス 
avatar

GM

・クライマックス戦闘 開始
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GM

通常ならばプロットから行う所ですが
avatar

GM

特例処理として、戦闘から離脱するかの確認を最初に行います。
avatar

GM

戦闘からの自発的脱落を行いますか?
avatar

安住 遊佐

脱落しません。
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乙葉 くろの

脱落します。
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日比野 一夏

脱落します。
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黒坂森 美幸

暗がりとふたりを見て。
足を後ろへ引く。
avatar

黒坂森 美幸

儀式を続ける必要はない。
脱落します。
avatar

GM

安住遊佐以外の全てのキャラクターが離脱したため、クライマックス戦闘を終了します。
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GM

勝者である安住遊佐は戦果をひとつ獲得します。
avatar

安住 遊佐

戦果は──
【指示】
>黒坂森 手がひとりでに動き、電子機器を掴んで自分の頭に向ける
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黒坂森 美幸

テーブルの上に置かれた電子機器を掴む。
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黒坂森 美幸

淀みなく自身の頭へそれを向けた。
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安住 遊佐

戦果として、黒坂森美幸に、安住遊佐に対する【友情】を獲得させます。
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黒坂森 美幸

「はは」
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黒坂森 美幸

「まどろっこしいやつ」
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安住 遊佐

「楽しい思い出は、あればあるだけいい」
avatar

安住 遊佐

「そうだろ?」
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黒坂森 美幸

元置かれた場所へ戻す。
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黒坂森 美幸

「今度は富士山の上でおにぎりでも食べるか」
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安住 遊佐

「海岸に座ってカップラーメン食べるのもいいね」
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安住 遊佐

「いろんな思い出を」
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安住 遊佐

「思い出していこうよ」
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GM

(暗転)
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GM

~ クライマックスフェイズ 終了 ~


 エンディング 
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GM

~ 第5回 ~
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GM

~ エンディング ~
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GM

(舞台が照らされる)
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安住 遊佐

「……それじゃあ」
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安住 遊佐

「君たちは、私と一緒に居てくれるんだね」
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黒坂森 美幸

「そういうこと」
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日比野 一夏

「こうなっちゃったんだから仕方ないでしょ」
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乙葉 くろの

「うん」
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日比野 一夏

「ま、後の事はしっかり責任とってもらうけどね」
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日比野 一夏

頭をとんとんと叩いて。
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黒坂森 美幸

「メンテナンスのやり方とか知らないし」
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黒坂森 美幸

「aiboの方が人間より寿命短いんでしょ」
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乙葉 くろの

「ペットみたい」
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安住 遊佐

「その辺はインストール済みだから、任せてよ」
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日比野 一夏

「この言葉、信用できる?」 美幸に首をかしげて。
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安住 遊佐

「信用してくれない?」
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日比野 一夏

「信用には値しないな。 だって、遊佐だし。」
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日比野 一夏

「なにより身体のない奴は無責任だ。」
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乙葉 くろの

「身体があった方が……欲に縛られてもっと大変かもしれないよ」
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乙葉 くろの

「その点ゆさちゃんは……わたしは信用できちゃうな」
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日比野 一夏

「くろのはまたそうやって甘やかすんだから。」
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黒坂森 美幸

「おれは元々どっちもそんな興味がない」
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日比野 一夏

「興味がないってのは感心しないな。」
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日比野 一夏

「身体を大事にしないやつに他人の身体の管理ができると思って?」
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乙葉 くろの

「…………」
【指示】
>ハセ 次の安住の台詞
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安住 遊佐

「興味がないことと、愛情をもって接することは常に両立が可能だよ」
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黒坂森 美幸

「同意見だね」
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乙葉 くろの

「なかよし。仲良くやっていけそう」
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日比野 一夏

「も~あまいあまい!」
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日比野 一夏

「そんなんだからモテないんでしょ。」
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日比野 一夏

「興味がないやつに愛情注がれるのって、大体の女子が嫌うの 知ってる?」
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黒坂森 美幸

「存じておりますれば」
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黒坂森 美幸

「そのためにイベントごとがあるんだろ」
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黒坂森 美幸

「冠婚葬祭、ぜんぶそうだよ」
【指示】
>すのだ 次の安住の台詞
avatar

日比野 一夏

「遊佐がそんな儀礼でやってるとは思えないけども。」
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安住 遊佐

「でもきみたちはここに集まってくれた」
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安住 遊佐

「これは一種の友情と呼べるものじゃないかな」
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黒坂森 美幸

「でもも何も、最初からそうだっただろ」
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黒坂森 美幸

「今となっては」
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乙葉 くろの

「思い出があるからね」
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日比野 一夏

居心地悪そうに、髪をくしゃりとやる。
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日比野 一夏

「思い出か……」
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黒坂森 美幸

「そう、思い出」
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安住 遊佐

「それは過去の集合体」
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安住 遊佐

「そして、人生の本質さ」
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黒坂森 美幸

「お前に人生の本質語られちゃな」
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安住 遊佐

「誰にだって語る権利はあるさ」
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黒坂森 美幸

「身体がある側としては、挑戦状にも等しいぞ」
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黒坂森 美幸

「なあ、一夏」
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黒坂森 美幸

そちらへ顔を向けて笑う。
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日比野 一夏

眉をひそめて、笑う。
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日比野 一夏

「逆だよ、逆。」
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日比野 一夏

「むしろ、こっちから叩きつけてあげるもの、じゃない?」
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日比野 一夏

「これからめいっぱい生きてもらわなきゃ。」
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日比野 一夏

「本当の、人生ってやつをね。」
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乙葉 くろの

ふたりを見て。あるいは、その向こうにもうひとりを見て──笑む。
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日比野 一夏

同じく視点を向ける、どこかにむけて。
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黒坂森 美幸

そうして、視線が揃う。
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安住 遊佐

「告別式も、終わりかな」
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安住 遊佐

「それじゃあ……」
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GM

(乙葉くろのにスポットライトが当たる)
avatar

GM

(舞台の壁に写った影が、一歩歩む)
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安住 遊佐

「帰る前に、どこかに寄っていこうよ」
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乙葉 くろの

「じゃあ、あなたのためのお花を買いましょう」
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乙葉 くろの

「いいえ、」
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乙葉 くろの

「わたしのも、選んでくれる?」
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乙葉 くろの

「お部屋に並べて置くの」
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乙葉 くろの

椅子も、机もいらないあなたの為の。
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乙葉 くろの

そして、あなたがいることの証として。
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乙葉 くろの

部屋に花なんて置いたことがない。
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乙葉 くろの

だから、これはあなたがたしかに──現実へもたらした変化。
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安住 遊佐

「──それなら」
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安住 遊佐

「ドライフラワーを売っている花屋へ行こう」
【指示】
>ちげ 次の安住の台詞(1発言のみ)
avatar

安住 遊佐

「褪せてしまった花は嫌い?」
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乙葉 くろの

「いいえ──その色褪せた姿が、その花の重ねてきた時間や記憶の先だもの」
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乙葉 くろの

「わたしは好きよ、ゆさちゃん」
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安住 遊佐

「それならよかった」
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乙葉 くろの

「いっしょに褪せて行けるといいね」
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安住 遊佐

「いっしょに、いろんなものを失っていく?」
【指示】
>ちげ 次の安住の台詞(1発言のみ)
avatar

安住 遊佐

「君が許してくれるなら、だけど」
avatar

乙葉 くろの

手を差し出す。
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GM

(影がその手を取り、歩き出す)
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乙葉 くろの

足取りは軽く、弾むように。
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GM

(影が扉に手をかける)
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安住 遊佐

「さ、いこう」
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安住 遊佐

「明日の思い出へ向かって」
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GM

(乙葉くろのと影が共に去っていく)
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GM

 
avatar

GM

(黒坂森美幸にスポットライトが当たる)
avatar

安住 遊佐

「メンテンスについて」
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安住 遊佐

「君は言っていたけれど」
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安住 遊佐

「私の研究室、まだそのままある筈なんだ」
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黒坂森 美幸

「うん」
avatar

安住 遊佐

「水槽もあるよ」
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黒坂森 美幸

「あのデカいやつな」
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安住 遊佐

「あれ、何に使ってたと思う?」
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黒坂森 美幸

「なんなら面白いだろうな」
avatar

黒坂森 美幸

「風呂とかどう?」
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安住 遊佐

「透明のお風呂に入るのかい?」
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黒坂森 美幸

「脳浮かべるのとさして変わらないだろ」
【指示】
>ハセ 次の安住の台詞(1発言のみ)
avatar

安住 遊佐

「あれに人を入れた事はないよ」
avatar

安住 遊佐

「熱帯魚を飼ってみたんだ」
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黒坂森 美幸

「初心者が手を出すにはデカいな」
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黒坂森 美幸

「まあ、ベタでもネオンテトラでも水槽は広ければ広いほどいい」
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黒坂森 美幸

「とりあえず様子見に行くか」
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黒坂森 美幸

「どうせおれが引き取るんだろうし」
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安住 遊佐

「案内するよ」
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黒坂森 美幸

「ああ」
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黒坂森 美幸

「何色だろうな」
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安住 遊佐

「わからない」
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安住 遊佐

「その水槽を見たら、思い出すかな」
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黒坂森 美幸

「何色でもいいよ」
【指示】
>ハセ 次の安住の台詞(1発言のみ)
avatar

安住 遊佐

「あのベタも?」
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黒坂森 美幸

「うん」
avatar

黒坂森 美幸

「あれはあれでいいことにした」
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安住 遊佐

「それなら、今から」
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安住 遊佐

「思い出に色を塗りにいこう」
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安住 遊佐

「何色でもいいんでしょう?」
avatar

黒坂森 美幸

「うん」
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黒坂森 美幸

「何色でもいいよ」
【指示】
>黒坂森 扉まで歩いて行く
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黒坂森 美幸

つま先を扉へ向けて歩み出す。
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黒坂森 美幸

扉に手をかけた。
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安住 遊佐

「大きな水槽にしたのはね」
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安住 遊佐

「ひとつじゃ寂しいと思ったからさ」
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GM

 
avatar

GM

(日比野一夏にスポットライトが当たる)
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安住 遊佐

「一人になった、って」
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安住 遊佐

「君は思うのかな」
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日比野 一夏

「そうだな、随分広々としてしまった。とは 思うかな。」
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日比野 一夏

「寒いし、暗いし。 あんたに言われると、薄気味悪い。」
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安住 遊佐

「はは、ひどいなあ」
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安住 遊佐

「ひとつ、きみに聞いてみたい事があったんだ」
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日比野 一夏

「ふうん、あんたならよく知ってるはずだけど。 なぁに?」
 首をかしげる。
avatar

安住 遊佐

「君にとって、”安住遊佐”は死んだ」
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安住 遊佐

「そうなんだよね?」
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日比野 一夏

「そう、覚えている限りはね。」
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安住 遊佐

「なら、私は生きている?」
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日比野 一夏

「……どうでもいい。」
【指示】
>すのだ 次の安住の台詞
avatar

日比野 一夏

「でも信じてはいるよ、お前がそこにいるってことは。」
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安住 遊佐

「それは彼らのため?」
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日比野 一夏

「友達のため。」
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日比野 一夏

「あんたはあいつらのために必要だし あんたも私たちを必要とした。」
avatar

日比野 一夏

「それじゃあ答えになってない?」
avatar

安住 遊佐

「それを答えにしておきたいなら、それで構わないさ」
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安住 遊佐

「ただ、気になる事はできたね」
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安住 遊佐

「君にとって必要なものは何なのか、とか」
avatar

安住 遊佐

「どうでもいいのは生死の定義についてなのか、とか」
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日比野 一夏

「答えなんて出やしないよ」
avatar

日比野 一夏

「もしくは……既にたどり着いているのかも。」
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日比野 一夏

冷えた腕をなでる。
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日比野 一夏

「どちらにしたって、問いかけても無駄なこと。」
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日比野 一夏

「あんたはわたしにはなれない。」
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安住 遊佐

「答えは出ないのに、”安住遊佐の死”は答えなのかい?」
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日比野 一夏

「そうだよ。」
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日比野 一夏

「だって、この死は あんたが望んだことでしょう。」
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安住 遊佐

「それを私に聞いても意味は無いよ」
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安住 遊佐

「それが君の世界観だろ?」
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日比野 一夏

「でも、あんたには意味があった。」
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日比野 一夏

「だから、思い出 にした。 ……違う?」
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日比野 一夏

「私が知ってるのはあの頃のあんたと、今の遊佐だけ。」
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日比野 一夏

「どこからどこまでが本当だか、わたしにはもうわからない。」
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日比野 一夏

「でもそれなら……残したものの意味くらい、想像したっていいでしょう。」
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日比野 一夏

 壁にもたれて、宙をみる。
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日比野 一夏

 そして、誰もいない虚空へ。
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安住 遊佐

「私からコメントをするのなら」
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安住 遊佐

「本当のものなんて、どこにもなくて」
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安住 遊佐

「だから想像にこそ意味があって」
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安住 遊佐

「そして、残った意味が思い出さ」
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安住 遊佐

「ただ、これだと抽象的すぎて分かりにくいかな」
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安住 遊佐

「ねぇ、一夏」
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安住 遊佐

「演劇を観に行った事はある?」
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日比野 一夏

「いいや。」
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日比野 一夏

「ああ、でも……文化祭の時に一度だけ。」
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日比野 一夏

「演劇部の公演があったっけ」
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日比野 一夏

 目を伏せる。
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安住 遊佐

「演劇には、役者と、役がいる」
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安住 遊佐

「そして、役者は生きている」
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安住 遊佐

「じゃあ、役は?」
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安住 遊佐

「少なくとも、それは動く死体じゃあない」
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日比野 一夏

「生きている、と?」
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日比野 一夏

「…………遊佐は。」
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日比野 一夏

「どう思った?」
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日比野 一夏

「あの板に立つ人達は……ほんものだった?」
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安住 遊佐

「ほんものじゃあないかもしれないね」
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安住 遊佐

「だけど、だからって、役者の方だってほんものとは言えない」
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安住 遊佐

「役者だって役の一つ。そこに違いはない」
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安住 遊佐

「私はそう思ったよ」
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日比野 一夏

「ほんとうに?」
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日比野 一夏

「……いや、愚問かな。」
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安住 遊佐

「文化祭でやるような、演劇部の演劇ってさ」
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安住 遊佐

「一日に何回か同じ劇をやって、回ごとに違う役者が同じ役をやる事があるじゃない」
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安住 遊佐

「役者が違えば、演技は違う。だけど、それは同じ役だ」
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日比野 一夏

足を組み替え、首をかしげる。
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日比野 一夏

「でも、私たちは役者ではないよ。」
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日比野 一夏

「どんな役が回ってきても、私という個人だ。」
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安住 遊佐

「そうかな?」
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日比野 一夏

「そうでないとしたら……なんなんだい?」
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安住 遊佐

「君は日比野一夏という役かもしれないし、私は安住遊佐という役かもしれない」
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安住 遊佐

「いかなる個人だって、その個人という”役”としての部分が少なからずあるものだろう」
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日比野 一夏

「……今、こうしているように?」
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安住 遊佐

「今、そうしているように」
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安住 遊佐

「あるいは」
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安住 遊佐

「ある時いきなり中の”役者”が入れ替わることだって」
【指示】
>すのだ 次の安住の台詞
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安住 遊佐

「私が、”日比野 一夏”を演じることすら。」
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日比野 一夏

「過ぎた仮定だ」
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安住 遊佐

「ああ、随分と意地の悪い話だ。」
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安住 遊佐

「でも君にとっての"安住遊佐" は "そういう奴"でもあっただろう?」
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安住 遊佐

「思い出の中の私は、いつだってきみの隣にいた。」
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安住 遊佐

「友達だったんだ、ずっと。」
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日比野 一夏

「憶えてる限りではね」
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安住 遊佐

「覚えてくれていた、限りでは。」
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日比野 一夏

「ずっと隣にいた友達だったからって」
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日比野 一夏

「役者が入れ替われば、誰かが気付くよ」
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安住 遊佐

「そうかもね。私は一夏にはなれないし、一夏だって私にはなれない。」
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安住 遊佐

「これは、ごっこ遊びにすぎない。」
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安住 遊佐

「でも、もしも誰かが気づいたとしたらさ」
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安住 遊佐

「それは気づいた人の思い出の中に、”日比野一夏”という役が存在したって事じゃない?」
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安住 遊佐

「実際にその人が発した言葉なのに、これは違うと思った時」
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安住 遊佐

「実際にその人が発していないのに、これはその人の言葉だと思った時」
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安住 遊佐

「その人は思い出の中で生きている」
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安住 遊佐

「これが私の考え」
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安住 遊佐

「日比野一夏は、どう思う?」
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日比野 一夏

「小さな綻びや、ちいさな勘違い、思い込み」
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日比野 一夏

「それに対する思い入れとか、思い違いだとか」
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日比野 一夏

「どんなに歪んでいても、その形すらすべて、その人の中にある 真実。」
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日比野 一夏

「私はそれを大切にしまって、生きてきた。」
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日比野 一夏

「それを否定することなんてできないよ。」
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日比野 一夏

「安住 遊佐、きみはどう思う。」
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日比野 一夏

「きみのなかに、日比野一夏は 生きていた?」
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安住 遊佐

「生きていたさ」
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安住 遊佐

「そして、それをずっと抱えて生きてきた」
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日比野 一夏

「……きっと、素敵な役者だったんだろうね。彼女は。」
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日比野 一夏

「わたしの中の感傷が、そう言っている。」
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日比野 一夏

「きっと彼女はきみといい友達になれただろう。」
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安住 遊佐

「ああ、そうだね」
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安住 遊佐

「そんな思い出があれば、きっと幸せだった」
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日比野 一夏

「きみの幸福を祈ってやるよ。」
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日比野 一夏

「私は彼女とは違う、しがない役者だけれど。」
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日比野 一夏

「今、ここにいるきみの為に わたしは生きている。」
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安住 遊佐

「なら、私は君の生存を祈ろう」
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安住 遊佐

「私もまた、しがない役に過ぎないけれど」
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安住 遊佐

「君が、私と同じくらい生き続けるように」
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日比野 一夏

「あんたとまた友達になれるかな。」
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安住 遊佐

「いつでもなれるさ。忘れないでいてくれたら」
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安住 遊佐

「さぁ、そろそろ帰ろう」
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日比野 一夏

「幕の時間だ」
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安住 遊佐

「ほら、役者なら挨拶しないと」
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日比野 一夏

 そこにある空間を見て。
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日比野 一夏

「あんたもね。」
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日比野 一夏

ゆるりと小さく礼をして、指先をもって連れてゆく。
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GM

(少し遅れたタイミングで、日比野一夏の影が礼をする)
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日比野 一夏

ふたりは、扉へと消えてゆく。
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日比野 一夏

大きな雨音を残して。
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安住 遊佐

「それでは皆様」
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安住 遊佐

「これからも宜しく」
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GM

(暗転)
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GM

 


 カーテンコール 
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GM

~ C.C. ~
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GM

(明転)
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日比野 一夏

明転のライトの中。
大きく響く雨音のなか、ぱたぱたとかける。
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日比野 一夏

そのまんなかできゅ、と止まると。
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日比野 一夏

客席に向き直って、ゆっくりと礼をする。
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日比野 一夏

顔をあげると、そのままゆっくりと歩いて端のほうへ。
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日比野 一夏

流れるように次へ渡す。
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黒坂森 美幸

ポケットに手を入れたまま歩み。
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黒坂森 美幸

なかほどまで来る。
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黒坂森 美幸

客席に向き直り、一礼。
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黒坂森 美幸

端の方へ歩み、反対側の舞台袖へ視線を送る。
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乙葉 くろの

弾むような軽い足取り。
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乙葉 くろの

舞台の真ん中で立ち止まり。
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乙葉 くろの

深く一礼。
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乙葉 くろの

顔を上げて、客席を見渡し。
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乙葉 くろの

客席に、そして。
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乙葉 くろの

暗がりに手を振って、端へと歩みを進めた。
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黒坂森 美幸

また、2人に手を引かれるように前へ。
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日比野 一夏

腕を引きながら、向こう隣をすこしのぞき込む。
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日比野 一夏

そちらへふふ、と笑いかけて 定位置に一歩下がる。
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乙葉 くろの

隣を、ふたりを代わる代わる見て笑む。
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黒坂森 美幸

何もない中空で繋がれている手を見ながら。
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乙葉 くろの

かたほうの手を、揺らした。
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黒坂森 美幸

真ん中の役目とばかりに繋いだ手をそのまま上にあげて、下に降ろし。
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黒坂森 美幸

客席に向けて一礼。
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日比野 一夏

ならい腕を引き寄せて、正面へ一礼。
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乙葉 くろの

同じく一礼、と。
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乙葉 くろの

片手を動作を促すように振った。
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黒坂森 美幸

笑いながら、手を離して再び袖へ歩く。
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日比野 一夏

離された腕をひらひら。
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日比野 一夏

はけてゆく後ろ姿をちらと横目で見てから袖へと向かう。
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乙葉 くろの

離れた手を、客席に振ってから。
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乙葉 くろの

片手を引かれるように、一夏とは逆の袖へ。
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日比野 一夏

それを見届けてから。
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日比野 一夏

こっそり手を振り、足音を鳴らした。
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GM

 
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GM

【以上を持ちまして、インセイン「思い出の中で生きている」は終了致しました】
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GM

【お忘れ物のないよう、お気をつけてお帰り下さい】